

——エネルギー政策が見直されるなか、再生可能エネルギーへの早急な取り組みが期待されています。御社はすでに52年前から太陽光発電の研究開発に取り組んでこられ、太陽電池の生産量において世界シェア1位を占めていたほど。やはり早くから環境への意識があったのでしょうか?
大西徹夫常務執行役員(以下敬称略)ものをつくる企業としての責任は、創業時から根幹にありました。創業者の早川徳次は早くから、「無限にある太陽の光で電気を起こすことを工夫すれば、人類にどれだけ寄与するか、はかりしれないものがある」と、今でいう「エコ・ポジティブ」な考えを持っていました。この想いのもと、当社は1959年に太陽電池の研究開発に着手し、1963年には量産化に成功、その後も地道に研究開発と普及拡大に取り組んできました。そうした太陽電池の商用化および産業化への取り組みが、社会に貢献した重要な偉業として、昨年IEEEマイルストーン(※)に認定されました。
※世界最大の電気・電子学会であるIEEEが、電気・電子技術およびその関連分野において、社会に貢献した重要な歴史的偉業を称えるために1983年に制定。シャープは、2005年に「電卓の先駆的開発」でも認定を受けている。
——これまでの取り組み、また成果について、詳しくお聞かせいただけますか?
大西開発当初から30年ぐらいの間は、電力のないところで使う独立電源として、用途は灯台や人工衛星などに限られていました。当社の太陽電池はこれまでに2500箇所を超える灯台や160基以上の人工衛星に使用されてきました。宇宙航空研究開発機構(JAXA)から認定を受けている太陽電池メーカーは、現在当社1社だけです。
——その後、家庭用の太陽光発電事業へと進むのはいつ頃からでしょうか?

大西家庭用の太陽電池が普及し始めたのは1994年。政府による住宅用太陽光発電システムの補助金制度がスタートしたタイミングでした。また、電力会社が余剰電力を買い取る仕組みも同時に整えられたことで、太陽光発電システムが一般の住宅に普及するようになりました。当時の日本は太陽光発電の世界最大の市場で、シャープは太陽電池の生産量において、2000年から7年連続で世界No.1の座にありました。その後は、ドイツをはじめ欧州で再生可能エネルギーを拡大する政策のもと、フィードインタリフ(全量買い取り制度)が発足、設置量でドイツに首位を譲るかたちになりましたが、当社は太陽光発電のパイオニアとして、さらなる技術開発やコストの改善に取り組んでいます。
——他の発電方式に比べ相対的に発電コストが高い太陽光発電においては、普及に向けてコストの削減は非常に重要な課題ですね。
大西当社は50年以上にわたる太陽電池の研究開発の中で、継続してコストダウンに挑戦してきました。変換効率を高めるための研究開発や生産技術面での高効率化、太陽電池そのものの省資源化設計などを通じ、1994年頃に1kWあたり300万円を要した住宅用の設置費用が、現在は60万円以下になっており、1/5以下の大幅なコストダウンを実現しています。今後「グリッドパリティ」すなわち「既存電力並みの発電コスト」にまで下げることができれば、さらに大きな普及が期待できます。化石資源の枯渇や安全性ということを考えたとき、今後、世界の電力需要の中で太陽光発電への期待は益々高まっていくものと思います。そうしたなかで、「グリッドパリティ」の実現に向けたさらなる研究開発が、当社の最大のミッションであると認識しています。目標としては、今後3〜5年の間にグリッドパリティを実現したいと考えています。
——具体的には、どのような取り組みを行う予定ですか?
大西発電コストを低減するためには、変換効率を高めることと、新しい材料を開発すること、この両方からのアプローチが必須だと考えています。いずれにしても、技術的にさらに高い変換効率を目指した開発を行っていきます。現在は、設置面積の限られた住宅用など、ルーフトップに最適な「結晶太陽電池」とメガソーラー用途に適した「薄膜太陽電池」を両輪として、さらなる技術開発に取り組んでいる段階です。2010年には、大阪府堺市の「グリーンフロント 堺」に最新鋭の薄膜太陽電池工場を稼働させました。今年3月からはこの工場で新型の結晶太陽電池の生産も開始しています。この新型結晶太陽電池は、従来のものと比べ変換効率は約2割高く、今後もさらに変換効率を高めるように計画しています。
