クラウド時代のIT新潮流 監修者・星野友彦より(日経コンピュータ編集プロデューサー)

Cloud Trend

第3回 所有から利用へ クラウドが拓く新しいコンピューティング環境

所有から利用へ。クラウドコンピューティングが普及するにつれて、コンピュータの新しい使い方が開けていく。例えば、従来の環境では不可能または実現が難しかった超大量データの解析。一時的にコンピューティング環境を増強するにも、クラウドは好都合だ。そして企業にとっての最大のメリットは、新規ビジネスを立ち上げる際の障壁を低くできること。事業継続性を高めるためのデータ保存場所としても有用だ。

中央集権型から分散システムへ サーバー統合で使用率向上も

早稲田大学 理工学術院
博士(工学) 教授
山名 早人 氏

コンピューティングに対する需要の変化に素早く応えることを目的として、ネットワークのどこかにあるIT資源をサービスとして利用する「クラウドコンピューティング」。クラウドが注目されているのは、それ自体の優位性と魅力に加えて、従来の方式が最新のコンピューティングニーズに応えられなくなっているためでもある。

半世紀を超えるITの歴史は、一面ではコンピュータの使い方を見直してきた歴史でもあった。

大型コンピュータが世界に数台もあれば足りると考えられていたのが、1950年代の黎明期。その後、本社や計算センターにメインフレームを置き、バッチやタイムシェアリング(TSS)で使う方式が主流になった。さらに、対象領域が拡大するにつれて、中央集権型の形態は業務単位のクライアントサーバーシステムや分散システムへと置き換えられていく。そのほうが小回りが利き、業務ニーズにも素早く応えられるからだ。

ただ、クライアントサーバーシステムには、エンドユーザー用ソフトウエアの配布に手間とコストがかかるという問題がある。この対策として登場したのが、エンドユーザーのPCにはOSとWebブラウザーさえ用意しておけば済むWebアプリケーション方式。業務ごとにサーバーを稼働させることに起因する使用率低下をカバーするために、数年前からは仮想化技術によるサーバー統合も急速に進んでいる。

クラウドが生み出す新たな使い方 大量データの解析などに活躍する

クラウドコンピューティングは、このサーバー統合の延長線上にある方式として説明されることが多い。いくらサーバーを統合しても、一つの企業・団体内で実現できる効率化には限界がある。そこで、企業・団体の枠を超えたより大きな単位でサーバーなどのITリソースを仮想化すれば、使用率をさらに高めつつ、需要に応じた柔軟な割り当てができるようになるというわけだ。

では、そうしたクラウドコンピューティングが普及することによって、コンピューティングそのものにどのような変化が起こるのか―。

「用途によって、必要とするコンピュータアーキテクチャーは異なります。ですから、クラウドが台頭しても、個々のコンピュータアーキテクチャーは変化しないのではないでしょうか」

情報検索とデータマイニングを専門とする早稲田大学の山名早人教授は、このようにコメントする。

ただ、クラウドを提供する側にとっては、実際には有限であるITリソースをいかに効率良く提供できるかが運営上の最重要課題となることも確か。今後、複数ユーザーによるITリソースの共用をハードウエア回路で柔軟かつ効率的に行えるようにする機構が、より大規模に使われていくのではないかと山名教授は予測する。クライアント(ユーザー)とクラウドを接続するネットワークのサービス品質(QoS)も、重要なテーマだ。

また、クラウドコンピューティングは、従来の環境では不可能あるいは実現が難しかった使い方も可能にしてくれる。「情報爆発やビッグデータと言われるように、現在、デジタル化されたデータの量が指数関数的に増加しています。そうした超大量のデータを解析するには膨大なIT資源が必要となりますが、その処理は定常的に行われているわけではありません」と、山名教授。クラウドは、超大量データをスポット的に解析するのにぴったりのコンピューティング環境だという。

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