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ITモダナイゼーションSummit レビュー|コベルコシステム 大規模開発で長年蓄積した経験を活かし独自のリビルド手法でシステム再生を行う

コベルコシステム

大規模開発で長年蓄積した経験を活かし
独自のリビルド手法でシステム再生を行う

老朽化した情報システムは、長年にわたる相次ぐ機能改修によってシステムが複雑化し、クラウドやタブレットの活用など、新しいビジネスの進め方に対応できなくなっている。コベルコシステムの「リビルド手法」は、神戸製鋼所のシステムをはじめ数多くの企業システムの構築で蓄積したノウハウや経験を反映した独自の手法で、基幹システムのITモダナイゼーションで数々の実績を上げている。

老朽化したシステムが経営の足かせに。「塩漬け」の近代化は喫緊の課題

コベルコシステム株式会社
インダストリーソリューション本部
西日本第一開発部
部長
植村 隆幸

「長年にわたる利用によって、課題が顕在化しているものの、手が付けにくくなっている情報システムを私たちは『塩漬けシステム』と呼んでいます。時代の変化に自社のビジネスを追随させようとする経営環境において、塩漬けシステムは足かせとなり、企業競争力にも影響を及ぼすものになっています。塩漬けシステムの近代化は喫緊の課題です」と、コベルコシステムの植村隆幸氏は指摘する。

老朽化した塩漬けシステムによる弊害は少なくない。長年にわたる機能の改修によるシステムの複雑化で、システム改修に時間が必要となり、経営側の要求にすぐに応えられないという問題が発生している。さらに、「特定の機器でないと使えない」「他のソフトウエアとの連携が図れない」といった構造的な問題によって経営ニーズを満たせず、ビジネススピードの変化に対応できなくなっている。

「塩漬けシステムに対するお客様の不安や不満をよく聞くようになりました。汎用機言語を熟知した技術者の高齢化に伴い、将来の人材確保も困難になっているという声だけではありません。自社の強みであるビジネスモデルを活かし、伸ばしたいのに古いシステムが足かせになっている。なんとかしたいという悩みも聞きます。また、その一方で、長年蓄積してきた既存システムの資産を有効活用して、安全かつ効率的に新システムに移行したいといった声もあります。経営基盤である基幹システムを生まれ変わらせる必要性が高まっています」(植村氏)

こうした課題の解決策として、コベルコシステムは「リビルド手法」を提唱する。リビルド(再構築)とは、老朽化したシステムの近代化を図るITモダナイゼーションの一つである。現行システムからパッケージへ移行するリプレース、ITインフラを再構築するリホストなどと異なり、リビルドは現行機能を踏襲しながら新技術の基盤でシステムを再構築する。システムを長期間利用できるほか、運用・保守面での効率性の向上、拡張性の向上といった数々のメリットが得られる。

「当社では、現行の基幹システムのうち、定型業務については標準化を図り、パッケージによるリプレースを積極活用し、運用コストの削減などを図ります。一方、企業独自の業務システムについては、ビジネスの変化に柔軟に対応できるようにリビルドを積極活用し、攻めの投資をしていただけるようにご支援しています」と、植村氏は説明する。

長年のノウハウと経験を反映した独自のリビルド手法を多くの企業に導入

コベルコシステムが提唱するリビルド手法は、通常のリビルドにコベルコシステムが長年蓄積してきたノウハウや経験を反映したものだ。コベルコシステムは神戸製鋼所の情報システム会社としてスタートし、製造業をはじめ小売・卸売業、サービス業などでシステムの開発・構築を手掛けてきた。基幹システムのITモダナイゼーションでも数々の実績を持ち、リビルド手法に対する関心が高まっている。

最大の特長は、機能要求を定義する要件定義をしない点にある。プロジェクトが失敗する要因の多くは要件定義のミスにある。リビルド手法では、その要件定義をせず、現行機能を踏襲する。スクラッチ開発では要件定義、外部設計、内部設計、実装、テストという工程で開発を進めるのに対し、リビルド手法では計画、試行、量産、テストという工程を踏み、しかも量産段階では並列・繰り返し開発を実施できるので、開発要員計画の平準化による効率的な要員投入と要員習熟による品質向上が可能になる。

コベルコシステムのリビルド手法は、「現行資産の分析」「アーキテクチャーの刷新」「データモデルの刷新」を中心に据えて実施する。

現行資産分析の最大の狙いは、現行機能の保証に加え、事業環境の変化や経営ニーズへの対応力を高めるためにシステムのスリム化を実施することにある。業務ルール文書、システム操作、機能仕様書などを基に現行資産を分析し、現行業務と現行システムの理解を図る。その上で、現行機能仕様を引き継ぐプロセスを検討し、新仕様書を作成するとともに、重複機能や不要機能の排除、共通化によってスリム化を推進する。

「現在のビジネスモデルの維持や業務に欠かせない機能、それらからアウトプットされるデータには、変えてはいけないものがあります。こうした部分については堅牢性を優先し、現行機能の保証を重視します。その一方で、時代の変化や経営ニーズに対応できるように柔軟性を重視し、現行資産のスリム化、データモデルやアーキテクチャーの刷新も図らなければなりません。これまでの経験によると、基幹システムの再構築では現行機能を変えた比率は最大でも15%ほどにすぎず、大部分の機能は堅持する進め方が重要です」(植村氏)

■スクラッチ開発とリビルドの違い
リビルドには、機能要求を定義する要件定義がない
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システム刷新で納期回答を1/4の11時間に短縮

コベルコシステムのリビルド手法は既に数多くの実績を上げている。グローバルに事業展開する大手電子部品メーカーのケースはその好例だ。この電子部品メーカーの基幹系システムは長年メインフレームで稼働していたため、汎用機言語の技術者不足、保守性の悪化、業界の中で競争優位性を増強するためのビジネス要求への対応が困難になってきた上、近年では取引先などの社外システムから基幹システムへのリアルタイム・データ連携などの要請も強まってきていた。

これらの課題を解決するため、基幹システム全体をリビルド手法で刷新した結果、様々な改善を図ることができた。取引先に対する納期回答の高速化はその一つ。メインフレームのときは最大44時間要していたが、リビルドによってアーキテクチャーを刷新し、オンラインとバッチの並行処理を実装。バッチの実行サイクルを増やし、バッチ処理時間を短縮化したことで納期回答を11時間までに短縮することができた。また、保守性が大幅に向上したことで、オンライン業務に支障をきたす障害が連続672日発生していないほか、システム連携向上の対応でオープンスタンダードの接続インタフェースを実装し、取引先などの社外システムとの接続がスムーズに行えるようになった。今後本格的に到来するデジタル・ビジネス時代を見据えたデータ連携能力をこの基幹システムは既に備えている。

「現行資産やお客様の状況に合ったプロジェクトを計画し、それを推進しなければリビルドは成功しません。それには、プロジェクトマネジメント力に加え、アーキテクチャーやデータモデルの刷新に精通した人材、実績があるフレームワークやツール、ノウハウといったアセットの活用という三つの能力が欠かせないと思います。今後もこの三つの能力をさらに磨き、塩漬けシステムの課題をお持ちのお客様にお役に立てるようにしていきます」と、植村氏は今後の抱負を語った。

■コベルコシステムのアセット
実績のあるアセットを活用して、開発生産性と保守品質を向上させる
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