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クラウドファースト時代のイノベーションの起こし方 企業変革を実現するクラウド利用の勘所

クラウドファースト時代のイノベーションの起こし方

データセンター

クラウドの最先端技術をオンプレミスで活用できる
Microsoft Azure Stackとは

クラウドの先進性は認識しているが、社内事情があるので利用したくてもできない――。そうした企業へ朗報となるのが、2016年内にも登場予定の「Microsoft Azure Stack」だ。ポイントは、Microsoft Azureで培われた基盤技術をオンプレミス環境に構築し、それぞれの特徴を生かしたハイブリッド環境でシステムを運用できること。社外に持ち出したくないデータを扱う場合の業務システムにも最新のクラウド技術を適用することができるほか、運用管理を自動化する仕組みによって管理工数の削減も見込めるのだ。

クラウドに移したくない業務システムもまだまだ存在する

日本マイクロソフト株式会社
エバンジェリスト
高添 修

 世界各地をカバーする30のリージョンと数百社のサービスプロバイダーを通じて提供されているマイクロソフトのクラウドサービスMicrosoft Azure。その現状を日本マイクロソフト エバンジェリストの高添 修氏は「北米の大規模データセンター1つだけでサーバー台数はすでに100万台を超えており、ストレージサービスには10兆個以上のオブジェクトが格納されています」と話す。

 規模以外にも、Microsoft Azureには優れたポイントがたくさんある。処理速度と拡張性(スケーラビリティ)はきわめて高く、管理ポータルを使ってエンドユーザーが自らIT資源を調達するのも容易。DevOps(開発者と運用者が連携協力する開発手法)のIaC(Infrastructure as Code)にも対応しているので、運用管理を自動化/省力化するのもたやすい。ソフトウェア開発者の間では、Windows Serverだけでなく、Linuxに代表されるオープンソフトウェア(OSS)を存分に使えることも歓迎されている。

 しかし、高添氏は「理想論としてはすべての業務システムをMicrosoft Azureに移行していただきたいところなのですが、それが今すぐ実現するわけではないことも理解しています」と語る。

 理由はいくつかある。例えば、パッチ適用タイミングなどのメンテナンスを独自に行いたいというような自社でのSLAを満たしたい場合、自社内にしか置けないデータがあるような場合、そして、既存のデータや処理システムなどの資産があり接続性の要件からオンプレミスにクラウド技術をホスティングしたい場合などだ。

“オンプレミスで使えるMicrosoft Azure”が2016年内に登場!

 このようなユーザー企業の声に応えるべく、IT企業は“オンプレミスで使えるクラウド”の開発・普及に努めてきた。マイクロソフト製品では、Windows Serverベースのデータセンターにセルフサービス/Software Defined Networking(SDN)/DBaaSなどの機能を追加するMicrosoft Windows Azure Packがそれにあたる。

 そして、2016年――。クラウドファーストをコンセプトとしたMicrosoft Azure Stackが登場する。

 「省かれている機能や一部実装方法が異なる点もありますが、クラウドのMicrosoft Azureのオンプレミス版と言ってもよいでしょう」と高添氏。社外に持ち出したくないデータをクラウドの技術で効率的に格納/処理したり、自社の都合に合わせてMicrosoft Azureの最新技術を取り込んだりといった使い方が可能になるのである。

 当然、Microsoft Azure Stackの構成は、Microsoft Azureとほぼ同一になっている。ベースにあるのは、コンピュート(計算)、ストレージ(格納)、ネットワーキングの3要素から成るインフラストラクチャ。このうえでIaaSとPaaSが業務アプリケーションを実行し、Microsoft Azure Stackの管理はAzure Resource Manager(資源管理の共通機能)を介してポータルや種々のツールで行うという枠組みだ。

クラウドの最新技術をオンプレミスで使えるMicrosoft Azure Stack
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 ただし、いくつかの相違点はある。機能面では、IoT、ビッグデータ、機械学習(ML)などが(現状では)含まれていないこと。もちろん、Microsoft Azure側のサービスをネットワーク経由で利用することは可能だ。

