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クラウドファースト時代のイノベーションの起こし方 企業変革を実現するクラウド利用の勘所

ケーススタディ:TANREN

データセンター [ケーススタディ:TANREN]

スタートアップ企業に最適なクラウドは?
動画で学ぶロールプレイングを事業化

接客技術を向上させるためのオンラインサービスを企業に提供したい――。このような思いから生まれたのが、クローズド動画投稿サイトに評価と共有の仕組みをプラスしたナレッジシェアアプリ「TANREN」だ。運営元のTANREN社は、2014年10月に設立されたばかりのスタートアップ企業。システム基盤にはMicrosoft Azureを選択し、スタートアップ企業向けのマイクロソフトの支援プログラム「Microsoft BizSpark」を利用することによって、短期間にサービスインにこぎ着けた。

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ロールプレイングでの接客練習をクラウドと動画で効率化したい

 ナレッジで接客業に革命を――。クラウド型ナレッジシェアアプリ「TANREN」を提供するTANRENが設立されたのは2014年10月。6カ月後の2015年4月には、マイクロソフトのパブリッククラウド「Microsoft Azure」上でサービスを開始した。

 TANRENの基本的な使用方法は一般の動画投稿サイトと同じである。スマホなどで動画(ムービー)を撮り、専用アプリやWebサイトからアップロードすると、その動画がクラウドに保管され、投稿者以外の人も見られるという仕組みだ。一般の動画投稿サイトとの違いは、企業・団体が内部でクローズド運用することだ。投稿された動画に対して「評点」を付けるのである。元々は接客業のトレーニング手法である「ロールプレイング」用に開発されたものだが、現在では広範な業種・業態向けの汎用的な動画共有サービスとしても使われている。

 接客業の世界では、商品やサービスの魅力を来店客にいかにうまく説明するか、質問されたことにいかに的確に答えるかが売り上げと顧客満足度向上に大きく影響する。

TANREN株式会社
代表取締役社長
佐藤 勝彦

 「従来のeラーニングのようなインプット主体のトレーニングでいくら良い点を取っても、それがお店での実際の売り上げにつながるとは限りません」と指摘するのは、TANRENの代表取締役社長を務める佐藤勝彦氏。実際の接客シーンにきわめて近い状況で販売員に“演技”させ、その様子を店長やエリアマネージャーが評価するアウトプット主体のロールプレイングのほうが効果的と佐藤氏は考えている。

 ただ、ロールプレイングを実際に行おうとすると、さまざまな課題が生じる。「店舗が全国に何百もあると本部から評価者を派遣したり、本部に販売員を集めたりするには時間や費用の制約があります」と佐藤氏は語る。そこで、動画をパブリッククラウドに置けば誰もがいつでもどこでも使えるようになると思いついたのだという。この方法なら、評価者は本部のオフィスで採点やコメント付けが可能だ。各地の店舗にいる販売員は、自分のレベルを確認したり他の店舗にいる“接客の鉄人”の技を見て学んだりといった“鍛錬”をスキマ時間に自分のスマホで実践できるのである。

TANRENで“接客の鉄人”を養成する
Microsoft Azureを利用した動画ナレッジシェアアプリ。動画の評価者は本部のオフィスで採点やコメント付けが可能。各地の店舗にいる販売員は、自分のレベルを容易に確認できる
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大手業者の安心感と低価格を評価。Microsoft Azureは支援体制も充実

 TANRENを事業化するにあたっての最重要の検討事項は、「どのパブリッククラウドを利用するか」だった。スタートアップ企業としては、ビジネスが軌道に乗るまでの費用を可能な限り抑えたかったのである。「国内の大手クラウドと海外のメガクラウドの5社のパブリッククラウドを候補としました」と佐藤氏は振り返る。クラウドサービス利用に関するコミュニティで知り合った何人かに相談し、それぞれのクラウド企業から見積もりをとった結果、Microsoft Azureを利用することに決めた。

 「Microsoft Azureには大手クラウドならではの安心感がありました。これだけ大規模なパブリッククラウドなら、当社のビジネスがグローバルに展開するようになっても安心だと考えたのです。特に動画配信のシステムはストレージの価格はとても重要な項目ですが、そこも含めて利用料金は思ったよりもリーズナブルでした。もちろん、絶対額ではもっと低価格を提示されたクラウド企業もありましたが、技術力や信頼性を加味するとMicrosoft Azureが最もよいという結論に至りました」(佐藤氏)。

 また、スタートアップ企業向けの支援策が充実していることもTANRENにとっては大きな魅力だった。マイクロソフトには「Microsoft BizSpark」という制度があり、設立5年未満の企業や法人化を目指す起業家が申し込むと「Microsoft Visual Studio Enterprise with MSDNの3年間無償利用」「Microsoft Azureの3年間無償利用(最大2万7000ドル分に相当)」「テクニカルサポート」の特典を受けられるのである。

