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京セラのアメーバ経営を支援するクラウド

京セラの創業者である稲盛和夫氏が考案した「アメーバ経営」は、日本航空(JAL)の再建によってさらに注目度が高まっている。アメーバ経営のコンサルティングサービスとアメーバ経営を支援する基幹業務パッケージソフト「The Amoeba(ザ・アメーバ)」を提供するKCCSマネジメントコンサルティング(以下、KCMC)では、The Amoebaのクラウド基盤として、IBMの「PureApplication System」を導入した。そのメリットはどこにあるのだろうか。

※2016年3月1日、KCCSマネジメントコンサルティングは、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)に経営統合しました。ここに掲載している情報は、2015年の取材記事をもとに作成したものです。

改革を支援するツールとして求められる機動性の高さ

青木克真氏
KCCSマネジメントコンサルティング株式会社 経営情報システム事業部 事業部長

 稲盛和夫氏によって再生を果たしたJAL。JALの再生では、KCMCが提供する基幹業務システム「The Amoeba」が一部に導入され、JALの既存システムと連携している。The Amoebaは稲盛氏が考案した「アメーバ経営」の運用を支援するシステムであり、「時間当り採算表」という独自のアプローチで日々の活動成果を経営者だけでなく、現場(アメーバ)のリーダーにも経営情報としてタイムリーにフィードバックし、全員参加の経営の実現を支援する。

 アメーバ経営では、「社内売買」「協力対価」という仕組みを使い、社内の部門間の取引も社外取引と同様に売買でとらえ各部門の採算が出せる仕組みになっている。この社内売買の考え方を医療・介護向けに応用開発した「協力対価」の仕組みでは、法人内の複数部門が関わって1つのサービスを提供する場合に、それぞれの部門の稼ぎをとらえることが容易になっており、医療・介護業界だけでなく、一般の企業にも活用が広がってきている。これらの「協力対価」の仕組みは非常に独自性のあるものであることからシステムの特許も取得している。

 アメーバ経営はこれまでに600社を超える企業に採用され、The Amoebaの導入企業数も100社を超えた。KCMCでThe Amoeba事業を担当する同社の青木克真氏は「アメーバ経営では細かく部門別の数値をとらえる必要があります。そこではITの活用は必須です。それを支援するのがThe Amoebaです」とThe Amoebaの位置づけを説明する。

 2003年のリリース以来、順調にユーザーを拡大してきたThe Amoebaだが、ここにきて課題も浮上してきた。青木氏は「JAL再建の成功もあり、引き合いは非常に増えてきています。これまでのように案件ごとにシステム環境を構築していく手法ではビジネスの限界が見えてきました」と指摘する。

 The Amoebaはあくまでも経営改革を支援するツールだ。アメーバ経営を推進する企業では、改革のスピードに合わせてシステムを導入し、その成果を確認したいと考えるのは当然だろう。そのためには「稼働までの期間をいかにして短縮できるかが課題」(青木氏)となった。

 もう1つの課題は、中堅・中小企業への対応だ。ITの専任担当者が不足している中堅・中小企業では、サーバーの導入からシステム構築といったプロセスは費用面でも人材面でも大きな負担になる。青木氏は「アメーバ経営に集中してもらうには“早くて手間がかからない”ことを追求する必要がありました」と語る。

 こうした課題を解決するために同社が選択した戦略は、クラウドによるThe Amoebaの提供だ。クラウドであれば初期投資を抑えながら短期間でシステムを導入できる。そして、同社がクラウド化の基盤として選択したのが「IBM PureApplication System」だった。その理由は何だったのだろうか。

図1 The Amoebaのコンセプト

システム基盤の構築要素をコンポーネントとして取り込める

 「The Amoebaは企業活動を支える基幹システム。それだけに、信頼性の高い環境が求められていました。そこでLinux、WebSphere Application Server、DB2というIBM製品の組み合わせを採用してきました」とKCMCの鯰江和義氏は語る。鯰江氏は同社の経営情報システム事業部 京都システム開発部でThe Amoebaの開発全般を担当してきた。

鯰江和義氏
KCCSマネジメントコンサルティング株式会社 経営情報システム事業部  京都システム開発部 京都開発課 課長

 The Amoebaはアメーバ経営のツールとして中小企業や一部の大企業などで使用でき、また、幅広い業種・業態にも対応できる柔軟なJavaアプリケーションだ。その基盤としてこの3点セットが採用されていた。「クラウド化するにあたって、これまでの機能を活用できる形で短期間で移行したいと考えていました。そのときに日本IBMから紹介されたのが、IBM PureApplication System(以下、PureApplication)でした」(鯰江氏)。

