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行政関係者が語る金融ITの現在

基調講演

出資規制、決済高度化などを検討
金融業界の新しい挑戦をサポート

金融庁
総務企画局
信用制度参事官
佐藤 則夫

 FinTechと呼ばれる金融とITの融合は、多様な金融サービスの提供を可能にし、顧客利便性を飛躍的に高める。金融市場の将来的な姿も大きく変えていくだろう。

 FinTechへの取り組みを進める国内金融機関の動きも見られるが、海外の変革スピードには及ばない。「日本の金融機関が国際競争力を高めるには、FinTechへの対応を進め、キャッシュ・マネジメントサービスの高度化、決済インフラの国内外を通じたシームレス化などを加速する必要があります」と金融庁の佐藤則夫氏は主張する。

 金融庁では、内外の有識者や関係者の知見を取り入れつつ継続的に取り組んでいたスタディグループをワーキンググループに改組し、FinTech時代の望ましい金融規制の在り方について検討を進めている。

 「銀行グループから要望の出ている電子商取引ビジネスへの出資、金融関連ITベンチャー企業への出資、銀行間での決済関連事務の委託なども前向きに検討しています」と話す佐藤氏。ワーキンググループとして、近く報告書を出す。

 新しい金融サービスは最新のITを活用しており、その標準化を巡る競争がグローバルレベルで進みつつある。「日本においても、FinTechを含む決済高度化に向けた取り組みなどを戦略的に推進し、金融業界・IT業界の新しい挑戦をサポートしていきます」と佐藤氏は力強く語る。

特別講演

マイナンバー運用のガイドラインを公表
適正な利用を啓発

個人情報保護委員会事務局
総務課
企画官
松本 秀一

 2015年10月から施行が開始された「マイナンバー(個人番号)」への対応も、金融業界にとって喫緊の課題である。マイナンバーと預貯金口座とのひも付けが決定したため、銀行業界においても対応策の検討が始まったところである。

 その有力な“手引き”となるのが、特定個人情報保護委員会(2016年1月1日付で「個人情報保護委員会」に改組)が策定・公表しているガイドラインである。同委員会はマイナンバーの適正な取り扱いに関する監視・監督および広報・啓発などを行う。

 例えば、制度運用において多くの国民が懸念するのが、マイナンバーをキーにした個人情報の漏洩と一元管理への危惧である。ガイドラインでは、特定個人情報の適正な取り扱いを定めている番号法に基づく、マイナンバーの利用制限などについて説明している。法律で定められた事務処理に必要な場合に限り、本人に対してマイナンバーの提供を求めることができる。「特定口座年間取引報告書の作成事務、生命保険契約に基づく保険金支払いに伴う支払調書の作成事務などがこれに当たります。その際は個人番号カードの提示など、本人確認を行う必要があります」と個人情報保護委員会事務局の松本秀一氏は説明する。

 マイナンバーの保管も制限されている。保管・利用にあたっては、十分な安全管理措置を講じる必要がある。「例えば、取扱担当者を明確にし、その監督・教育を行うこと。システム面では不正アクセスや不正ソフトウエアから保護する仕組みを導入し、適切に運用することが求められます。万が一、不正アクセスなどに遭った場合も想定し、ネットワークの遮断など被害を最小化する仕組みも必要です」(松本氏)。ガイドラインの詳細については、同委員会のホームページで公表している。積極的に活用してほしい。

特別講演

マイナンバーで顧客検索や名寄せ
NISA口座開設の短縮化が可能に

内閣官房 社会保障改革担当室審議官
内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室長代理(副政府CIO)
内閣府 大臣官房番号制度担当室長
内閣官房 すべての女性が輝く社会づくり推進室次長
向井 治紀

 マイナンバーの取り扱いには様々な対策・措置が必要になるが、マイナンバー制度のインフラを適切に活用すれば新たなビジネスチャンスを生む“起爆剤”となる。

 例えば、本人が申請して交付を受けるマイナンバーカードには、公的個人認証の電子鍵を記録するICチップが埋め込まれている。公的個人認証の署名検証権限やICチップの空き領域は民間にも開放する予定だ。「総務大臣が認める民間事業者であれば、独自アプリなどを搭載できるようになります。公的個人認証を、民間企業の様々なサービスに利用できるのです」と内閣府大臣官房番号制度担当室の向井治紀氏は語る。

 具体的には、公的個人認証サービスを利用してネットバンクやネットショッピングのアカウント開設時の本人確認、正確な顧客情報変更の把握などが可能になる。「自民党のマイナンバー制度の利活用に関する政策提言が実現していけば、2020年の東京オリンピックには、会場への入場券としてマイナンバーカードが利用されるでしょう」と向井氏は私見を述べる。

 マイナンバー制度の利活用の不安を払拭する取り組みも進めている。マイナンバーカードは秘匿性の高い公開鍵暗号方式を採用し、情報漏洩のリスクが極めて低い。加えて「自分の個人情報を、いつ・誰が・なぜ提供したか」を確認できる「マイナポータル」というWebサービスを2017年7月より本格運用する。このポータルでは引越しや結婚、出産、死亡といったライフイベントに必要な手続きも通知し、行政のワンストップサービス化を進める。

 金融機関での利活用範囲も広がる。その一環として、預貯金付番にかかわる法整備も進めてきたところだ。「行政機関などの照会要請に効率的に対応できるように、検索や名寄せにマイナンバーを活用できるようにする計画です」(向井氏)。これにより、災害時や金融機関が破たんした際の預貯金の円滑な払い出しにもマイナンバーを利用できる。

 ジュニアNISA(未成年者を対象とした少額投資非課税制度)の口座開設も簡略化できる。「口座開設時の住所確認や重複口座確認にマイナンバーを用いることで、 住民票の写しなどの提出が不要になります。税務当局における非課税適用確認作業も迅速になり、従来のNISA口座と比べて口座開設までの期間を短縮化できます」と話す向井氏。

 法人版マイナンバーとも言える「法人番号」の活用よるメリットも大きい。「原則公開される法人番号と企業情報をひも付けることで、取引先の信用度チェック、グループ企業の名寄せなどの作業を効率化できます」と話す向井氏。国税庁法人番号検索サイトでは法人番号を統合的に検索し、ダウンロードすることも可能だ。

 FinTechによる金融サービスの高度化、マイナンバー制度への対応など金融業界には次々と変革の波が迫りくる。この波に先手を打って取り組むことが、激しい企業間競争を勝ち抜く原動力となる。