 さらにTANRENは株式会社サムライインキュベートと米国マイクロソフトの承認により、「Microsoft BizSpark」上位プログラムである「Microsoft BizSpark Plus」の認定に成功した。このプログラムはMicrosoft Azureの無償利用枠が年間12万ドルと大きく、ビジネスの早期立ち上げを目指していたTANRENには好都合だった。認定を受けるにはマイクロソフトが指定するアクセラレータ企業の推薦が必要である。

 「『Microsoft BizSpark』を通じて、サムライインキュベートさま、NHN テコラスさまから具体的なご支援を受けてます。スタートアップにとってこのようなマイクロソフトの人的プラットフォームはとても心強いです」と佐藤氏はいう。

 マイクロソフトのパートナー企業のNHN テコラス株式会社はTANRENのシステム要件に基づき、インフラ環境の設計・構築、稼働後の継続した保守運用にかかわる支援を提供する枠組みになっている。NHN テコラスは、クラウド事業やマネージド事業、データセンター事業、セキュリティ事業を手がけるIT企業であり、Linuxやオープンソース技術に強みを持つ。

TANRENのシステム概略図
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LAMPアプリもそのままで動く! 知名度が高まり、商談も増えた

 TANRENがMicrosoft Azureの利用を開始したのは2015年2月。3月にはBizSpark Plusの認定を取得し、4月には本サービスを開始することができた。「当初、TANRENのアプリケーションはLAMP(Linux-Apache-MySQL-PHP)環境で作っていたのですが、そのままMicrosoft Azure上で動かせることに驚きました」と佐藤氏は振り返る。

 さらに、2016年2月はNHNテコラスの運用技術サポートがスタート。「NHNテコラスさまに助けていただきながら、データベースをMySQLからMariaDBのクラスター構成に変更して可用性を高め、メディア配信サービスのMicrosoft Azure Media Servicesを使ってMicrosoft Surfaceなどの多様なデバイスで投稿・再生できるようにする拡張を加えているところです」と佐藤氏はいう。

 機能はシンプルだがユニークなサービスとして、TANRENはすでに30社を超える企業でロールプレイングでの“鍛錬”に使われている。多くを占めるのはモバイルショップ(携帯電話販売代理店)だが、ブライダルサロンやRIZAP株式会社が運営するトレーニングジムなどでも活躍中。店内の什器や機材の配置のチェック、パウダールームのクリンネスの確認、朝礼の様子を動画で共有といった用途にも使われているという。

 マイクロソフトのエバンジェリストやエンジニアによる“コミュニティでの応援”もありがたかったと佐藤氏はいう。例えば、日本マイクロソフト主催のセミナーイベントで「Empower DISRUPTION! 創造的破壊を牽引するスタートアップ企業パネルディスカッション」にパネリストの一人として参加できたほか、他のセミナーやコンテストに出たときもMicrosoftのコミュニティメンバーがSNSでエールを送ってくれたという。このような場で知られることによって、意外な業種・業態からの引き合いや商談も増えているという。

実際の接客シーンを評価し共有する新サービスの検討も進めている

 ロールプレイングのためのオンラインサービスがうまく動き出したことを受けて、TANRENはより実践的な販売員トレーニングメソッドをMicrosoft Azureで提供するための検討を開始した。模擬的なシナリオで“演技”させるのではなく、実際の接客シーンを店内のモニターカメラで撮影し、その動画データを本部が評価したり他の店舗が教材として利用したりするのである。

 また、EdTech(education+IT)領域への進出に向けても、TANRENは着々と手を打っている。「従来のeラーニング研修は現場ニーズに合っていないというのが当社の認識です。ITのチカラで教育の世界に革命を起こし、OJTとうまく連携したアウトプット主体の研修を広めていきたいです」と佐藤氏は語る。3年後にはグローバルなEdTech企業として認知されるようになりたいという。

 「最終的には、お店を改革することがTANRENのねらいです。いくらデジタルが進んでも、日本ならではの所作やおもてなしが不要になるわけではありません。デジタル化でスキマ時間が生まれたら、当社のサービスでぜひ“鍛錬”していただきたい。それが、われわれからのお願いです」(佐藤氏)。

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企業プロフィール
  • TANREN株式会社

    ■本社所在地:東京都千代田区九段南1丁目5番6号 りそな九段ビル5階 KSフロア
    ■設 立:2014年10月15日
    ■資本金:1,700万円
    ■代表者:代表取締役社長 佐藤勝彦

マイクロソフト パートナー企業プロフィール
  • NHN テコラス株式会社

    ■本社所在地:東京都新宿区新宿6-27-30 新宿イーストサイドスクエア13階
    ■創 立:2007年4月
    ■資本金:21億円
    ■代表者:代表取締役社長 稲積憲
    ■URL:https://nhn-techorus.com/
    ■TEL:03-5155-0111(代表)

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