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2018.11.10
CRT普及のカギは、開業医の先生方とのネットワーク
~心不全パンデミックを防ぐためにも必要な地域連携~ 第2回

小倉記念病院 診察部長 兼 循環器内科 主任部長 安藤献児氏
取材:21世紀医療フォーラム取材班 竹林篤実

CRTのパイオニアともいえる安藤献児氏の原動力となっているのは、地域にいる患者を一人でも多く、少しでも高いレベルでケアしたいという思いだ。今後、心不全患者の急増が懸念される中で重要課題となるのが、心不全の初期段階、例えばNYHAⅡ度、あるいはⅠ度の患者に対する適応である。現実化しつつある心不全パンデミックを防ぐ策としても、より早い段階での対処が望ましいと安藤氏は語る。

安藤 献児
安藤 献児(あんどう けんじ)氏
1995年京都大学医学部卒業、京都大学臨床教授。日本内科学会 認定医 総合内科専門医 指導医、日本循環器学会 専門医、日本心血管インターベンション治療学会 専門医、植え込み型除細動器・ペーシングによる心不全治療 登録医、日本不整脈心電学会 専門医、外国人医師臨床修練指導医
 
○学会活動
日本心臓リハビリテーション学会 日本心不全学会 日本高血圧学会 日本心臓病学会

心不全患者のQOLを高めるために

小倉記念病院では、全ては「患者さんのために(For the patient)」を理念とされています。これについて詳しくお聞かせください。

安藤 我々は侵襲的な治療を行います。その際に決して忘れてはならないのが、自分が患者ならどんな治療を受けたいかと考える視点です。この考え方はCRTに限らず、カテーテル治療や内服治療を行う場合でも変わりません。どのような治療法であるかにかかわらず、仮に患者さんが自分の肉親だった場合に、どの治療を選択するのか。常にそのようなスタンスで日常診療に臨みなさいと。これが当院で代々受け継がれてきた考え方です。

だから安藤先生はムンテラを大切にされているのですね。

安藤 元をたどればドイツ語の「Mund Therapie」が意味するのは、患者との対話による治療です。医師が患者さんやそのご家族に、現在の病状や今後の治療方針を説明するのは、医師として当然の義務です。特にCRTのような治療を行う際には、しっかりとムンテラを行うべきです。

治療によるメリットとデメリットをきちんと説明し、侵襲的治療に伴うリスク、重篤な場合は死に至る可能性を否定できないこと、合併症のリスクなどに加えて、予後の日常生活の変化についてもあらかじめ納得していただく必要があります。外来対応で忙しいからムンテラに時間をかけられないという言い訳を私はしたくありません。

 

CRTのノンレスポンダーをどう考えるか

CRTを行う際のムンテラではノンレスポンダーの話もされるのでしょうか。

安藤 もちろんです。そもそもCRTを勧める患者さんは、心機能が低下しています。しかも、この段階に至るまでに内服治療を行っていながら、機能回復に至っていない患者さんです。心不全とは、昨年末に日本循環器学会が新たな定義で訴求したように「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」です。つまり、放っておくと生命に関わるのです。

だからCRTを勧める。これをやれば3人に2人は心機能が改善します。逆にいえばノンレスポンダーが3人に1人はいて、その場合は改善しない可能性もありますが、それでも治療を受けるよう話しています。なぜなら、何もせずにおくと、症状が悪化することだけは確実だからです。

とはいえノンレスポンダーは悩ましい問題ですね。

安藤 ただし、最近ではノンレスポンダーの割合が減りつつあります。以前は3分の1とされていましたが、最近では25%程度にまで下がっています。

その理由は次の2点が考えられます。第1には機器自体の性能が良くなっていること。以前よりも設定が精緻化され、より患者さんの状態に最適化された設定をできるようになりました。一方でCRT適応についての判断基準が、より緻密になってきました。その結果、ノンレスポンダーが出る確率が下がっています。こうした変化は、2014年頃から明らかになっています。