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2018.07.06
求められる考え方の転換
今後は病気を治すのではなく、病人を治す医療へ 第2回

東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科 教授 中村正人 氏
取材:21世紀医療フォーラム取材班 竹林篤実 文責:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也

日本の医療は、大きな転換期を迎えている。その要因は、第一には高齢者の増加であり、第二には医療財政の逼迫である。もとより高齢者の増加と医療財政問題は、表裏一体の関係にあり、毎年増え続ける医療費を放置したままでは、いずれ国家財政が危機的状況に陥る恐れがある。

第1回では、高齢化と医療の進歩による疾患構造の変化、そのことによる問題点、さらに医療費の適正化をどのように進めていくのかについてお話を伺った。

第2回は、医療の現場では、この医療費の適正化をどのように捉えているのか。また患者や家族は、高齢になった時、どこまでの医療を望んでいるのか。そして、その折り合う地点とはどこか。また、心不全のハートチームのあり方、これからの医師のあるべき姿についても、引き続き、中村氏にお話をお伺いした。

中村 正人氏
中村 正人(なかむら まさと)氏
1982年 東邦大学医学部卒業、同大学医学部内科学研究生。1988年 三井記念病院出向。1992年 医学博士取得。1994年 米・Cedars-Sinai Medical Center留学。2000年 東邦大学医学部医学科学講座(大橋)准教授。2009年より現職
 
○学会活動
日本心血管インターベンション治療学会理事 日本脈管学会評議員 日本循環器学会評議委員 日本心臓病学会評議員 日本血管内視鏡学会理事 心血管画像動態学会理事 TOPICコースディレクター JETコースディレクターなど

医療をやらないコンセンサス

第1回は、医療費の適正化をいかに進めていくかというお話をお伺いしました。これについて、医療現場ではどのような課題がありますか。

中村 これまで私たち循環器内科の医師は、たとえ90歳の患者さんに対しても、心筋梗塞があればカテーテル治療を行ってきました。とはいっても、さすがに寝たきりの患者さんに対して行うことはまずなく、高齢とはいえ元気に歩いたり、自分自身でご飯を食べることができるような方が対象です。

ところが、救急で運ばれてきた場合には、そうした状況を把握できないので、とりあえず治療に当たらざるを得ません。その結果、果たして適切な治療だったのかと術後に悩むケースもあります。一方で、外来で普段から診ている患者さんなどは「私に何かあっても助けないでいいからね」と延命希望をされない人もいます。

そんな患者さんに限って、いざという時には遠くにいる家族や親族が色々なことを言ってくるケースもよく聞きます。

中村 患者さん自身が外来で来られるたび、「延命治療は望まない」と言われていたと説明しても、家族の感情が収まらないのもよくわかる話です。そこで今後の課題となるのが、一定以上の医療をやらないというコンセンサスを、関係者の間でどのように取っていくか。医療が高度化すればするほど、どこで医療を止めるのかを考える必要が出てきます。言ってみれば医学界全体にとっても、大きな方向転換が求められているわけです。

3月に行われた日本循環器学会の医学会総会でも「死生学」がテーマに取り上げられて話題となりました。

中村 これまでの医療は『一週間でも長生きできれば良い』を原則とすることで、家族を含めた患者さんと医師のコンセンサスが取れていました。しかし、これからはどこまで医療を施すのかをあらためて考え直す必要があります。これは医療の世界におけるパラダイムシフトです。

とはいえ、すでに心不全治療の最前線では、毎日のように「どこまで治療を続けるのか。どこで治療を止めるのか」が議論されています。この「どこで」の判断基準が点数化されたフレイルになる可能性は否定できません。