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クラウドファースト時代のイノベーションの起こし方 企業変革を実現するクラウド利用の勘所

ケーススタディ:シーイーシー/エッサム

データセンター [ケーススタディ:シーイーシー]

エッサムの会計事務所のための財務・税務システムを
Microsoft Azureでそのままクラウド化

大手システムインテグレータのシーイーシーは、同社が設計と実装を支援したエッサムの財務・税務システム「e-PAPシリーズ」のクラウド化をMicrosoft Azureを使って達成。エッサムはMicrosoft Azure版のe-PAPの運用を2016年8月に開始する。Microsoft Azure採用の決め手になったのは、.NETベースのオンプレミス版と同等の使い勝手を得られることだ。データベースにもMicrosoft Azure SQL Databaseが使われている。

 Microsoft Azureを始めとするクラウドサービスは、業務遂行にITを利用する企業・団体にさまざまなメリットをもたらす。例えば、ITのイニシャルコストやランニングコストを削減し、処理量の急変に即応できるようになり、新しいビジネスモデルを素早く実現して競争力を高めるといった具合だ。

 その一方で、システムインテグレータやデータセンター事業者のなかには「パブリッククラウドの普及で自社ビジネスが圧迫されるのではないか」と懸念する向きもある。プライベートクラウドならデータセンター設備の貸し出しがビジネスになるが、顧客のITがパブリッククラウドに移ってしまうとハードウェアでもソフトウェアでも稼げなくなってしまう可能性があるからだ。

 だが、顧客がパブリッククラウドを使うようになるということは、それに関連したビジネスが新たに生まれるということでもある。サイジングを含むシステム設計はどのような場合でも必要になるし、業務アプリケーションを新たにつくる場合はプログラムの設計やテスト、実装の全工程が必要だ。オンプレミス版の既存アプリケーションを移植する場合でも設計の見直しは求められる。また、オンプレミス時より工数が減るとしても、稼働後のシステムに対する運用管理は欠かせない。

 実際のところ、パブリッククラウドに伴って発生する関連ビジネスに力を入れるシステムインテグレータやデータセンター事業者は急速に増えつつある。いわゆるクラウドインテグレータである。その1社が東京渋谷に本社を置くシーイーシーだ。

開発を担当していた財務・税務システムのクラウド化を顧客に提案

株式会社エッサム
NET・コンピュータ事業部
事業部長
千川原 浩二

 独立系のソフトウェア企業として1968年に設立されたシーイーシーは、2001年に東京証券取引所第1部に株式を上場。現在では、6つの事業所と3カ所のシステムラボラトリを通じて「インダストリーオートメーション」「システムインテグレーション」「プラットフォームインテグレーション」の事業を展開している。

 そのシーイーシーのパブリッククラウド関連ビジネスのスタートとなったのが、同社が設計と実装を支援しているエッサムの財務・税務システム「e-PAPシリーズ」だった。

 会計事務所向けの業務システムとして作られている現行のe-PAPシリーズは、会計事務所内のPCやサーバーにインストールして使うオンプレミス型の構成になっている。しかし、クラウド版の財務会計アプリが続々と登場していることを受けて、同種の業務システムを開発・提供している企業の多くがクラウド化を計画中または実施済みだ。エッサム NET・コンピュータ事業部 事業部長 千川原浩二氏は「コンピュータに強い会計士や税理士の先生から、『クラウド化はまだか』とのご意見をちょうだいしていました」と振り返る。

株式会社シーイーシー
システムインテグレーションBG
マイクロソフトクラウド事業部
第二サービス部 部長
樋口 昌広

 同じ思いは、シーイーシー側にもあった。「業界全体の流れとしてクラウド化は避けられないと見ていました」と語るのは、シーイーシー システムインテグレーションBG マイクロソフトクラウド事業部 第二サービス部 部長 樋口昌広氏。そこで市場の動向を調べたうえで、2014年4月にe-PAPシリーズのクラウド化をエッサムに提案することにしたという。

 もっとも、クラウドにも様々な方式がある。2014年6月に始まった移植プロジェクトで、シーイーシーとエッサムはパブリッククラウド、プライベートクラウド、ホスティングサーバー上でのWebアプリケーション化などの方式を比較・検討した。最終的に、Microsoft Azureで現行オンプレミス版とほぼ同じ構成のシステムを稼働させる方式をとることにした。

オンプレミス版と同一のコードとデータベースをMicrosoft Azureに実装

株式会社株式会社エッサム
NET・コンピュータ事業部
技術開発部
部長
武藤 和樹

 移植先のクラウドとしてエッサムがMicrosoft Azureを選んだ理由は、.NETベースのリッチなアプリケーションになっている現行オンプレミス版との共通性を重視したためである。「会計事務所向けの業務システムでは、伝票入力のしやすさと帳票の印刷精度が重要です」とエッサム NET・コンピュータ事業部 技術開発部 部長 武藤和樹氏は語る。オンプレミス版と同一のコードをMicrosoft Azure上のVisual StudioでビルドしてAzureアプリケーションをつくることにより、オンプレミス版e-PAPと同等の使い勝手を実現できたと説明する。
さらに、Microsoft Azureはクラウドセキュリティ ゴールドマークを取得している数少ないクラウドサービスであることは、ユーザーである会計事務所へクラウドでも安心して利用していただくために大きく役立っていることもあり、Microsoft Azureの選択につながった。

