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急速に広がるODMの導入 ビジネスの意思決定を管理するシステムが求められる理由

コンプライアンス遵守、グローバル対応など、ビジネス環境が急激に変化する中で、ビジネスの意思決定の仕組みを管理するODM(オペレーショナル・ディシジョン・マネージメント)の導入が急速に広がっている。金融・保険業界をはじめ、ヘルスケア、エネルギー、通信、流通、政府機関など対象となる業界は幅広い。ビジネスルール管理システムを進化させたODMがなぜ今求められているのか。そのメリットはどこにあるのか。

正確性と効率性を両立するODMがビジネスを変える

IBM Software Group
WebSphere BPM Dealmaker
APAC、GCG、MEA
Kuah Ann Thye

 「FATCA(米国の税法である外国口座税務コンプライアンス法)への対応は手作業では不可能。自動化を図るしかありません。そこでBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)やODMによる効率化が注目されています」とIBMソフトウェアグループのKuah氏は語る。Kuah氏は長年、アジア・アフリカ地域でこの分野を担当してきた。IBMはBPMの世界で長年にわたってトップシェアを誇り、ODMの世界でもリーディングカンパニーとして多くの導入実績を誇る。

 FATCAとはForeign Account Tax Compliance Actの略称で、外国口座税務コンプライアンス法を指す。税金を逃れるために海外口座を利用する米国人を取り締まる米国の税法だ。米国の法人や個人と取り引きのある米国外の企業まで対象とされ、日本の大手金融機関でも対応を迫られている。遵守できない場合には、取り引きができなくなるだけでなく、罰則も用意されている。

 しかし、FATCAに対応するためには、源泉徴収やトレーサビリティーの仕組み、顧客の対応状況による切り分けなど、システム面での準備が求められる。加えて、毎年のように行われるルール改定に対応しなければならない。そこで、ビジネス・ルール・エンジンを組み込んで意思決定の効率化を支援するODMが注目されているのである。

 「ビジネス・ルールのテクノロジーを活用することで、ビジネス・ユーザー自身がルールを管理することができ、ルール変更に対応できるようになります。ルールを使ってシステムを保守管理できるので、FATCAのような案件への対応には最適です。10倍くらい効率が高まると言われています」とKuah氏はODMのメリットを強調する。

 ビジネス・ルールを使ってビジネス上の意思決定の仕組みを管理できるODMの適用範囲は金融だけではない。戦略的な意思決定や業務上の意思決定が求められる、あらゆるシーンでODMが使われている。IoTやビッグデータといった新しいコンピューティング・スタイルが広がる中で、ODMの適用範囲も急速に広がりつつあるのだ。そのポイントはシステムを継続的に利用しながら、正確性と効率性を両立できる点にある。

販売価格の動的な設定や製造プロセスの管理にも適用

 ODMの原点は、ルールをシステム化して管理するビジネス・ルール・マネジメント・システムにある。ODMでは、ビジネス・ルールをアプリケーションに組み込み、プラットフォーム化してビジネス・ユーザーが利用できるように自然言語処理に対応している。

 ODMを使用することで、ビジネス・ルールの自動化が可能になるだけでなく、対象となるビジネス・イベントをリアルタイムに検出し、ルールによって最適な対応が自動化される。ビジネス・プロセスの処理を自動化するBPMと組み合わせることで、業務の変更に柔軟に対応できる業務処理基盤が構築できる。

 ある世界最大規模のクレジット会社では、ODMを使うことで毎秒発生する2500件の決済を5000のビジネス・ルールを参照しながら処理している。「国ごとでも異なる、日々刻々と変化する不正使用のパターンを短時間でシステムに反映させることにより、損失の発生を防いでいます。しかも、管理しているメンバーはわずか15名です」(Kuah氏)という。

 こうしたODMの導入は、反復可能な意思決定が多い金融・保険業界が先行している。クレジットやローンなどの融資の承認業務、新規口座の開設業務、保険料の請求処理業務、新規契約引き受けのリスク査定業務などだ。FATCAのような法律に対応したコンプライアンス関連のレポート作成業務もある。

 しかし、このほかにもアップセルやクロスセル、お勧め商品の紹介、顧客ごとに提供する顧客ロイヤリティー・プログラム、競合他社の動きや市場の変化に対応した動的な価格設定、医療費の請求などに対する不正行為の検出、複雑なルールに基づく適格性の判定などにもODMが使われている。

 「小売や流通の分野では、価格設定、注文品のトレース、ベンダーや製造プロセスの管理、経費の管理、クレーム対応などにODMが使われ、税金の徴収、年金の給付、社会保険の適用、出入国の管理、安全保障プログラムなど、政府関係でもODMを導入するケースが増えています」とKuah 氏は指摘する。複雑なルールに基づいて業務が処理され、変更が適宜必要になる領域ではODMが威力を発揮しているという。

ソースコードを変更せずにビジネスの変化に対応できる

日本アイ・ビー・エム株式会社
IBM システムズ・ソフトウェア事業部
インテグレーション&スマータープロセス
テクニカル・セールス
BRMS担当
横谷 信太郎

 ODMのもたらすメリットの1つにIT部門に頼らないスピーディーで低コストな変化への対応が挙げられる。Kuah氏は「ビジネス・ルールを変更するのに、ソースコードに手を加える必要はありません。IT部門に頼ることなく、システムにかかるコストと時間を低減させることができるのです」と語る。

 ODMではエクセルシートで作られたビジネス・ルールをそのままインポートできる。100のテーブルの内容を比較したり、そこから最良のルールを探し出すこともできる。新しいデータを既存のルールに適用し、適切なディスカウント価格を設定するといった用途にも活用できる。ユーザーは新しいルールの作成やルールの変更をエクセルシートで行うことができ、特にITの知識は必要とされない。

 「基本となるアプリケーションに組み込まれているルールを簡単に変更できるのも、ODMの大きなメリットの1つです。ルールの部分だけを変更することで、これまでのシステムを活かして、ビジネス環境の変化や国ごとの法律の違いに対応することができます」とKuah氏はグローバル展開におけるODMの強みを説く。グローバル化を進める企業にとって大きなメリットとなる。

 日本でODMの推進にあたっている日本IBMの横谷信太郎氏は「日本では契約までのプロセスの短縮化を図りたい生命保険会社からの引き合いが多い」と日本市場の特徴を指摘し、「業務の現場では意外と自動化が進んでいません。今後はIoTもからめてODMの適用分野を広げていきたい」と話す。

 ODMによって個々の業務アプリケーションをルールによって統合し、自動化の範囲を広げることができる。そこではより早く、より間違いのない処理が遂行される。IBMでは、自ら学習して進化するWatsonのような取り組みも進んでいる。こうした技術の進化とあいまって、新たな業務プロセスの姿が現実になりつつある。

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  • オペレーショナル・ディシジョン・マネージメント
    for Dummies

    米国で人気のDummiesシリーズの日本語版PDF(43ページ)。これでビジネス・ルールによる意思決定管理の 「いろは」 がわかります。日々行われる業務上の意思決定を自動化し、ビジネス、IT 双方の担当者が直観的に理解できるインターフェースと言語を使用して、ビジネス・ルールを共同で管理できるODM(オペレーショナル・ディシジョン・マネージメント)の入門書です。

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