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2019.02.22
【開催報告】心不全啓発セミナー
40〜50歳からの心臓ケアで健康寿命を延伸「心不全は4回予防できる」
トーク・セッション第4回

2018年12月2日(日)、東京・TKPガーデンシティ御茶ノ水において、心不全啓発セミナー、「40〜50歳からの心臓ケアで健康寿命を延伸 心不全は4回予防できる」が開催された。会場からの質問票による「トーク・セッション」第4回をリポートする。

■トーク・セッション
座長:小川久雄 氏 国立循環器病研究センター理事長
パネリスト:小室一成 氏  東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授
      斎藤能彦 氏  奈良県立医科大学第一内科学教室教授
      桑原宏一郎 氏 信州大学医学部循環器内科学教室教授
      野出孝一 氏  佐賀大学医学部内科学講座主任教授

◯ 質問7
当時86歳の母親はリハビリ病院入院中に低ナトリウム症を懸念され、通常食に加え1日2〜3gの食塩製剤を投与され、70日後、うっ血肺・心不全となりました。処方は呼吸器が専門の内科医でしたが、別院で治療にあたった腎臓内科の医師は、高齢者に特有な検査結果を検討せず乱暴な処方だったと説明してくれました。
今後、心不全の高齢者が増加する中、医師の経験不足や情報教育を改善することはできないでしょうか。担当する先生を患者から選ぶのはとても難しいです。(医療情報/ヘルスケデジタル事業本部)

回答:小川氏

私自身、こうした経験は多数あります。肺に水がたまってくると非常に苦しいので、利尿薬で尿を出すと楽になりますが、腎臓は少し悪くなります。高齢者の場合はそのバランスが非常に難しい。苦しくない程度に利尿薬を使う、血管を広げる使う薬を使うなど、高齢者には高齢者特有のバランスを見ながら治療することが必要です。これは非常に経験のいる治療であることと、高齢者は劇的に良くなることはないので、悪化しないように少しずつ良くしていくというのが、私の経験からのポイントです。

今回のケースでは、腎臓内科の先生が利尿薬を使い過ぎだと言われたようですが、これはもっともなことです。ただ、肺にたまっていた水を出そうとした内科の先生の意図もわかります。やはりバランスが大事で、まずは循環器の専門の先生に相談してください。最近は紹介してくださいと言ったら、きちんと専門医を紹介してくれるので、循環器専門の病院にかかっていただきたいと思います。

治療も変遷があります。先ほど先生方に伺ったお話です。米国で荷車を引いた馬が坂道を上がっていく。そのときにどんな対応をするかというと、昔は鞭を打って叩いて上らせました。それで一時は元気に上っていても、ある程度の時間がくるとまたスピードが落ちてくることがわかってきた。

このように1980年代は、「叩く」ことが非常にはやりました。それで良くなった良くなったと思っていたところが、長い目で見ると実は良くならない。その後、今度は逆に馬のスピードをゆっくりにする、馬をゆっくりゆっくり上らせる方法が良いことがわかってきました。

それから一番良いのは積み荷をちょっと降ろしてやる。積み荷を降ろして何回か上らせると一番うまくいく。そういう治療を心不全でもやっています。馬のスピードを緩めるように、脈を少し落とすような薬や、荷物を降ろすように心臓の負担を取る薬があり、徐々に変わってきて今は非常に良くなってきています。このように治療の変遷もあるので、循環器の専門の先生に診てもらいながらやっていく方が良いと思います。

回答:小室氏

これは難しいですね。高齢者、特に超高齢者になると、腎臓の機能がどうしても弱るので、塩分を十分保てなくなり、血液中のナトリウム、食塩が減る傾向にあります。そこでナトリウムをやることはあまりないですが、しかし時には我々もやることがあります。そのときには十分注意しないとやはり水がたまってしまいます。私はこうしたケースは経験していませんが、これは十分あることです。

私たち専門医は心不全のことはよく知っていますが、循環器の中でも心不全が専門ではない先生は心不全をよく知らない。まして循環器でない先生は心不全を知らないので、私たちが一般の方に心不全の重要性について知っていただく努力をすると同時に、それ以上に実地医科の先生、循環器を専門としない先生にも、これから心不全患者さんが増え、どんな医師でも心不全患者を診ることになるので、その啓発活動をしていかなければいけないと思います。

心不全は様々な疾患から心不全になるので、実は非常に治療が難しいのです。例えば不整脈だったら不整脈を治せばいい、狭心症だったら狭心症を治せばいい、簡単に言うとそうなりますが、心不全は色々なことが起こり得るので、そういった面では治療は難しい。そうしたことを私たち心不全の専門医がもっと広く教育、啓発をしていかなければいけないと考えています。