株式会社エッサム
NET・コンピュータ事業部
マーケティング企画室
室長
重松 浩治

 また、データの取り扱いも容易だった。データベースには、オンプレミス版で使っているMicrosoft SQL Serverのクラウド版にあたるMicrosoft Azure SQL Databaseを採用。その他のデータはMicrosoft Azure BLOB Storageに置いてストライピング方式でアクセスすることにより、オンプレミス版と同等のパフォーマンスを得ることができた。

 Microsoft Azureへの移植にあたってエッサムが重視したのはパフォーマンスとレスポンスタイムである。「確定申告時期の大量入力にも耐えられるように、シーイーシーの方々にはオンプレミス版と同等以上の入力レスポンスタイムを求めました」と語るのは、エッサム NET・コンピュータ事業部 マーケティング企画室 室長 重松浩治氏。この要請を受けて、シーイーシーはすべての画面と帳票の処理速度を計測し、SQL Databaseでの更新方法を変えるなどのチューニングを繰り返して目標値をクリアした。

株式会社シーイーシー
システムインテグレーションBG
マイクロソフトクラウド事業部
第二サービス部
主査
久木田 剛寛

 実装を担当したシーイーシーにとっては、マイクロソフトから提供される技術サポートが品質と納期を維持するうえで大きな助けとなった。「移植を進めていくと、分からないことがいろいろと出てきます。そのようなときも、Microsoft Premier Supportを利用することによって、マニュアルに載っていないような事柄についても確認できました」と振り返るのは、シーイーシー システムインテグレーションBG マイクロソフトクラウド事業部 第二サービス部 主査 久木田剛寛氏。

 2015年1月に始まった移植作業は約1年で完了。2016年始めから一部の会計事務所を対象にした暫定運用が始まった。正式のサービスインは2016年8月の予定である。

 また、今後はAzureのサービスであるLog Analytics を利用し、安定した運用管理に活用していきたいと考えている。

Microsoft Azure上で動作するe-PAPのクラウド版
確定申告時期の大量入力にも耐えられるオンプレミス版と同等以上の入力レスポンスタイムを実現
[画像のクリックで拡大表示]

顧客業務アプリをクラウド化するビジネスで競争力を強化していく

 完成したMicrosoft Azure上で動作するe-PAPのクラウド版に、エッサムは業務効率化とビジネス拡大の両面で大きな期待を寄せている。

 例えば、毎年複数回発生する税制改正への対応について、エッサム 武藤氏は「会計事務所側で税制改正対応版をセットアップする必要がなく、当社にとっても対応版を開発・検証するための環境を素早く用意できるという利点があります」と評価する。同じく重松氏は「企業用ビジネスアプリ提供サイト『集い』で提供する各種アプリについても早急にクラウド化したいですね」と抱負を語る。

 シーイーシーにとっても、パブリッククラウド関連ビジネスに進出できたことの意義は大きい。「お客さまが最適なソリューションを選べるようにすることが、当社の務めです。そのためのツールとしてMicrosoft Azureを前面に押し出し、お客さまのニーズに合ったITビジネスを展開していきたいと思います」と樋口氏と久木田氏は口を揃える。開発/運用プラットフォームにMicrosoft Azureを使うと初期コストを大幅に引き下げられることから、新規案件を開拓するうえでの競争力も十分に高まるとシーイーシーは見ている。

 なお、シーイーシーは自社データセンターでもパブリック/プライベートクラウドを含むデータセンターサービスを提供中。アプリケーション開発ビジネスのパブリッククラウド化は、それと並行する形で進められていくことになっている。

企業プロフィール
  • 株式会社エッサム

    ■本社所在地:東京都千代田区神田須田町1-26-3 エッサム本社ビル
    ■創 立:1963年11月26日
    ■資本金:4億5500万円
    ■代表者:代表取締役会長 八鍬 昭(CEO 兼 取締役会議長)、代表取締役社長 伊藤 彰(COO)
    ■URL:http://www.essam.co.jp
    ■TEL:03-3254-8751(代表)

マイクロソフト パートナー企業プロフィール
  • 株式会社シーイーシー

    ■本社事務所:東京都渋谷区恵比寿南1-5-5 JR恵比寿ビル
    ■創 立:1968年2月24日
    ■資本金:65億8600万円
    ■代表者:代表取締役会長 岩崎 宏達、代表取締役社長 田原 富士夫
    ■URL:http://www.cec-ltd.co.jp/
    ■TEL:046-252-4111(代表)

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