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みずほ銀行、「みずほダイレクト」を“両現用”で全面更改 新サービスへの追従性と可用性を高め、攻めと守りの先進的基盤を構築

メガバンクの一角であるみずほ銀行では、ネットバンキングの「みずほダイレクト」を支えるシステム基盤とアプリケーションを大幅に更改し、2014年8月にサービスインした。約2年半にわたるこの大規模なプロジェクトでは、システム投資を抑えながら将来の変化に柔軟に対応できるシステム基盤の構築と、シンプルなシステム構成で可用性を向上させる“両現用”を決済系に採用するなど意欲的な取り組みが行われた。

複雑になったシステムを基盤から全面的に見直す

―今回、大規模な更改に踏み切った背景にはどんなことがあったのでしょうか。

みずほ銀行
IT・システム統括第一部
部長
加藤 昌彦
みずほ情報総研株式会社
常務取締役
向井 康眞
みずほ情報総研株式会社
銀行システムグループ
決済・チャネル系システム事業部
事業部長
中條 洋次 氏

加藤 ネットバンクと店舗の利用者の数が逆転したのは2008年でした。それが今日では1.7倍以上の開きが生じています。今や「みずほダイレクト」は私たちとお客さまとの主要な接点であり、そこが競争の場ともなっています。

 ところがシステム自体は古く、15年も前に構築したシステムを機能拡張しながら使い続けてきました。ネットバンキングでは迅速な新サービスの提供が常に迫られていましたし、マーケティングのオムニチャネルの1つとしての進化も求められています。「今が大きな転換期」と判断しました。

中條 15年前に作った仕組みは、ネット受け付けと手作業が入り交じったものでした。当時はPCが中心で、その後は携帯電話、スマートフォンとチャネルが増え、それぞれに対応したサーバーを立ててきたため、システム全体が複雑になっていました。

向井 複雑になるにつれ、トラブルの解決により時間がかかることもありました。いつでも使えるのがネットバンキングの利便性ですので、システム障害を未然に防ぐだけでなく、事後対応にも万全を期したいと考えていました。

―システムが複雑になったことで課題を抱えていたということでしょうか。

加藤 課題は大きく4つありました。ネット上の商品やサービスの提供スピードを上げること、ITのコストを抑えること、事後対応も含めて安定稼働を実現すること、そして事業継続です。開発のスピードやコストについては、アプリケーションや開発フレームワークなど、抜本的な見直しが必要でした。ネットバンキングのサービスを追加してきたことでシステムが複雑化して開発期間が長くなり、コストもかかるようになってきていたからです。

 また、安定稼働と事業継続という面ではシステムのアーキテクチャーを見直す必要がありました。単にバックアップセンターにマシンを入れるだけだと、メインマシン、バックアップ用マシン、開発用マシンと買い物が多くなります。どのようにコストを抑えて対策を進めるか求められていました。


データベースをDB2に切り替えてシンプルな構成に

―いつごろから検討を始めたのでしょうか。

加藤 2012年3月から半年かけて全体の構想を固めました。

 構想の1つ目は、アプリケーションを抜本的に見直して、できるだけ共通化を図ると同時に、開発フレームワークを標準化すること。これにより、必要スキルが集約されるためエンジニアの調達が容易になり、開発効率をさらに上げることができます。目標として、開発生産性を3割向上させ、開発自体のコストを大幅削減することを掲げましたので、実現できれば今後10年間で十数億円のコスト削減につながります。

 もう1つは、メインマシンとバックアップマシンの両方を常時稼働させて、2つを合わせて必要となる性能を確保することです。もちろん、どちらかが被災した際には片方で処理を継続することができるのが前提条件です。このメインとバックアップの両方を現用システムとして稼働させる“両現用”によりハードウェア投資を抑え、データベースシステムにおいてはIBMのHADRやQ-Replicationの技術を活用することで高い可用性を確保することができます。

“両現用”での災害対策環境を構築するとともに、可用性の確保とハードウェア投資の抑制を実現。
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―その基盤となるのがIBMのSystem zとDB2の組み合わせですね。

加藤 2007年のシステム更改で、Linuxで基幹システムを動かすことと、仮想化技術でサーバー統合することを目指しました。その際にz/Linuxを採用し、100台以上のサーバーを1台に統合しました。メインフレームの堅牢性とLinuxというオープンな技術の組み合わせで安定稼働を目指したわけですが、更改以降、業務に影響を及ぼすようなハードウェアに起因する障害は一度も起きていません。その信頼があったからこそ、今回の更改も計画できました。

向井 今回はデータベースもDB2にリプレースしました。データベースまで含めてシステム基盤をすべてIBMに1本化したことが今回の更改のポイントです。事前に詳細な検証を行ったうえでデータベースの移行が可能かどうか判断しましたが、シンプルにすることで万が一システムに障害が起きた際にも迅速な対応ができるようにしたかったのです。

 さらに“両現用”を決済系のシステムに適用するというのは大きな決断です。そのため、IBMにはグローバルレベルできちんと対応してもらいたいと要望しました。実際にハードウェアとソフトウェアのトップエンジニアを海外から派遣してもらい、トラブル対応に備えて日本でスタンバイしてもらいました。幸いにして協力をお願いする事態には至りませんでした。