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クラウドファースト時代のイノベーションの起こし方 企業変革を実現するクラウド利用の勘所

ケーススタディ:大成建設

データセンター [ケーススタディ:大成建設]

IIJの閉域接続サービスとMicrosoftの閉域接続サービス
「ExpressRoute」を組み合わせて、Office 365への安全で安定した接続を実現。
グループ会社を含めた2万1000人が活用し総合建設業のワークスタイルを変革

国内外の企業と広く協業・連携し、ワークスタイル変革を推進するには、“開かれた”コミュニケーション/コラボレーション環境が必要――。このような考えから総合建設業大手の大成建設が選んだのが「Microsoft Office 365」だ。そのOffice 365を使うのに最適なネットワークとして、IIJはMicrosoftの閉域接続サービス「ExpressRoute」へ安定した低遅延の閉域接続サービスを提案。Web会議(Microsoft Skype for Business Online)等の情報共有時の遅延を減らし、必要なセッション数を柔軟に確保。グループ会社を含めた2万1000人が活用し、総合建設業における働き方改革を進めている。

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課題
  • 国内・海外の拠点とプロジェクトデータを共有したい
  • ダイバーシティや介護離職防止といった今日の社会的要請にも応えたい
  • Web会議時の回線遅延と揺らぎを抑え、十分なセッション数を確保したい
  • 地震などの大規模災害に遭っても業務を継続できる事業継続性を確保したい
効果
  • 電子メール、Web会議、情報共有の各機能をSaaSの形態で利用可能な状態に
  • 閉域接続サービスによって東京-大阪間の遅延量を10ミリ秒台に抑制
  • Web会議に必要なセッション数を確保し、増減も柔軟に可能
  • プロジェクトデータ共有による差異化とBYOD機器からのアクセス環境を整備

"ネットワークと情報セキュリティについて高い技術力を有するIIJの提案はMicrosoft Office 365を使う上でベストだった"

Background 導入前の課題

ワークスタイル変革を可能にするICTソリューションの必要性

 大成建設は、1873年に大倉組商会として誕生した総合建設企業である。1887年には、日本初の建設業法人である有限責任日本土木会社を設立。数回の社名変更を経て、1946年から現商号を使用している。現在では、スーパーゼネコンの1社として建物・公共施設の建設から都市開発や環境保全などのさまざまな事業を展開中。グループ企業・関連企業を含めた総人員は2万人を超える。企業のキャッチコピー「地図に残る仕事。」でも有名だ。

大成建設株式会社
社長室
情報企画部
部長(担当)
北村 達也

 本社、15支店、技術センター、47営業所のほか、建設現場などに約1200ヵ所の作業所があることから、大成建設はICTを活用したコミュニケーション/コラボレーションに以前から力を注いでいた。「社員同士がコミュニケーションするグループウェアはオンプレミスでした。作業所で日々発生するプロジェクトデータを管理、情報共有するために、クラウドである『作業所Net』の利用を2003年10月にスタートさせました」と説明するのは、同社 社長室 情報企画部 部長(担当)を務める北村達也氏。社内ではオンプレミスのグループウェア、協力会社や設計事務所などの社外関係者との情報共有はクラウドの『作業所Net』、社外関係者とのコミュニケーションはインターネットの電子メールというようにツールを使い分けていたという。

 こうした仕組みを見直すきっかけとなったのが、東京オリンピックが開催される2020年に向けての国内建設需要の高まりと、その後に予想されるグローバルビジネスへの拡大だった。「国内でも従来とは異なる形態の協業が生まれてくることでしょうし、海外拠点との連携もいっそう深めていかなければなりません」と北村氏は語る。日本を含む世界の多くの人がスマートフォンに代表されるモバイルデバイスを日常的に使っていることを考えると「いつでもどこでも利用できて、社外にも開かれたグループウェア/電子メールへの切り替え」と「モバイル対応」が急がれたのである。

 一方で、コンプライアンスや社会的要請に応える必要もあった。まず、従来と同様、建築に関わるデータは基本的には顧客である施主のものなので外部に流出することがあってはならない。また、建設業としてダイバーシティや介護離職防止といった今日的な課題を解決するには、ワークスタイル変革を可能にするようなコミュニケーション/コラボレーションのICTソリューションであることも求められた。

