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IIJ Lead Initiative 2015レビュー

パブリックとプライベートを
一つのクラウドに融合して提供

株式会社インターネットイニシアティブ 鯵坂 慎 氏
株式会社
インターネットイニシアティブ
常務執行役員
鯵坂 慎

 クラウドを基盤にビッグデータやモバイル、IoT(Internet of Things)などの新しいテクノロジーが企業に活用され始め、ビジネスイノベーションを起こそうとしている。Lead Initiative 2015では、特別講演やパネルディスカッションをはじめ、ITベンダーによる最新テクノロジーの解説、ITでビジネスを変革する企業の事例などが多数紹介された。

マルチクラウドの活用を促進する「One Cloud」

 ビジネスインフラとして、クラウドを最優先にシステムを考えるクラウドファーストから、複数のクラウドを適材適所に組み合わせて活用するマルチクラウド環境への進展が見込まれている。こうした状況の中、IIJでは様々なサービスを一つのプラットフォームで複合的に提供する新しいコンセプト「One Cloud」を打ち出している。

 IIJの鯵坂慎氏は「パブリッククラウドとプライベートクラウドを一つに融合することに加え、サーバーやストレージなどのコンピューティングとネットワーク、セキュリティを一つのリソースで提供します。そして、既存のオンプレミス環境や他社クラウドサービスもつないで、一つのクラウドを実現します」とOne Cloudの狙いを説明した。

 Lead Initiative 2015のセッションでは、One Cloudに基づく次世代クラウドサービス「IIJ GIO インフラストラクチャーP2」と新型ネットワークサービス「IIJ Omnibusサービス」の概要と特長が解説された。

サービスコンセプト ─One Cloud─IIJはあらゆるクラウドリソースを透過的に利用可能にする
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パブリックとプライベートの特長を
備えた新しいクラウド「IIJ GIO P2」

株式会社インターネットイニシアティブ 神谷 修 氏
株式会社
インターネットイニシアティブ
サービス推進本部
GIO推進部
部長
神谷 修

 IIJの神谷修氏は「新たな挑戦─進化するクラウドサービス IIJ GIO」をテーマに、マルチクラウド化へ向けたIIJのサービス戦略とIIJ GIO インフラストラクチャーP2(以下、IIJ GIO P2)について説明した。

 IIJでは2009年に他社に先駆けてクラウドサービス「IIJ GIO」の提供を開始して以来、市場ニーズに合わせたサービスやソリューションを拡充してきた。これまでエンタープライズ領域を中心に1300社以上の導入実績があり、フルクラウドやマルチクラウドの活用事例も出始めている。

 IIJではIaaSとプライベートクラウド用途を軸にクラウドサービスを展開している。「アプリケーションなどの領域は他社とのアライアンスを通じてマルチクラウド化に向けたサービスを提供していく戦略です」と神谷氏は述べる。

三つのリソースを組み合わせ 企業システムを最適化

 こうした戦略を踏まえ、IIJは「One Cloud」のコンセプトに基づく次世代クラウドサービス「IIJ GIO P2」を発表した。IIJではこれまでIaaSのラインアップとして、パブリッククラウド「IIJ GIOホスティングパッケージサービス」と、オーダーメイド型「IIJ GIOコンポーネントサービス」を提供してきた。IIJ GIO P2はこの二つのサービスを進化させたもので、「信頼性と処理性能を高めたパブリッククラウドの特長と、オンライン申し込みで即時利用が可能になる俊敏性と柔軟性を備えたプライベートクラウドの特長を一つに融合したサービスとして提供します」と神谷氏は説明する。

 IIJ GIO P2は、多種多様な仮想サーバーを中心とした共有リソースを提供する「パブリックリソース」、VMware仮想化環境と物理サーバーを専有リソースとして提供する「プライベートリソース」、パブリックリソースとプライベートリソースの両方のサーバーで利用できる「ストレージリソース」の三つのリソースを体系化して提供する。「これにより、企業は最適なリソースを適材適所に組み合わせてシステムを構築できます」(神谷氏)。