回答:野出氏

本当に心不全の治療は難しく、カンファレンスでも心筋梗塞の症例はすぐ終わりますが、心不全は一番時間がかかります。原因は何か、治療についても様々な選択があるので、どうしても時間がかかる、あるいは難しいのです。

一方、実は循環器以外の先生方に一番治療して欲しいのも心不全です。難しいのに一番して欲しいのは心不全治療だからこそ、遠隔医療やチーム医療で一緒に診ていくことができると思います。

例えば、遠隔医療で実地医科の先生方が診ている症例を我々も診ていく。何か問題があれば我々がサポートをすれば、実地医科の先生方が安心して心不全の治療をすることができます。実地医科の先生方に心不全の治療をしていただけるよう循環器学会として取り組む努力も必要だし、そうした形での治療をしていかないと循環器内科医だけが心不全を診るのは恐らく無理になってくるので、遠隔医療や地域連携、チーム医療の方向性がこれから大事になってきます。

回答:小川氏

小室先生が言われたように、心不全の予防について一般の人が理解していくと、気づかないうちに悪化してしまう、あるいは悪化してから受診することも随分軽減されると思います。

回答:桑原氏

心不全の患者さんを地域で診ていく地域連携は非常に大事で、一般医の先生の力と専門医等が一つの地域の中で一緒になって診ていくことが求められています。高齢になるとBNPが上がって「どうしましょう」とよく聞かれます。高齢=心不全リスクでもあるので、そういったことをしっかり診て、地域の先生と共にやっていく地域連携は非常に大事だと、高齢者の多い信州にいると痛感しています。

重要なのは、そうしたシステムをしっかり作っていくことです。これまで日本の在宅医療や緩和医療、終末期ケアも含め、がんを中心に構築されてきた歴史があります。これは日本人の死因のトップは悪性腫瘍なので当然のことですが、今日お話があったように高齢者は心血管病で亡くなる方が多いので、高齢者を念頭に置いた在宅医療、緩和医療、地域連携のあり方を考えていくことが重要です。

心不全はがんとは違います。がんは一方通行です。がんは、専門的な治療ができる間は専門医が対応するものの、もう何も効かないとわかったら、「うちは診ないよ、在宅で看取って」と一方通行になりますが、心不全や循環器疾患は違います。在宅と病院の間を行き来しながら、在宅の割合が大きくなるというニュアンスです。がんとは全く考え方を変えていかないといけないところがあるので、今後は多職種と連携しながらシステムを作っていくことが重要です。

◯ 会場からの質問
BNPは通常の血液検査で測ってくれるのか。

回答:斎藤氏

全ての機関ではありませんが、オプションでBNPが付いている人間ドッグが増えていると思います。オプションで多少プラスαの料金がかかります。それから一般の開業の先生でも、心不全の疑いという病名で保険診療になっているので、一度測って欲しいと頼めばどこの先生でも測ってもらえます。

BNPのもう一つの使い方、理解の仕方は、「共通の言語」です。例えば専門の先生が、かかりつけ医の先生に患者さんを逆紹介するときは、「BNP100くらいがベースです」と伝えます。また、地域の先生が、「この方はいつも100のところ200になりました」と言うと、医師はどういう感じなのか、これからどのように悪くなってくるのかがわかります。つまり、客観的に患者さんのことを説明するのに使える共通言語のようなものです。

糖尿病のヘモグロビンA1cもかなり認知度が上がって、待合室で患者さん同士が「私は7だ」「私はまだ8ある」と言われることがあります。それと同じような形で心不全の方は、例えば自分のBNPは50くらいがいいと言われたと覚えておくことも大事で、それを専門の先生、かかりつけ医の先生、在宅の看護師さんとも共有すると管理がしやすくなるので、そのように使ってもらえたると良いと思います。

BNPとNT-proBNPと2つあり、一長一短、両方あります。正常値は随分違い、NTproの方が5倍から10倍多い。値が高いので、逆にならないように覚えておいてもらえるといいですね。

座長コメント:小川氏

以前から、がんに比べて循環器は市民への啓発活動が少し弱かったと指摘されてきました。小室先生が日本循環器学会の代表理事になられ、そうしたことも非常に意識しているので、今後はこうしたセミナーや市民講座を学会としても積極的に開いていく予定です。1回ではなかなか覚えられないこともあるので、また機会がありましたら聞いていただけると幸いです。

第4回終わり(連載4回)