Conclusive 選定の決め手

低遅延の閉域接続でOffice 365を安定して使えるIIJの提案を採用

 「このような課題を解決するには、心地よく使えるが社内に閉じていた情報共有の仕組みから、世界のデファクトスタンダードへと移っていかなければならないことは明らかでした」(北村氏)。「ICTを活用した働き方改革」と名付けられたプロジェクトがスタートしたのは、2015年8月のことだった。まずは、建設業を含む多くの企業・団体での導入実績がある「Microsoft Office 365」を候補として選んだうえで、日本マイクロソフトのコンサルタントに業務分析を依頼。現業部門にヒアリングするなどの方法で、想定される使い方とそれによって生まれる効果を試算した。

 次に、その業務分析の結果を基に要件をまとめていった。業務要件として挙げられたのは、電子メール、Web会議、情報共有、デスクトップアプリケーションのそれぞれを提供すること。長期的には、企業内ソーシャル、動画再生、企業ポータル(EIP)の各機能を段階的にリリースすることも求めた。

 システム要件として設定されたのは、回線の「レイテンシー(遅延量)と揺らぎ」「スピード(帯域幅)」「セッション数」に対する要求値と、地震などの大規模災害に遭っても業務を継続できる災害復旧(DR)能力である。

株式会社大成情報システム
品質統轄部
ITスペシャリスト
植野 雅俊

 「Web会議や動画再生をスムーズに使えるようにするには、レイテンシーをインターネット並みの100ミリ秒台ではなく、数十ミリ秒未満に抑える必要がありました」と振り返るのは、大成情報システム 品質統轄部 ITスペシャリスト 植野雅俊氏。多くの人がWeb会議に参加するシーンを想定すると、1人当たり40セッション×約2万名を確保できることも必須の条件だったという。

 また省庁/地方自治体の庁舎や道路/橋梁といった公共施設を数多く手がけてきた大成建設にとって、被災後の調査・復旧を短時間に開始できることは事業の根幹にかかわる能力でもあった。

 こうした要件を受けてIIJが提案したのが、二重化WAN接続と閉域接続サービスの組み合わせだった。具体的には、大成建設の2ヵ所のデータセンターとIIJの2ヵ所のデータセンターを個別の専用線(WAN)でつなぎ、IIJ GIO プライベートバックボーンサービス(以下、PBB)とIIJクラウドエクスチェンジサービス(以下、CXM)を経て、閉域接続サービス「ExpressRoute」経由で日本マイクロソフトのデータセンター(関東・関西)に到達する方式である。WANとアクセスポイントを二重化することにより、冗長構成を実現。また、インターネット経由への切り替えも可能にすることで、万全のシステム継続性を確保したのである。

 提案書を受け取った大成建設は、「ExpressRouteをサービスの一環として使用できる」「IIJの事前検証でレイテンシーが10ミリ秒台だった」「ネットワークと情報セキュリティについて高い技術力を有する」などを評価してIIJ案の採用を決定。2015年暮れから構築作業を開始した。

Details 導入後の効果

東京-大阪間で低遅延で安定した通信を達成。ワークスタイル変革の礎はできた
[画像のクリックで拡大表示]

 「全社プレビュー」というかたちで全従業員向けのサービスが試験的に始まったのは、2016年2月15日。試行開始の報告を受けた経営層からは、「ツールを導入しただけで終わりとするのではなく、従業員に使わせるためのフォローをきちんと行い、所期の効果を達成するように」との指示があった。

 北村氏を始めとするプロジェクトのメンバーは全国の支店を回って支店幹部・作業所長・ICT化のキーパーソンを対象とした説明会を開催。新しいコミュニケーション/コラボレーションの仕組みを利用するように促している。

 その甲斐あって、Office 365の利用者は急ピッチで増加。試行開始5日目には、早くも、1日のログイン回数が1万以上、利用者数(重複除く)でも1400名以上を達成した。従来のオンプレミス型グループウェアとインターネットのメールからの移行が完了するのは、2016年5月になる見込みだ。

 システム要件のいくつかの項目については、大成建設の要求を満たすものであることがすでに確認できている。「確認してみたところ、東京-大阪間のレイテンシーは10ミリ秒台でした」と植野氏。Web会議用のセッション数についても、「利用者一人当たり40セッションの確約がIIJから得られ、利用状況に応じて、セッション数の増減も柔軟にできる」(植野氏)ことに満足している。

 また、業務要件については、Office 365を使えるようになったことで第1段階(Microsoft Exchange Onlineによる電子メール、Microsoft Skype for Business OnlineによるWeb会議、Microsoft OneDrive for Businessによる情報共有)はすでにクリア済み。Office 365のデータセンターまでWANと閉域接続サービスで接続することによって、障害発生時の問題切り分けも容易になったと情報企画部は評価している。

