人と組織を育て、企業を革新する「可視経営」  可視経営協会が目指す企業革新

人と組織を育て、企業を革新する「可視経営」  可視経営協会が目指す企業革新

ホワイトカラー(管理間接部門)業務の生産性向上が、日本企業を活性化する鍵になる――。 長引く景気低迷の中、現在の日本企業が抱える問題の一つに、ホワイトカラーの業務革新が遅れ、閉塞状況に陥っていることがあるという。この状況を克服し、日本企業を再生に導くために、4月1日に社団法人可視経営協会が設立される。かつて本田技研工業の急成長を副社長として支え続けた可視経営協会理事長の西田通弘氏と、25年にわたってホワイトカラー業務の革新に取り組んできた同理事の石橋博史氏に話を聞いた。

企業再生の鍵は、ホワイトカラーの業務改善

―長引く景気低迷の中、企業に元気がないと言われて久しいですが、日本企業の現状をどのように見ていますか。

社団法人可視経営協会 理事長
元本田技研工業副社長
西田 通弘 氏

今の企業は、自らが進むべき行き先の目標を見失ったまま、自信を持って活動することができなくなっているように思います。

かつて日本企業は、欧米の先進企業をモデルに「追いつけ、追い越せ」と、猛烈果敢に挑み続けてきました。そしてその結果、企業も日本も見事に成長を果たし、気がつけばモデルとしてきた目標たちに肩を並べることができました。しかしその後、今度は自らが世界をリードする立場になった時、先進のモデルはなく、目標を失い、自分すらも見失って自信をなくしてしまいました。

結果、バブル崩壊から20年以上がたったにもかかわらず、現在に至っても日本企業は自信を取り戻すことができないままになっていると思います。

企業の中に話を移すと、リーダーシップを発揮する人材が現れにくい状況になっていると思います。今、経営者の多くは組織活動を牽引するリーダーとなる管理職を選ぶ、明確な尺度を持っていません。その結果、残業をいとわず働く社員を「がんばり屋だから」といって、マネジャーに選んでいるようなことはないでしょうか。プレイングマネジャーという言葉をよく耳にしますが、今、その弱点があらわになってきていると感じています。

私たちが若かった頃は、先輩が親身になって実務訓練(OJT)をしてくれる中で、マネジャーとしての基本を学ぶことができました。ところが今のマネジャーはそうした訓練を受けておらず、また、自分の業務もこなさねばならず、本来のマネジメントはできていません。企業は人材の育成ができないまま、マネジメント力は欠落し、その結果、意思決定のスピードも落ちていく――。今の企業の現状は、ホワイトカラーが閉塞感にさいなまれているのです。

―日本企業が元気を取り戻すための鍵は、ホワイトカラーの業務にありそうですね。

ホワイトカラーの業務改善と生産性向上に向けた努力が必要です。日本企業はものづくりの技術に優れ、磨きをかけ、世界に誇る地位を確立しました。しかし、単に技術のみではありません。ものづくりの現場では、業務改善の努力が積み重ねられ、現場が活性化し生産性も向上した結果、世界で優位に立つことができたのです。

一方、その間、ホワイトカラー業務では、業務活性化を含めたマネジメント技術に進歩はほとんど見られませんでした。それが現在のグローバルな経済の激変に対応できず、「追いつけ、追い越せ」を超える新たなパラダイムを生み出せなかった要因の一つであると思います。ホワイトカラーの進歩は停滞し、業務改革に手も足も出ないまま、活性化が遠のいています。

―ものづくり現場の業務改善に、ホワイトカラー業務の改善のためのヒントがあるのでしょうか。

私は、1950年に当時従業員50人だった本田技研工業に入社しました。80年に副社長を退任するまでの30年間、無我夢中で仕事をする中で何よりも力を入れて取り組んだことは、製造現場の生産性の向上でした。現場の生産性向上に力を入れないと利益が出ないという意識を持って取り組み、大きな成果を上げることができました。

本田技研工業には、当時から「ワイガヤ」運動というのがありましたよね。社長以下全員が、「ワイワイガヤガヤ」自由に話し合いながら徹底的に議論して、様々な意見や業務改善などアイデアを出し合う。これによりお互いを理解し合い、協力し合うことで、意思決定も速くなるのです。「ワイガヤ」の根底にあるのは、対話力です。どんな組織でも基礎になるのはコミュニケーションでしょう。今の企業には、業務改善を行う上で不可欠な対話力も必要です。

―同じようにすれば、ホワイトカラーの業務改善もうまくいくでしょうか。

「ワイガヤ」で自由に話し合い、それまで気がつかなかったことも分かるようになりました。しかし、それだけではホワイトカラーの業務革新まで行うことはできませんでした。当時は方法論などもなく、どのように業務改善に取り組めばよいのか分からなかったのです。

ものづくりの製造現場では、目で見える材料を扱っており、プロセスも目で見ることができます。しかし、ホワイトカラーの業務が取り扱うのは目に見えない情報であり、業務の流れも複雑です。実作業においても、個人が培った経験則で判断が下され、それにより臨機応変に行動するのがホワイトカラー業務の特徴です。製造現場のようにプロセスがマニュアル化されているわけではありません。