 パブリックリソースは用途に応じて特長の異なる3タイプを用意。従来から提供している性能保証タイプは、安定した処理性能を必要とする企業向けにCPUが確実に割り当てられ、月額固定料金で利用できる。

 そして、新たにベストエフォートタイプと専有タイプを追加した。ベストエフォートタイプはCPUを分配利用することで低コストを実現する仮想サーバーのサービス。1時間単位の従量課金を採用し、コストの最適化が可能だ。

 専有タイプは、高負荷に耐えられるI/O性能を求める企業向けに、仮想化された専有サーバーを提供する。物理的に他のサーバーから切り離されたセキュアな環境で利用できるほか、ローカルディスクとしてSSDやサンディスク社製の超高速フラッシュストレージ「ioMemory」を搭載したサーバーを用意する。

 三つのタイプを単体として利用するだけでなく、自由に組み合わせて利用でき、タイプ間の切り替えも可能だ。「例えばシステム開発時にはベストエフォートタイプ、本番時には安定した性能保証タイプに切り替えたり、高いI/O性能が必要になれば専有タイプに切り替えたりするなど、必要な性能に合わせて利用することにより、システムを最適化できます」と神谷氏は説明する。

IIJ GIO インフラストラクチャーP2 広いカバレッジで様々なビジネス基盤を支えるIaaS
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オンプレミスのVMware環境を そのままクラウドへ移行

 プライベートリソースは、VMware仮想化環境と物理サーバーを中心としたラインアップを用意する。物理サーバーはシングル構成で利用できるタイプと、可用性の高いクラスター構成で利用できるタイプがある。

 従来から提供している「仮想化プラットフォーム VWシリーズ」は、VMwareのプラットフォームをアセットレスで利用できるクラウドサービスだ。「企業が利用しているオンプレミスのVMware仮想化環境と同じ自由なサーバー設計が行え、OSやミドルウエア、アプリケーションなどの資産をそのまま有効活用できます。vCenterを提供するので、運用管理の方法を変える必要もありません」と神谷氏は強調する。

 高負荷に耐えられるプライベートクラウドを構築できることも特長だ。最大24コア対応のCPU、192GBのメモリー、10Gbpsの対応など、選択できるサーバーの性能が向上した。カスタマイズを含め、オンラインによる申し込みに対応。コントロールパネル経由でサービスの即時利用(標準モデルの場合)とサーバーリソースのセルフ管理が行え、1日単位で必要なリソースを増減できる。

 IIJ GIO P2は2015年秋から提供を開始する。

 「VWシリーズのハイスペックモデルやHyper-Vプラットフォーム、他クラウドサービスとの連携など、順次サービスを拡充していく予定です」と神谷氏は今後の展開を述べた。

「IIJ Omnibusサービス」は
企業ネットワークに必要な機能をクラウドで提供

株式会社インターネットイニシアティブ 林 賢一郎 氏
株式会社
インターネットイニシアティブ
サービス推進本部
サービス推進部 部長
林 賢一郎

 クラウドを基盤にサーバーの仮想化が一般的になる一方、今後、ネットワークの仮想化が進むと見られている。IIJでは新型ネットワークサービス「IIJ Omnibusサービス」(以下、IIJ Omnibus)を発表。IIJの林賢一郎氏が概要を解説した。

 林氏はまず、企業ICTの方向性について言及。ICTの進化とともに機器の設定や運用管理の負荷が高くなっている。また、セキュリティの脅威が増しており、企業では対応が難しくなっているのが実情だ。

 こうした課題に対し、「効果的な解決策となるのがクラウドアウトソーシングです。ネットワークやセキュリティを含めクラウドへ移行することでインフラ運用から解放されます」と林氏は述べる。

IIJ独自開発のNPSを介して セキュリティ機能などを提供

 新型ネットワークのキーワードとして、ネットワークをソフトウエアで制御するSDN(Software-Defined Network)と、ネットワーク機能を仮想化するNFV(Network Function Virtualization)がある。IIJ OmnibusはこのSDNとNFV技術を駆使し、企業のネットワークに必要な機能を仮想化し、プライベートクラウド上で提供する。