 「『ICTを活用した働き方改革』プロジェクトの第1段階が動き始めた結果、当社のコミュニケーションとコラボレーションの環境は、ようやく他のOffice 365利用企業と同じスタートラインに立ちました。今後、“容量無制限”のOneDrive for Businessを活用したプロジェクトデータ共有の仕組みや、今回採用したExpressRouteによる低遅延のネットワークによってOffice 365の活用を推進し、他社との差別化を進めていきたいと考えています。当社は以前からBYOD(私的デバイス活用)を実施していますが、Office 365も多様なモバイルデバイスでの利用が可能。より多くの従業員が自分のスケジュールをOffice 365の予定表に登録するようになれば、現場を飛び回っている人を含めて全スタッフの行動予定をいつでも確認できるようになり、打ち合わせのための調整作業も不要になることでしょう」(北村氏)。

Result 今後の展望

モバイルからの閉域接続に続き、Microsoft Azureへのアクセスにも使いたい

 ひとまずの成果を得られる見込みが立ったことを受けて、大成建設はパブリッククラウドの利用をさらに拡大していこうと考えている。

 すでに始まっているのが、関係会社への横展開である。「グループ会社・関連会社はネットワークやコミュニケーションツール等の基盤となるICTを統一し、共同利用しており、今回のOffice 365についても主旨説明や操作説明会に参加してもらっています」と北村氏。資本系列が異なる企業との情報共有にはまだ一定のハードルがあるものの、案件によっては個別の対応をとる可能性もあるという。

 また、BYOD用のモバイルデバイスからOffice 365へのアクセスをよりセキュアにするための検討も始まっているという。「現状では、スマートフォンなどのモバイルデバイスからOffice 365へのアクセスは一般のインターネット経由」と北村氏はいう。

 さらに、Office 365に含まれるMicrosoft SharePoint Onlineを企業ポータル実現の仕組みとして活用しようとする構想もある。「従来の業務システム用のポータルがまだ生きていますので、現状では、そのポータル画面からOffice 365にシングルサインオンする方式としています。しかし、大多数の一般利用者の行動パターンを考えると、業務システムよりも、コミュニケーション/コラボレーションを使うことのほうが多いはずです。そこで、企業ポータルはSharePointで作成し、その中から業務システムに入るように“逆転”させようと構想しています」と北村氏は語る。2019年頃には、この更改を含めて、Office 365の完全活用が成る予定だ。

 今後、PBBとCXMを経てExpressRoute経由でMicrosoftのデータセンターに接続する経路は、コミュニケーション/コラボレーション以外の用途にも使われることになる予定だ。植野氏は「今、新規構築する基幹系業務システムをパブリッククラウドのMicrosoft Azureを基盤として構築する計画があります」という。日本マイクロソフトが国内に設置しているデータセンターに閉域接続する方式なら、顧客の物件に関する情報であっても大成建設社外での保管についての了承を得やすいと情報企画部はみている。

 基幹系業務システムを稼働させるためのクラウドともなると、仮想マシンやストレージ、ネットワークに対して求められる品質のレベルも一段高まる。大成建設は、包括的なクラウドソリューションプロバイダーとしての役割をIIJに期待している。

左から株式会社大成情報システム 品質統轄部 ITスペシャリスト:植野 雅俊 氏
株式会社大成情報システム インフラ運用部長:葛原 徹 氏
大成建設株式会社 社長室 情報企画部 部長:北村 達也 氏
大成建設株式会社 社長室 情報企画部 インフラ計画室長:山田 哲也 氏
  • 本記事は2016年2月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名などは取材時のものです。
  • Microsoft , マイクロソフト , Microsoft Azure , およびWindowsは、米国Microsoft Corporationの、米国、日本およびその他の国における登録商標または商標です。
  • その他記載されている、会社名、製品名、ロゴ等は、各社の登録商標または商標です。
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お客様情報
  • 大成建設株式会社

    ■創業:1873年(明治6年)10月
    ■設立:1917年(大正6年)12月28日
    ■本社:〒163-0606 東京都新宿区西新宿一丁目25番1号 新宿センタービル
    ■資本金:1227億4215万8842円
    ■従業員数:8007名(2015年3月31日現在)
    ■事業内容:スーパーゼネコンの1社として、建物の企画~建設、公共施設や商業施設の企画・建設・運営、都市開発、環境保全、建設工事用機械器具と資材の製作・修理、建物と土木工作物に関する診断・評価、不動産の売買・仲介などのさまざまな事業に携わる。

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