ITpro Special

おんせん県が進める部門横断型の情報共有

 「日本一のおんせん県」をうたう大分県は、情報共有ツールの強化のために、10年以上前から利用していたグループウエアをリプレースすることにした。そして、新しいグループウエアとして、「サイボウズGaroon(ガルーン)」を選び、2015年4月1日から全職員が使い始めた。Garoonは県庁内情報共有の入り口として位置付けられ、職員は文書管理システム、メッセージ、スケジュール、掲示板などを利用して、業務を行っている。さらに、テーマごとに参加メンバーを選んでグループをつくり、所属部署の垣根を越えた情報共有と議論が始まっている。スピーディーな情報共有とともに、政策立案に貢献する情報共有ツールとしての役割を果たそうとしている。グループウエアのリプレースにより、県庁職員の情報共有への意識や業務の効率はどう変化したのだろうか。

1万2000人が使う情報共有の入り口

大分県の特長とITシステムに関する方針について教えてください。

大分県商工労働部 情報政策課 課長 工藤 正俊氏
大分県商工労働部 情報政策課
課長
工藤 正俊氏

工藤 大分県は温泉が豊富で、別府や湯布院はよく知られています。他にも、日田や九重などの温泉もあります。そこで、「日本一のおんせん県おおいた 味力も満載」というキャッチフレーズを立てて、キャンペーンを行っています。

 ITシステムについては、平成24年度から27年度までの計画で、大分県電子県庁高度化指針の下、クラウド化、情報共有の推進、セキュリティや災害対策の強化などに取り組んでいます。平成25年度に、情報共有ツールの強化計画をスタートさせ、平成27年4月1日にグループウエアをリプレースしました。

新しいグループウエアの導入はスムーズにいったのでしょうか。

武中 今回の導入では、文書の決裁件数などが表示される文書管理システムとグループウエアを連携させて、シングルサインオンで利用できるようにしたいと考えました。入札前に、グループウエアベンダーに協力してもらい、実証実験を3カ月ほど行って、その後、入札を実施して、2014年8月にサイボウズGaroonの導入を決定し、4月1日にGaroonに切り替えました。

グループウエアをどのように使われているのでしょうか。

大分県商工労働部 情報政策課 参事 和田 慎一郎氏
大分県商工労働部 情報政策課
参事
和田 慎一郎氏

武中 情報政策課ではグループウエアを県庁内情報共有の入り口にしたいと考えています。トップページには、メッセージ(庁内連絡のメール)、メール(庁外とのEメール)、掲示板、スケジュール、文書管理システム、To Doリスト、最新情報表示などが表示され、職員がポータルとして使うことができるようになっています。

中村 県庁内ではこの新しい情報共有システムを「eオフィスシステム」と呼んで、現在、トップページのアプリケーションをすべて使えるユーザーと、県立学校の教職員などアプリケーションを制限して使っているユーザーで、合計約1万2000人がeオフィスシステムを使っています。

所属課を越えたスピーディーな情報共有

eオフィスシステムが導入されたことで、働き方が変わった点があれば教えてください。

中村 県庁ですので、ワークスタイルはそれほどフレキシブルというわけではないのですが、働き方の意識は変わってきたと思います。eオフィスシステムにより情報共有の手段が増えたことと、情報共有のスピードが速くなったことが大きいと思います。

情報共有の仕方を具体的にお聞かせください。

大分県商工労働部 情報政策課 システム開発第一班 主幹(総括) 梅木 満長氏
大分県商工労働部 情報政策課
システム開発第一班 主幹(総括)
梅木 満長氏

中村 これまではメールを中心にやりとりしていました。しかし、件数が増えると探すのに時間がかかったり、埋もれてしまったりしていました。容量制限もあり1カ月単位でメールを削除していたので、今は利用者からも好評です。

 eオフィスシステムになってからは、グループごとに情報共有ができる「スペース機能」の活用が進んでいます。スペース機能は所属ごとではなく、所属を横断した職員のグルーピングができます。議論ごとにディスカッションスペースを作成できて、やりとりが一過性で終わらず、議論を深めていくことができます。

武中 例えば、今マイナンバー制度の導入に向けて大きな取り組みが進んでいますが、関係する課の担当職員はすべて同じレベルで情報共有をしないと、業務を円滑に進めることができません。そうした時にスペース機能を使えば、部署を超えて課題を共有できるので、とても役立っています。

大分県商工労働部 情報政策課 システム開発第二班 主幹(総括) 武中 誠治氏
大分県商工労働部 情報政策課
システム開発第二班 主幹(総括)
武中 誠治氏

工藤 私はマイナンバーグループに参加していますが、参加メンバー全員が情報共有できるので、メンバーの意見がすぐ分かります。資料も最新版に更新されていき、効率的に業務を進めることができます。これまでは担当者を経由して資料が上がってきていたのが、メンバー登録すれば担当者を経由しなくても、必要な資料がすぐに見られるので、情報共有のスピードは確実に速くなったと思います。

梅木 職員の意識はこれからもっと変わっていくでしょう。常に情報共有をするという意識が高まってきているので、自分から情報を出すという抵抗感がなくなってくると思います。

和田 最初は戸惑っていた職員も情報をポータル上に上げるようになってきています。必要な情報をいっぺんに得られる効果は高いです。

eオフィスシステムを使い始めてから数カ月になりますが、ユーザーの声をお聞かせください。

和田 個人的な感想になりますが、トップページで情報を一覧で見られるようになったのはとても便利です。

梅木 1回90分の操作研修を事前に行ったこともあり、使い方に慣れないという声は上がっていません。使いやすさも評価されていると思います。

産休、育休取得者用にテレワークの仕組みをつくる

県庁では産休、育休の取得率が高いように思いますが、ITで支援されていることはありますか。

大分県商工労働部 情報政策課 システム開発第一班 主事 中村 慎吾氏
大分県商工労働部 情報政策課
システム開発第一班 主事
中村 慎吾氏

和田 平成25年度の数字ですが、育休を取得できる対象者は男性が約1100人、女性が約350人いました。その中で実際に約260人が休暇を取得しました。

武中 産休、育休取得者を対象に、人事課がテレワークの仕組みづくりを進めています。情報政策課では、産休、育休取得者が自宅でもeオフィスシステムを見ることができるような体制を整えました。今後、産休、育休取得職員のテレワークを積極的に進めていく考えです。

今後の展開をお聞かせください。

武中 大分県電子県庁高度化指針で情報共有の取り組みを進める前から、ナレッジを集積するために、所属課の垣根を越えた横断的な情報共有が必要だと考えてきました。このような情報共有の取り組みはどんどん活用したいと考えています。モバイル端末を活用した情報共有についても、これから議論を深めていく予定です。

工藤 今後の大きな課題は、シームレスな情報共有をどれだけ進められるかです。政策を実現していく時に、特定の部署で決めていくという時代は終わりました。部署を横断した議論を支えるために、より使いやすい情報共有ツールを提供していきたいと考えています。

温泉源泉総数4473孔(平成24年度末)を誇る大分県の温泉は、海外からの観光客にも人気だ。中央の工藤氏が持っているのは、大分県のマスコットキャラクター「応援団“鳥” めじろん」
組織概要

大分県庁
・県庁所在地:大分県大分市大手町3-1-1
・職員数:一般行政職3849人(臨時・非常勤除く)
 特別行政職1万2417人(大学、教育、警察)
 ※平成26年度
・URL:http://www.pref.oita.jp/

提供:サイボウズ株式会社