 PureApplicationは、ストレージ、ネットワーク、サーバーを垂直統合したクラウド・アプリケーション・プラットフォームで、仮想化基盤上で一元的にアプリケーションの管理運用が可能になる。その最大の特徴は「パターン」と呼ばれる機能だ。あらかじめ設定した構成要素を選択するだけで必要な稼働環境が自動的に構成される。

 「決め手になったのは、PureApplicationはThe Amoebaの基盤となっているLinux、WebSphere Application Server、DB2がコンポーネントとして提供されていて、オールインワンで利用できることでした。サーバーの数などの規模に応じたパターンを選択するだけでThe Amoebaを稼働させるためのシステム環境が短期間で構築できます。しかも、パターンを作っておけばいつでもデプロイ(展開)することが可能です」(鯰江氏)。

 さっそくPureApplicationの導入のために、日本IBMの支援のもと概念実証(PoC)が進められた。KCMCの京都開発課 基盤技術グループ グループ長の谷本哲也氏は「パターンを定義するには、ある程度のテクニカルスキルが求められます。ただ、ベースとなるパターンは用意されていて、IBMの支援を受けながらスクリプトの設定作業を進めることができたので、実際の作業は1カ月ほどで完了しました」と語る。

 KCMCは2014年10月にPureApplicationの導入を決定し、2015年3月にはクラウドサービスの提供を開始した。移行にかかった期間は半年にも満たない。

図2 環境構築

あらかじめ設定したパターンを使って短期間でシステム構築が可能に

谷本哲也氏
KCCSマネジメントコンサルティング株式会社 経営情報システム事業部  京都システム開発部 京都開発課 基盤技術グループ グループ長

 PureApplicationを導入したことによる最大のメリットは、短期間での導入が可能になったことだ。谷本氏は「サイジングとかサーバーの調達といったシステム前のプロセスはほぼゼロになった」と指摘する。パターンの選定に必要なのは、APサーバー、データサーバー、バッチサーバーの3つのサーバーの数の組み合わせだけ。これまで1〜2週間かけて手作業で基盤を構築していたのが、わずか1〜2時間で済むようになった。

 さらにシステムの柔軟性という意味でもメリットは大きい。「クラウドサービスですから、動的にサービスを提供しながらリソースの設定を柔軟に変更できます。タイムリーにシステムの規模を拡張できるので、余計なリソースを用意しておく必要はありません」と青木氏はメリットを強調する。

 システムの運用管理という面でもクラウドならではのメリットが提供される。クラウド基盤はデータセンターで一元管理されているので、アプリケーションのメンテナンスやハードウェアの障害などでユーザーの手を煩わせることはない。谷本氏は「提供側としても先手先手で対策を打てるので、運用管理が楽になった」と話す。

 サービスの提供を開始してから半年で約10社が利用しているが、3分の1は自社サーバーから移行したユーザーだ。「使っているプログラムはまったく同じ。変わったのは接続先のURLぐらいです」と鯰江氏は、違和感なく利用できて既存ユーザーからの評判もいいと語る。

 今後の展開について青木氏は「しっかりとしたサービス基盤を確立することができました。ノウハウを積み上げてこれまで以上のペースでユーザーを増やしていくと同時に、海外での展開を視野にビジネスを拡大したい」と語る。JALの再建成功で海外からの引き合いも増えているという。

 そしてもう1つがシステムとしての横展開だ。モバイル、アナリティクスなどの分野を取り込んでいくことにより、システムとしての価値向上を目指す。「基幹システム以外の分野についてもIBMのソリューションとの組み合わせで効果が上がるはず。ニーズが高まっているだけに、早く対応できるようにしたい」と青木氏。

 対応分野がモバイルなどに広がれば、基幹システムと現場との密着度がさらに増し、アメーバ経営のより高い成果につながる。今後の展開に期待したい。

図3 海外展開
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  • ハイブリッド・クラウド環境構築ソリューション
    IBM PureApplication

    構築時間・運用ワークロードを大幅に削減する統合クラウド基盤について、わかりやすくご紹介します。

    (目次)
    1. パターン・デプロイメントによるシステム構築自動化
    2. PureApplication ファミリー
    3. PureApplication Software
    4. PureApplication Service on SoftLayer
    5. PureApplication System
    6. オープン・テクノロジーに対する取組み
    7. シームレスなハイブリッド・クラウドの実現

関連リンク

ERP(統合基幹業務システム)「The Amoeba」
http://amc.kccs.co.jp/system/index.html

IBM PureApplication System
http://www.ibm.com/software/jp/cmp/pureapplication/

お問い合わせ
  • 日本アイ・ビー・エム株式会社

    TEL:0120-300-426( 平日9時30分〜17時30分)

    URL:http://www.ibm.com/jp/ja/