

第1回ではタブレット端末のメリットと可能性を紹介した。それらを実際にビジネスで活用する例も幅広い業種・業態で増えている。なかには、これまでの情報端末では困難だった新しい情報活用を実現し、大きな成果を上げている企業もある。タブレット端末のビジネス活用は、既に実用段階を迎えている。
では、具体的にどのようにタブレット端末を活用し、効果を得ているのだろうか。今回はタブレット活用の“最前線”を紹介する。
まずはじめに紹介したいのが、タブレット端末を集客ツールとして活用し、大きな効果を得ている飲食・サービス業の事例だ。ある宅配ピザチェーンでは、宅配サービスだけでなく、顧客の来店を積極的に促す新形態の店舗を出店。その集客ツールとして、店頭にタブレット端末を設置し、商品クーポンがもらえるゲームなどを提供している。これにより、通常2〜3%しかなかった来店率を30%程度にまで拡大させたという。
来店率が高まれば、宅配の経費や人件費を抑制でき、その分を商品価格に還元することも可能だ。コスト削減やライバル店との違いを打ち出す戦略的なツールとして、タブレット端末が大きな役割を担っているのだ(図1)。
タブレット端末なら画面にタッチするだけで操作できるので、子どもでも楽しめる。季節感や新商品をテーマにしたものなど、ゲームの入れ替えも容易。さらに、接客対応や新商品の感想など顧客の生の声を聞くアンケート調査にも活用できる。今後はタブレット端末を利用し、来店客が店員を介さずに直接注文できるオーダーシステムなど、業務効率化のツールとしての活用を目指すという。

携帯性を生かし、販売支援ツールとして活用する企業も多い。ある酒販業者ではワインの詳しい情報を顧客に提供することで、競合店との違いを打ち出すのにタブレット端末を導入、実績を上げている。ワインボトルに付けたタグやカタログに印刷したマークをタブレット端末が装備するカメラで読み取ると、そのワインについての詳細な情報を表示する仕組みだ。これにより、味や価格だけではない、製品の歴史や生産者の思い入れなども伝えられるようになり、商品説明の説得力が高まったという。
あるスーパーマーケットでは、タブレット端末とデジタルサイネージを使った販売促進策を展開している。専用のペンを使ってタブレット端末上にチラシ情報を描くと、それが店内に設置されたデジタルサイネージに配信されるというものだ。
携帯に便利なタブレット端末を使うことで、担当者は持ち場を離れることなく、「焼きたてのパンの販売を開始します」「本日の目玉商品 残りわずか」「午後4時からタイムセールを開催」といったリアルタイムな情報を即座に配信。店内のデジタルサイネージにその情報が表示されることで、購買喚起につながっているという。担当者は接客の手を休めることなく、消費者に直接訴えかけるダイレクトな情報提供が可能になる――。これはタブレット端末ならではのメリットといえよう(図2)。

教育分野でも、タブレット端末の活用が広がっている。最近は情報処理教育の一環として、学内にパソコン教室を整備する学校も多い。福岡県のある高校では一般教室で使える情報端末として教師、生徒向けにタブレット端末を導入。専用のアプリケーションを開発し、出席状況の把握や小テストを効率的に実施する仕組みを導入している。
例えば、小テストのアプリケーションを使えば、紙の印刷・配布・回収や、採点の手間が不要となる。テスト終了後、即座に正答率が分かるため、生徒の習熟度をすばやく把握できる。その結果を授業内容や個別指導に反映させることで、理解度の底上げを図ることが可能になったという。出席状況やテスト結果もタブレット端末上で管理できるため、授業管理がやりやすくなり、教師の業務効率化にも役立っている(図3)。
大学や専門学校、塾などではe-ラーニングのデバイスにタブレット端末を活用するところもある。例えば、ある大学では講義の内容を動画データとして記録。講義を欠席した生徒、復習を希望する生徒向けに録画した授業の内容を公開する。タブレット端末を使うことで、時間や場所の制約を受けずに、いつでも受講することができ、学習機会の拡大につながっている。
別の大学では通学が困難な山間部や離島に住む受講者向けに遠隔授業を実施。主婦が自宅で時間の空いた時にタブレット端末を使って講義を受けられるようにした。これにより、人材不足が懸念される地域での介護・看護師の確保とレベルアップを目指している。
こうしたe-ラーニングの仕組みは一般企業でも広く利用されている。例えば、社内研修や製品勉強会などの内容を録画・公開することで、教育コンテンツとして活用することが可能だ。参加できなかった社員や新入社員などが場所を選ばずに視聴することで、全社的なスキルアップが可能になる。社長訓示や経営方針発表など全社員に向けた情報発信にも役立つ。

このように様々な活用方法が広がる中で、意欲的にタブレット活用に取り組んでいる企業が多いのが、製薬業界だ。製薬メーカーは多種多様な医薬品を扱っており、情報の更新も頻繁。そのため、医療関係者に最新の情報を提供するMR(医薬情報担当者)の役割は重要だ。日々、新しい医薬品情報を把握し、最新情報の提供に奔走している。
医薬品情報は何万種類にもおよぶため、紙の資料で持ち歩くのは大変。予定していた医薬品以外の情報提供を求められた場合は、資料を整えて後日再訪問しなければならないこともある。
そこで、ある製薬メーカーではMR向けにタブレット端末を導入、医薬品情報のプレゼンテーションツールとして活用することにした。タブレット端末なら薄型なので、モバイルPCよりもかさばらず、画面のサイズも必要十分。こうしたタブレット端末の特性を生かすことで、見やすく理解してもらいやすい情報提供が可能になったという。オンラインで活用すれば、医薬品情報や医療情報を必要なときにその場でダウンロードできるため、想定外の要求にも円滑に対応でき、情報提供のスピードアップにもつながっている。
医療の現場でも活用が進んでいる。ある病院では地域と連携し、病院だけでなく周辺の消防署にもタブレット端末を配備。現場の救急救命士が医師による処置が必要と判断した場合は、消防指令室から医師のタブレット端末に現場の地図情報を送信し、現場での救急処置を依頼する。
専門性の高い治療が必要な場合は、専門医のタブレット端末に医療画像を送信。救急搬送の前に患者の情報を医師に提供することで、迅速・的確な治療に役立てている。こうした地域間連携が加速すれば、病院間の連携だけでなく、医師と患者の自宅を結ぶ新しい医療サービスの提供も視野に入ってくる。操作が容易で見やすいタブレット端末なら、パソコンの操作に不慣れな人や高齢者でも扱いやすく、遠隔医療や在宅医療でも活用しやすいだろう(図4)。
身近な暮らしを支えるサービスの一部として、あるいは企業の戦略ツールとして活用が進むタブレット端末。使い方次第で、顧客サービスの向上や業務効率化、コスト削減など様々なメリットが期待できる。実用段階に入ったタブレット端末の活躍の場は今後ますます広がっていくだろう。
以上、今回は業種別に、様々なタブレットの活用法を紹介した。次回は、タブレット端末の可能性とそれを支える新しいソリューションの数々を紹介しよう。






