クラウド時代のIT新潮流 監修者・星野友彦より(日経コンピュータ編集プロデューサー)

Cloud Case Study

北海道大学情報基盤センターがクラウドサービスを開始
高度なITサービスを柔軟かつスピーディーに提供

北海道大学情報基盤センターは、以前から全国の研究者向けにITリソースサービスを提供してきた。先頃、日立クラウドソリューション「Harmonious Cloud(ハーモニアスクラウド)」のプライベートクラウドソリューションを活用して「北海道大学アカデミッククラウド」をスタート。それにより、研究の競争優位性確保のカギとなるスピード感に富んだITリソースの提供を実現している。

サービス利用拡大に伴うリソースの窮迫が課題に

髙井 昌彰氏
国立大学法人北海道大学
情報基盤センター長
情報ネットワーク研究部門
教授
髙井 昌彰氏

北海道大学にあって、教育研究を支える情報化推進のための研究開発、情報基盤の整備・運用を担う情報基盤センター。同センターでは1970年以来、全国共同利用施設として全国の大学研究者に向け、学術研究に必要な大規模計算能力を備えたスーパーコンピュータ、および主に研究者支援のためのアプリケーションを搭載する汎用コンピュータを2本柱としたITリソースサービスを提供してきた。

2007年には、汎用コンピュータの部分をブレードサーバーにリプレース。それらのサーバーをホスティングサービスと、システムのルート権限を利用者に与え、より高い自由度をもって活用できる「プロジェクトサーバー」として提供してきた。

「ブレードサーバーを物理的に貸すという形態では、サービスのキャパシティがブレードの台数に依存し、限界があります。利用者の活用が進む中、リソースが足りなくなるという事態にも直面していました。そうした問題を解消する手段として我々が注目したのが、仮想化技術に基づくクラウドを活用するというアプローチでした」と同センターのセンター長を務める北海道大学の髙井昌彰氏は語る。

チャレンジングな取り組みに必要なポテンシャルを評価

これに対し情報基盤センターでは、2009年頃からサービス基盤のクラウドへの移行に向けた基本方針設計に着手。2011年初めにはその内容を確定させ、パートナーとしてシステム構築を担うベンダーを募った。一般競争入札の結果、パートナーに選定されたのが日立製作所(以下、日立)だった。

伊藤 和彦氏
国立大学法人北海道大学
情報環境推進本部
情報推進課
課長 兼 IT推進グループ長
伊藤 和彦氏

「例えば、従来のプロジェクトサーバーのサービスなどはPCクラスターでの利用も念頭に据えています。そうした意味ではHPC*1を指向したものだったといえます。クラウド上でも仮想サーバーを活用して同様の要件を満たしたいと考えていたので、パートナーにはそうしたチャレンジに耐えられるだけの企業としての体力や技術が不可欠でした。日立はまさに最適なパートナーだったといえます」と髙井氏は語る。

日立がパートナーに選定されたのが2011年4月のこと。直後から日立の「Harmonious Cloud」のプライベートクラウドソリューションを活用したシステム構築が進められ、2011年11月1日にはクラウド上からITリソースを提供する新サービス「北海道大学アカデミッククラウド」がスタートした。

「システム構築は非常に限られた時間の中で進められましたが、その間日立とは、画面設計など使い勝手の部分を中心に相当回数にわたって綿密な打ち合わせを実施。その都度、日立は私たちの要求を速やかにシステムに反映してくれました」と北海道大学の伊藤和彦氏は振り返る。

研究の競争優位性を確保するスピード感

構築されたシステムの構成としては、ブレードサーバーである統合サービスプラットフォーム「BladeSymphony(ブレードシンフォニー)」のハイエンドモデル「BS2000」114台を演算ノードに配し、40テラフロップスを超える論理演算性能を実現している。ストレージには仮想ファイルプラットフォーム「Hitachi Virtual File Platform」や、ミッドレンジディスクアレイ「Hitachi Adaptable Modular Storage 2000シリーズ」を利用し、760テラバイトの実効総容量を装備。こうした最先端技術を駆使した製品群の利用により、システム全体で2000以上の仮想サーバーが稼働可能な環境が整えられた。

また、クラウド基盤にはクラウド管理ミドルウエアCloudStack™と、サーバー仮想化ソフトウエアCitrix® XenServer®を採用。利用希望者が情報基盤センターのポータルサイトを通じてOSやミドルウエア、ストレージ容量などを選択して研究に必要な仮想サーバーの割り当てを容易に申請し、速やかに利用できるIaaS*2/PaaS*3の仕組みが実現されている。

棟朝 雅晴氏
国立大学法人北海道大学
情報基盤センター
大規模計算システム研究部門
准教授
棟朝 雅晴氏

PCクラスター構成の仮想サーバー256台を利用しているケースでは、申請からおよそ1時間少々ですべての設定が完了し、システムが立ち上がった実績もあるという。

「通常、大学で同等のリソースを調達するとなると、入札などのプロセスも含めて少なくとも半年はかかってしまうでしょう。それが1時間程度で済んでしまうというスピード感は、研究の競争優位性確保という観点からも非常に重要です。企業ビジネスの世界でも大きなアドバンテージになるはずです」。こう語るのは、北海道大学の棟朝雅晴氏だ。

そのほか、複数のクラスターパッケージによるMPI*4環境、Hadoopなどの分散処理環境を実装し、現在注目度が高まっているビッグデータの処理に関わる研究を支援していることも、大きな特徴である。

一方、今回のクラウド構築と併せて、北海道大学ではスーパーコンピュータの更新にも着手。利用者の既存資産や使い勝手の維持継承を念頭に、システムを従来利用されていた日立の「SR11000」から「SR16000」に置き換えている。

大宮 学氏
国立大学法人北海道大学
情報基盤センター
大規模計算システム研究部門
教授
大宮 学氏

これに関し、北海道大学の大宮学氏は次のように紹介する。「新システムでは、128ノード、4096個の物理コアを使った大規模分散メモリー型の並列演算処理が可能となっています。世界最先端の研究を支え得るこれだけの科学技術計算能力を提供できていることは、我々のサービスの中でもとりわけ大きな目玉となっています」。

今後も情報基盤センターでは、今回構築したアカデミッククラウドの基盤を中心に大学研究者の活動を強力に支援していく。

「将来的には、当大学のクラウドが他大学のクラウド、あるいは商用サービスなどとも連携し、互いにスケールメリットを享受していけるような方向に向かうものと考えます。今回、きわめて要求レベルの高いクラウドの構築に、ともにチャレンジした日立と協力しながらそうした未知の領域に切り込んでいくノウハウを築いていきたいと考えています」と髙井氏は今後の抱負を語った。

北海道大学のアカデミッククラウドのシステム概要図
北海道大学のアカデミッククラウドのシステム概要図

*1 HPC High Performance Computing 高性能計算
*2 IaaS Infrastructure as a Service
*3 PaaS Platform as a Service
*4 MPI Messaging Passing Interface 並列プログラミングの規格

  • ・Citrix、XenServerは、米国Citrix Systems, Inc.の米国およびその他の国における登録商標または商標です。
  • ・その他記載の会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。
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