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顧客指向の「IoC」でIoT時代に勝ち抜く

セールスフォース・ドットコム 顧客指向のアプローチ「IoC」が
IoT時代に勝ち抜くためのカギ

1999年の創業以来、常に売り上げ前年比20%増という驚異的な急成長を遂げてきたセールスフォース・ドットコム。同社が現在、とりわけ大きな力を割いているのが、今企業の間で急速に関心の高まるIoT(Internet of Things)の領域である。そこでコンセプトとなっているのが、あくまでもビジネスや顧客を念頭に置いた“IoC(Internet of Customers)”の実現だ。

技術先行の取り組みでは
IoTの真の価値は享受できない

株式会社セールスフォース・ドットコム
取締役社長 兼 COO
川原 均

 CRM領域のSaaS提供で知られるセールスフォース・ドットコム。同社ではセールスオートメーションを原点に、コールセンターやフィールドサポートといった、より広範な営業領域、さらにはコミュニケーションプラットフォームやデジタルマーケティング、コミュニティーといった分野にも支援対象を広げてきた。特に2015年からは、IoTの領域にとりわけ大きな力を割いており、企業のIoTに関わる取り組みを支援してきている。

 「ここ数年来、多くの企業がIoTへの対応を念頭に、デバイス接続やコミュニケーション、ビッグデータといった領域でのシステム整備を進めてきました。一方、当社の調査では、企業が保有する顧客データのうちビジネス活用されているのは1%にすぎず、77%の顧客が自らの利用する製品やサービスを提供する企業、ブランドとのつながりを感じていないという結果が出ています」とセールスフォース・ドットコムの川原均氏は指摘する。

 こうしたギャップを生んでいる要因について川原氏は、企業側のIoTの捉え方に問題があると考えている。具体的には、IoTに関する取り組みがシステムの整備など技術面に終始し、ビジネスや顧客の視点を欠いているというのだ。「企業に蓄積されたデータは、お客様に何らかの形で還元されて初めて価値を生みます。そうした意味では、IoTの基盤上のデータをアプリケーションでビジネスや顧客に連携していく、IoTならぬ“IoC(Internet of Customers)”の実現が不可欠。それこそがセールスフォース・ドットコムのIoTに関する考え方なのです」と川原氏は語る。

IoTを含む統合デジタル技術が
「第四次産業革命」をドライブ

 世界経済フォーラム(通称ダボス会議)の主催者としても知られる経済学者のクラウス・シュワブ氏は、2016年の初頭に上梓したその著書『The Fourth Industrial Revolution』の中で、今まさに我々の社会において「第四次産業革命」というべきものが進行していると述べている。「シュワブ氏によれば、第四次産業革命をドライブしているのは、ユビキタス、モバイル、センサー、インターネット、ナノテクノロジー、AIによる統合デジタル技術だということで、それによってビジネスの世界には四つの変化が立ち現れていると言っています」と川原氏は紹介する。四つの変化とはすなわち、これまでは無理だと思われてきたようなことが明確なニーズとして浮上する「顧客期待値のシフト」、“モノ”売りから“コト(サービス)”売りへという「ソフトウエア・カンパニー化」、既成概念にとらわれない「新たなパートナーシップモデル」、そして企業のバックエンド業務に関わる「オペレーションモデルのデジタル化」だ。「IoTはまさに、そうした変化を支える中枢の技術だといえるわけです」と川原氏は言う。

“四つの勝ち抜きルール”を指針に
顧客のIoT活用を支援

 セールスフォース・ドットコムがIoT活用へかじを切っておよそ1年。その間、いくつかの顧客のIoT関連プロジェクトに関わってきた。例えば、不動産売買系フランチャイズの業界大手として知られるセンチュリー21の加盟店の一つ、センチュリー21 登喜和での取り組みが成功事例として挙げられる。

 マンションのリノベーション物件を販売する同社では、ショールームをデジタルマーケティングのフロントにすることを念頭に、Salesforceのサービスをベースにシステムを構築。ショールームを訪れる顧客にiPadを貸与し、例えば部屋を移動して気に入ったところがあればアプリケーション上で「いいね!」ボタンを押してもらうようにしたり、好みの場所で自由にiPadを使って写真を撮ってもらい、撮った写真を提供するというサービスも開始した。

 システム側では、顧客が物件のどの位置で「いいね!」ボタンを押し、どこで写真を撮ったかといった情報、さらには部屋の各場所での滞留時間なども可視化できるようにしている。「これにより、これまでのようにショールームを見学するお客様にアンケート用紙に回答してもらうといった手間を強いることなく、そのお客様の好みを正確に把握するとともに、例えばコールセンターなどへも速やかにその情報を展開できるようになりました」と川原氏は紹介する。

 もう一つ、こちらは海外の事例だが、英国のMedelinkedという会社では、人間ドックを受診したり、医療機関で診療を受けたりした際の検査資料を、当人と医療機関の許諾を得て同社がSalesforceをベースに構築しているシステム上に格納するサービスを提供している。例えば会員が出張先などで病気になっても、現地の医療機関がその人の既往症や診療データを即座に確認でき、より適正な診療を迅速に行えるようになるわけだ。

 またIoTという観点では、ウエアラブル端末との連携機能も実装し、会員のバイオデータをクラウド上に集約して、会員にアドバイスを行うというサービスも可能となっている。

 もっとも、こうしたサービスの実現には、医療機関側の合意を取り付けることが重要な課題となるが、それに関しMedelinkedでは生命保険会社をパートナーとすることにした。保険会社にすれば、契約者やこれから契約しようという人たちの健康状態はビジネス上の重要な関心事だ。そこでMedelinkedでは、パートナーとなった保険会社に医療機関を説得してもらうというスキームを構築。医療機関のサービスへの参画を促している。

 このサービスは2005年にスタートしてから、現在までに5万人の会員を獲得。英国にとどまらず、他の欧州の国々や米国にもサービスを拡大するなど、大きな成功を収めている。このMedelinkedのケースなどは、既に述べた第四次産業革命をドライブする統合デジタル技術がもたらす四つの変化をトータルに具現化している好例だといえる。

 「言い方を変えれば、四つのポイントを満たしていることは、今後のIoT時代に企業が勝ち抜くためのルールであるともいえます。セールスフォース・ドットコムにおいても、この四つのルールを指針として、お客様のIoCに向けた取り組みを支援していきます」と川原氏は力強く語った。

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