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ベンダーに訊く、IoT時代のICTの役割とは

トップベンダーが集まってIoT時代の役割を語る

 2015年11月12日と13日の2日間にわたって東京国際フォーラムでNEC主催による「C&Cユーザーフォーラム & iEXPO 2015」が開催された。そこでは「トップベンダー4社と斬る ~IoT時代のICTの役割とは~」という、立場の異なる5社が一堂に会する見逃せない特別セミナーが行われた。NECをホスト役にインテル、日本オラクル、日本ヒューレット・パッカード、日本マイクロソフトの事業責任者がIoT(Internet of Things)時代にICTが新たな価値創造に向けてどう貢献していくのか、ということにフォーカスしたディスカッション形式のセミナーだ。
 今、IoTという大きな波が来ていることは疑いの余地はない。2020年にはインターネットに1兆ものデバイスが接続され、飛び交うデータ量はゼタバイトクラスになると予想されている。こうした大量のデータをいかにスピーディに処理し、データを分析して知見を探り当て、それをいかにビジネスに反映させていくことができるのかが問われている。

IoTにおけるICT活用のアプローチが見えてきた

IoTの活用においてICTの果たすべき役割は大きい。このセミナーではそれが再認識されるとともに、今IoTの世界でどんな取り組みが行われているのか、そしてICTベンダーはどんな戦略を持って臨んでいるのかが明らかにされた。

すでに先進的な企業では多くの機器がインターネットに接続され、必要な情報を確実に収集し、リアルタイムに分析して、自社のビジネスに役立てている。

そこではクラウドも大きな役割を果たしている。クラウドを活用することで、IoTという新しい取り組みへのハードルを下げるとともに、スピーディな環境の構築、グローバルレベルでの早期の展開とIoTとの相性の良さが際立つ。

また、ホスト役のNECから「ネットワークやデータ処理基盤をどう構築するか」という課題が指摘されたが、それに対しても各社がそれぞれの立場からアプローチしていることがわかった。

IoT社会の進化 新たな価値創造へ
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NECが注力するエッジコンピューティングと5つの強化ポイント

庄司 信一 氏
NEC
執行役員常務
庄司 信一 氏

NECのIoT対応は急ピッチで強化されている。2015年6月にはIoTを活用した次世代ものづくりソリューション「NEC Industrial IoT」の提供を開始し、7月にはIoTソリューションメニューと体制の拡充を、そして11月9日にはNECが考えるIoTの5層モデルに、セキュリティとリアルタイム性を確保し、実世界とサイバー世界をシームレスに接続するシステムを提供するためにICTプラットフォームの強化を発表した。その狙いは、大量のデバイスから上がってくる莫大なデータを処理するために起こるシステム負荷増大によるネットワーク遅延の解消と、収集した莫大なデータを新たな価値を持つデータとしてすばやく実世界にフィードバックし活用するためだ。そのためにNECはエッジコンピューティングを中核にした新たなICTプラットフォームが必要となると考えているのだ。

NEC 執行役員常務の庄司信一氏は「シンガポールでの安全と安心を追求した街づくりの実証実験への参加、上下水道の漏水監視サービスなど、すでにIoT関連の実績を上げてきました」とこれまでの実績を紹介するとともにICTプラットフォームの強化として5つのポイントを挙げた。

それは、大量のデータをリアルタイム処理し有効に利活用する、高速なコンピューティング基盤や分析エンジンによる「高度・高精度な分析処理」、負荷の変動に応じて、アプリケーションを最適な層で実行させ、効率的なシステムを実現する「分散協調型処理」、デバイスやネットワークに関係なくデータを安全かつ効率的に処理する「デバイス仮想化」、そしてNECが考えるIoTの5層モデル全層にわたる「セキュリティの確保」とデバイスやネットワークを含めた「統合運用管理」である。

「IoT時代のICTに重要なのは、リアルタイム性であり、リモート性であり、ダイナミック性です。それらをセキュアな環境で実現することを追求していきます」と庄司氏は強化ポイントがもたらすメリットを語る。その先にあるのは、ビッグデータの活用であり、それが生み出す新たなビジネス価値だ。

オープン性を追求して顧客に価値を提供する

IoTを支える技術、製品はNEC1社で支えきれるものではない。IoTの5層モデルのそれぞれのフェーズで他社との協業が不可欠となる。「パートナーシップによって構築されるエコシステムは、より大きな価値をお客様に提供できます。そこで大切なのがオープン性であり、シンプルさです」と庄司氏はそのポイントを指摘する。

今回のイベントの“Orchestrating a brighter world”というテーマから、同社が中心となってICTの世界をけん引したいという思いが伝わってくる。IoTに向けて次世代の情報インフラを追求するなかでどんなリーダーシップを発揮するのか期待したい。

自らIoTを活用してノウハウを蓄積するインテル

平野 浩介 氏
インテル株式会社
常務執行役員
平野 浩介 氏

テクノロジーの飛躍的な進化を具現化してきた代表的なICT企業の1つがインテルである。インテル 常務執行役員 平野浩介氏は、「この10年間でコンピューティングパワーのコストは約60分の1、ネットワークは40分の1になりました。IoTの発想や社会への浸透の背景には、こうしたテクノロジーの進化があると考えます」と話す。

半導体製造企業である同社の役割は、CPUやチップセットなどの開発・製造だけではない。それらを活用するための基盤技術やリファレンスモデルも整備してきた。管理や制御、セキュリティなどは、同社が共通化し、標準化した技術の上で成り立っている。それはIoT基盤という意味でも変わらない。

平野氏は「IoTやビッグデータ活用のノウハウについても、自らICTを駆使することで蓄積しています」と現状での取り組みを語る。同社ではマレーシアの自社工場の製造装置にセンサーを装備して稼働状況をモニターし、センサーのデータを分析することで、障害の予兆を把握している。

「工場内では毎時5テラバイトの製造データが生成されています。これらのデータを収集してリアルタイムに処理することで、歩留まりが改善され、メンテナンスが効率化されました」と平野氏。同社ではこうした取り組みによって、年間10億円のコスト改善を実現した。その対投資効果は実に10倍以上に及ぶという。

共通部分を標準化してIoTの普及を促進する

平野氏は「今のIoTのソリューションは個別に垂直に作り上げていくしかありません。しかし、これではほかへの応用が利かずに効率が悪い」とIOTの課題を指摘し、「共通項目を抽出し標準化することでIoTの導入コストが下がり構築期間の短縮にもつながります」とIoTの基盤となる技術の標準化の重要性を強調する。

同社が視野に入れている範囲はエッジデバイスからゲートウェイ、ネットワーク、データベース基盤、分析、サービスといったIoTのプラットフォーム全体に及ぶ。「そこで求められる共通部分をオープンソースとして提供するなどして、一連の流れをできる限り標準化していきたいですね」と平野氏は意気込みを語る。

そのために同社ではIoTのためのテスト環境を提供する「Industrial Internet Consortium(IIC)」、接続の互換性のための標準化を進める「Open Interconnect Consortium(OIC)」といったオープンなIoTの普及のための業界活動に注力する。IoTを支えるテクノロジー全体を俯瞰(ふかん)できる立場にある同社の果たす役割は大きいといえる。

ICT企業の連携でエコシステムが加速。企業はIoTを自社のビジネスにどう活用すべきか?詳細は次ページ