ホワイトカラーの仕事は、経験やノウハウとして人の中に「潜り」込んでおり、見えなくなっているのです。このように、仕事が目に見えない状態であるホワイトカラーの業務改善に有効なのが、「可視経営」の考え方です。

「可視経営」で人と組織を育て、経営革新に貢献する

―その「可視経営」とは、どのようなものでしょうか。

社団法人可視経営協会 理事
株式会社システム科学 代表取締役社長
石橋 博史 氏

「可視経営」は、単なる概念ではなく、ホワイトカラーの生産性を高め、マネジメントを革新する実践的手法・ツールです。ただ業務を見えるようにするだけではなく、業務とそのマネジメントのどこに問題があるのか分析し、気づきを与え、その上で改善を行っていきます。

具体的には、まず人の中に潜り込んでいる仕事を目で見て分かる状態にします。次に25年間蓄積された実績に基づくモデルと比較分析を行い、具体的に業務のどこに改善余地があるのかを探り、「ムダ取り」を行います。その上で業務の標準化や役割分担を実現します。最終的には、管理点マニュアルを作成することで、リスク管理をはじめ、日々の業務のマネジメントや個々の社員のスキル管理などが容易になります。

ものづくり部門だけの業務革新では、企業の真の経営効率は望めないと考え、25年間この道一筋にチャレンジし、経験と実績を蓄積してきました。94年には、ダイヤモンド社国際経営研究所主催の研修講座の講師に招かれました。そこでP.F.ドラッカー博士の思いにかない、ドラッカー博士の認定講座の講師も務めました。これは大きな励ましになるとともに、その講座の内容は後に開発した手法の基本になりました。その後も企業のニーズに応えて、可視経営実現のために取り組んできました。

2010年には、「業務プロセスの可視化法」及び「チャート作成システム」として、特許を取得しています。これはホワイトカラーを支援する有力なツールと技法が完成したことを意味し、長年の取り組みの大きな成果だと考えています。

−3月31日に、社団法人可視経営協会が設立されました。設立の目的と今後のビジョンをお聞かせください。

可視経営協会を設立することで、可視経営の考え方を多くの方々に知っていただき、活用してもらいたいと思っています。可視経営は、企業を活性化して業務の改善を行うための技術であるとともに、人を育て企業を育てる方法論でもあります。この手法やツールを理解し、これを使える人材を育成することが協会設立の一番の目的です。

また、業務改善や経営革新を目指す人々が集い、学び合う場にしたいと思っています。可視経営を学ぶことを通して自分の業務を改めて見つめ直し、自らの仕事と価値を再認識し、誇りを持って生き生きと働いてもらいたい。マネジャーは自ら学び、真のマネジメント力を身につけていただきたい。経営者は戦略的方針を立案し、自信を持って素早く決断を下せるようになっていただきたい。可視経営協会は、このような「人」の育成に貢献していきます。

可視経営の考え方、手法・ツールを身につけることで、自分と組織を成長させ、経営を革新する――。それがひいては、日本企業が自信を取り戻し、グローバルな市場で競争を勝ち抜くための新たな力になると私たちは確信しています。

プロフィール

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社団法人可視経営協会 理事長
元本田技研工業副社長
西田 通弘 氏

従業員50人の零細な町工場だった創業2年目の本田技研工業に入社、以来30年間、現役として勤務し、代表取締役・副社長(2代目)を最後に引退。その後、執筆と各種団体のボランティア活動に従事する傍ら、全国各地で、経営者を対象とした講演活動を続け、講演回数は、1200回を超えている。本田財団顧問(元理事)、国際交通安全学会顧問(元副会長)等の公職を歴任。藍綬褒章と警察協力章(警察庁長官より)受賞、日本自動車殿堂より殿堂者(殿堂入り)拝受。著書に、『チャンスを逃がす人 活かす人』『隗より始めよ』『語りつぐ経営』『本田宗一郎と藤沢武夫に学んだこと』『「長」と「副」の研究』がある。

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社団法人可視経営協会 理事
株式会社システム科学 代表取締役社長
石橋 博史 氏

1962年から24年間、自動車機器メーカーに勤務し、教育担当、人事、総務、工場長、社長室(トヨタ生産方式、業務改善推進担当)の職務を歴任。86年、システム科学を設立、社長に就任。一貫してトヨタ生産方式・IEを基にした業務革新の実践及び支援ツール「HIT」の開発・導入、コンサルティングを推進、2010年2月に「業務プロセスの可視化法とチャート作成システム」で特許を取得。この間、ダイヤモンド社国際経営研究所で「業務革新の実践者養成講座」を担当、P.F.ドラッカー教授認定講座講師も務める。著書に、『業務革新の実践手法』『実践R.T.M.で企業革新』『HIT経営革新への実践技法』『可視経営』『可視経営で内部統制』『マネジメント力を磨く可視経営』『意識・行動が変わる続・可視経営』(4月1日発売予定)がある。

お問い合わせ先

一般社団法人可視経営協会

〒112-0002 東京都文京区小石川5-36-5 小石川スクエアビル5F
http://www.kashikeiei.org/
TEL:03-5805-5545 (平日9:00〜17:00)
FAX:03-5805-5503

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