 また、ストレージの拡張性も“無限”ではない。「企業が準備できるサーバーとストレージの台数を考えると、Microsoft Azureとまったく同じストレージサービスを実装するのは現実的ではない」(高添氏)からだ。ただし、利用者からもAPI経由でも同じ使い勝手になるよう、次期サーバーOS Windows Server 2016の持つストレージ機能のうえにBlobやTableなどのクラウド型ストレージ機能を実装している。

運用管理はMicrosoft Azureと同様。自動化テンプレートも提供される

 一方、ポータルとして提供されるユーザーインタフェースはMicrosoft Azure用のものとほぼ同一になっている。現業部門の一般ユーザーでも、セルフサービスで仮想マシンを作るのは容易だ。

 また、Microsoft Azureと同様、資源管理を自動化するIaC対応のテンプレートもあらかじめ用意されている。「Docker(Linux)用エクステンションも含めて、Microsoft Azure Stackで使えるテンプレートもGitHubに登録されています」と高添氏。インフラストラクチャの管理を担当する技術者だけでなく、ソフトウェア開発やテストのための環境を用意する技術者にとってもメリットは大きい。

 ただし、Microsoft Azure相当のクラウドを企業が自ら運用するからには、サービス化を意識した作業も発生する。Microsoft Azureではマイクロソフトの技術者が行っている管理作業を、企業の運用管理技術者が行わなければならないのだ。

 具体的には、データベースやIaaS/PaaSなどのいくつかのサービスを束ねた「プラン」を作り、公開方法(パブリック/プライベート/デコミッションド)を指定した「オファー」にまとめ、その全体をITリソースとして管理するという作業が必要。そのための管理者専用画面も、Microsoft Azure Stackには用意されている。

現在はテクニカルプレビュー段階。導入に向けた検討作業を急ぎたい

 Microsoft Azure Stackの提供スタートは2016年内予定。テクニカルプレビュー(TP)もすでに始まっている。「国内での導入が進めば、活用のための情報を技術者同士で交換できる場も広がります」と高添氏は語る。マイクロソフトは世界レベルで数千社のエンタープライズがAzureのエコシステムに参加すると見込んでいるという。

Microsoft AzureとMicrosoft Azure Stackを使うエンジニアの経験と知見を社内IT基盤の最適化に活かせるようになる
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 これまでの数年、企業インフラは仮想化技術を使って効率化を図ってきたが、ビジネスのためのITを標ぼうするのに仮想マシン作成をゴールにするわけにはいかないのも事実である。パブリッククラウドMicrosoft Azureのメリットを自社内に展開するというコンセプトが注目されるのも時代の流れといえよう。さらに、高添氏は「従来の仮想マシンありきの発想でMicrosoft AzureとMicrosoft Azure Stackの間で業務システムを“行ったり来たり”させる運用は避けるべきです」と注意を促す。Microsoft Azure Stackの導入を決めたのであれば、そうするだけの経営的・技術的な理由があったはず。“行ったり来たり”が発生するようでは、導入時の検討が甘かったと言われてもしかたがないという指摘だ。同じアプリケーション、同じコンテナ、同じサービスをどこにでも容易に展開/運用できることの重要性こそMicrosoft Azure Stackの求める世界のようだ。

 また、Microsoft Azure Stackベースの“オンプレミス型クラウド”のサービスレベルと運用品質を高い水準に維持するには、運用管理技術者にもそれなりのスキルが求められる。「Microsoft Azure Stackを導入すれば仮想マシンの構築などは自動化できますが、自動で制御する先のストレージやネットワーク、APIベースの通信なども正しく理解しておかないと障害対応は難しいでしょう」と高添氏は語る。今後、研究会やトレーニングなどの場を通じて“本物のスペシャリスト”の育成に努めていきたいという。

 日進月歩の勢いで進化が続くクラウドの最新技術をオンプレミスに取り入れることによって、企業のIT環境を最適化する――。この目標に向けた企業間の競争は、間もなく始まろうとしている。

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