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レッドハット:IoT&Enterprise Forum 2015

■レッドハット

製品からのローレベルデータを短期・長期の2視点で分析

Linuxとミドルウエアに強いレッドハットは、IoTの世界にもオープン技術を推し進めていく。狙いは、従来は採算がとれなかったサービスをIoTで安価に実現すること。具体的には、製品のデータをメッセージブローカーで整理し、「モノ」(製品)の特性に合わせて、リアルタイム処理と逐次処理の二つの分析基盤を活用する仕組みになっている。

二つの分析基盤をサーバーに実装
リアルタイムでも逐次でも分析

レッドハット株式会社
サービス事業統括本部
ソリューション・アーキテクト部
部長
三木 雄平

 「モノのインターネット(IoT)の先進性は、“インターネット”という部分ではなく、モノ単体では考えられなかったまったく新しい価値を創造できることにあります」と、OS(Red Hat Enterprise Linux)とミドルウエア(Red Hat JBoss Middleware)のサプライヤーとして知られるレッドハットの三木雄平氏は喝破する。

 コンピュータと情報技術(IT)は、1970~1980年代においては業務処理の効率化、1990~2000年代にはインターネットというインパクトを世の中にもたらした。2010年代に始まったIoTは、これらに続く“サードインパクト”として、従来は採算がとれなかった機能やサービスをオープンな技術で実現するものとなる。それをうまく活用したのが第四次産業革命(インダストリー4.0)やインダストリアルインターネットである、というのがレッドハットの見方だ。

 このような特長を持つIoTを具現化するための戦略として、レッドハットは、(1)センサーデータなどの収集」、(2)「情報処理」、(3)「ビジネスルールとのマッチングによる知的アクション」、(4)「ナレッジの発見と蓄積」→(5)「情報処理」/「知的アクション」……と進むサイクルを提唱している。その実装に使われるのは、もちろん、Red Hat Enterprise LinuxとRed Hat JBoss Middlewareを核とする同社のIoTテクノロジースタックだ。

 ポイントは、いくつかある。まず、全体は製品側とクラウド側の二つの部分に分かれており、製品側ソフトウエアにはレッドハットのパートナー企業の技術や各種標準ソフトウエアがあてられている。

 次に、製品側から送られてくるセンサーデータなどは、「JBoss Fuse/A-MQ」などのメッセージブローカーやクラウド型メッセージブローカーサービスで整理された後、リアルタイム分析と逐次分析の2種類の基盤から成るサーバーへと送り込まれていく。

 「このように二つの分析基盤を用意したのは、ニーズによって求められるものが違うためです」と、三木氏は説明する。

 例えば、素早い応答や対処を求められる障害検出などのニーズには、直近のデータを機械学習させる分析方法が向く。この目的に役立つのが、インメモリー分散処理(JBoss Data Gridなど)や複合イベント処理(CEP)といった要素技術だ。

 一方、過去1年分の利用履歴データから最適なマーケティングアクションを導き出すといった長期的視野の継続的なニーズには、分析結果をデータサイエンティストが人手で評価するのが適している。リアルタイムほどの即応性は求められないから、Hadoopを使ったバッチ処理でもニーズには十分に応えられる。

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誰でもロジックを随時変更できる
ビジネスルール解析エンジンを装備

 レッドハットのIoTテクノロジースタックのサーバー側に含まれるもう一つの重要な要素が、ビジネスルール解析エンジンの「JBoss BRMS」である。

 JBoss BRMSは人工知能の一分野であるエキスパートシステム(ES)を起源とするミドルウエアで、「○○という条件を満たす場合は、△△というアクションをとる」という形式の記述(ビジネスルール)をJavaコードに変換して実行する機能を有する。従来のアプリケーションではハードコーディング(固定記述)されていたロジックを“外出し”できるので、ビジネスルールを可視化したりビジネスルールをダイナミックに変更したりするのがたやすく、プログラマーではない業務担当者がロジックを自ら実装できるようになるという利点もある。

 そのビジネスルールの記述には、プログラマー用の統合開発環境(IDE)だけでなく、WebベースのルールエディターやMicrosoft Excelに代表されるスプレッドシートでビジネスルールを定義することが可能だ。

 また、JBoss BRMS本体はJavaライブラリー(.jar)として提供されているため、アプリケーションに容易に組み込むことが可能である。JBoss BRMSはDRL(独自形式)、DSL、Excelのいずれかの形式で与えられたビジネスルールを読み込んでJavaコードに変換し、元からあったロジックに自動的に“追加”して実行してくれるので、アプリケーションを書き替えたり、リビルド(再コンパイル)したりする必要はない。

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ロケーションベースなどで実績多数 コネクテッドカーにも適用できる

 「この2年ほどで、弊社のIoTテクノロジーを採用したロケーションベースサービスの事例が急速に増えました」。三木氏はこのように述べて、IoTの世界でもオープンな技術に基づく実装例が拡大していることをアピールした。

レッドハット株式会社
サービス事業統括本部
ソリューション・アーキテクト部
ソリューションアーキテクト
大溝 桂
デモに使用されたラジコンカー

 Bluetooth Low Energy(BLE)などのビーコン技術でモバイル端末にメッセージをプッシュ方式で送り込むロケーションベースサービス(LBS)は、大規模ショッピングセンターにおけるレコメンド情報提供や電子クーポン発行のほか、展示会場や競技場での道案内システムとしても使われ始めている。リアルタイム分析用の基盤を標準で備えたレッドハットのIoTテクノロジーなら、そうしたニーズにもっともリーズナブルな解を提供できる。

 もう一つの有望な分野が、コネクテッドカーやドローン向けの組み込みシステムだ。 セッションでは、それを実証するデモンストレーションとして、Raspberry Piベースのラジコンカーを会場の聴衆がスマートフォンでコントロールするシステムをレッドハットの大溝桂氏が披露した。シナリオは、講演資料に印刷されたQRコードでiOS/Androidアプリをダウンロードし、画面に表示される前進5速・後退1速のギアから好きなものを選んで“投票”すると、進行方向が多数決で決まるという内容である。

 レッドハットは同社のIoTテクノロジーを製品の側にも拡張していこうとしている。DRLなどで記述されたビジネスルールでサーバーアプリケーションを制御するのと同じやり方で、製品に組み込まれた制御ソフトもダイナミックに変更できるようにしようとしているのだ。これが実現すれば、市場にすでに出回っている製品の機能をいつでも追加・変更することが可能になる。新しいビジネスモデルを生み出すシーズとしても、大きな期待が持てる。

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