 クラウド上の企業専用の領域には、IIJが独自開発したNPS(Network Processing System)を自動生成する。NPSはファイアウォール機能を持ち、各モジュール間のアクセス制御を行うゲートウエイとしてインターネットやファイアウォール、WAN、クラウドなどのサービスモジュールを収容する。

 企業の各拠点にはIIJから無償提供されるSA(Service Adaptor)を設置。SAをIIJ Omnibusサービスに接続するだけで、センター側との自動接続、自動管理により、WANを構築できる。

 企業はルーター、VPNなどのネットワーク機器やセキュリティ機器を自社所有することなく、NPSを中心にソフトウエア化、クラウド化した様々なネットワーク機能をアセットレスで自在に利用することにより、ICTコストを削減できる。「NPSのクラウド基盤は複数拠点に分散配置されるので、ネットワークの信頼性を高め、クラウドソーシングによる継続的なセキュリティ対策で運用負荷を削減できます」と林氏は説明する。

 加えて、IIJ Omnibusの特長は専用のオンラインポータルから必要なモジュールの申し込みや設定、権限管理などが行えることだ。管理権限は担当者のレベルによって多層化され、アクセスはワンタイムパスワードのスマートキーによる2段階認証でセキュリティを確保する仕組みだ。

 企業ユーザーの利用に加え、IIJ Omnibusを扱うパートナー向けにもポータルサイトを用意。オンラインでの見積もり作成や申し込み、顧客登録、顧客管理、請求履歴、サポート情報などを利用できる。

 ポータルからの申し込み後、IIJ独自のSDNオーケストレーターによってクラウド上にすぐNPSが生成されるため、即時利用が可能だ。また、NPSはほぼ無限に仮想空間上で拡張でき、企業ネットワークの規模拡大にも柔軟に対応する。各モジュールは最低利用期間の設定がなく、利用料金は日割り計算のため、1日単位で必要な機能を安価に利用できることも特長だ。

 IIJ Omnibusはマルチクラウドに対応。専用線、インターネット、モバイルなどのアクセス回線はマルチキャリアに対応し、IIJが一括提供する。NPSを中心にクラウド上の個別システムともシームレスな接続が可能だ。これにより、企業はNPSを介して既存のIIJサービスや自社で保有するシステムについても、IIJ Omnibus上で運用を統合できる。

新ネットワークサービス – IIJ Omnibusサービス Network Processing System (NPS)を中心としたモジュラー型サービス ●NPSはFW機能を有し、各モジュール間のアクセス制御を実現 ●NPSは東日本リージョンと西日本リージョンに分散配置され、DR(ディザスターリカバリー)やBCP(事業継続計画)環境も実現可能
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SDNオーケストレーターを新規開発 IIJの堅牢なインフラが支える
株式会社インターネットイニシアティブ 城之内 肇 氏
株式会社
インターネットイニシアティブ
ネットワーク本部
副本部長
城之内 肇

 IIJの城之内肇氏はNPS構成要素について説明。「NFV基盤やサービスモジュール制御を一元的に管理するSDNオーケストレーターを新規開発し、複数のネットワークノードの配備と自動設定を可能にしています」(城之内氏)。サービスモジュールとの接続に利用されるSEIL/x86は、IIJが開発した法人向けルーターのSEILを仮想環境に対応させたソフトウエアアプライアンスだ。

 「SDN/NFVの迅速性や柔軟性を実現するためには、堅牢なインフラが必要です。高品質、広帯域、高機密性のIIJバックボーンの提供とともに、SDN/NFVの技術開発に取り組んでいきます」と城之内氏は力を込める。

 IIJ Omnibusは2015年9月からNPS及び一部モジュールの提供を開始。「メールセキュリティやWebセキュリティなどのモジュールを順次提供するとともに、オンラインポータルの機能拡充を図っていきます」と城之内氏。

 IIJ GIO インフラストラクチャーP2とIIJ Omnibusサービスを通じて、IIJは社会のクラウド活用を強力にサポートしていく考えだ。

お問い合わせ
  • 株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)

    TEL:03-5205-4913

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