現在でも、多くの金融機関の基幹業務システムや情報系システムはバッチ処理に頼っている。オンラインによるリアルタイム処理では不可能な多くの帳票データ作成や様々な情報系データの作成など、大量のデータ一括処理を中心にバッチ処理が使われるからだ。しかし、このバッチ処理システムは肥大化・複雑化し、その全容が見えなくなっている。結果として、「保守ができない」「バックログが増大する」「コストがかさむ」といった問題が起きている。
こうした積年の課題を打破するためには、これまでのアプローチでは難しい。そこでインテリジェント・モデルの小林佳文氏は、最新技術を駆使してバッチ処理システムの構築を自動化することを提案している。
インテリジェント・モデルが提供するエンジン型のバッチ処理構築ツール「ODIP(Ontology Driven Information Processing:オーディップ)」は、モデルドリブンの開発支援ツールで、ビジネス要件をメタデータとしてリポジトリに登録するだけで、システムを実装することができる。知識エンジンのアルゴリズムによって、入力されるデータから最適なロジックで、目的の出力データを形成するプロセスを構築する。
ODIPが提供するメリットは大きく四つ。「飛躍的な生産性向上」と「システムの肥大化防止」、そして「見える化の実現」と「高品質・高性能の実現」だ。小林氏は「これらの要素によって現在の大規模バッチシステムの問題点を解決できます」と話す。
超高速開発ツールODIPの最大の特長は、モデルドリブン型の開発を実現している点にある。これはAIの基本的な構造と同じだ。「レコード間演算やデータ構造変換などの処理を自動化し、バッチ処理に必要な機能を網羅し、業務ロジックを制御ロジックから独立させることで、簡単なGUIでシステムを定義できます」と小林氏は解説する。
ODIPでは、一つの処理を定義したGUIのインタフェースを組み合わせることによって、入力・加工・出力を定義できる。出力定義の変更や出力項目の追加も容易に行える。小林氏は「ユーザー仕様に近い内容で定義が可能です。入力や出力など最低限の指示だけで、自動でシステムが構築されます」と飛躍的に生産性を向上できることを強調する。
また膨大で複雑な処理プロセスを、高度な自動化によって短縮できるのもODIPの特長だ。異なるプロセスを作る際にも、ユーザービューの定義を変更するだけ。新たな処理フローを追加する必要はない。一つの処理で複数の目的別データを作成できるのである。「プロセスの数が減ることで、結果としてシステムの肥大化が防止できます」と小林氏は話す。
見える化という面でもODIPは貢献する。属性やコードがどこで使われているのかを把握するメタデータ管理の自動化と、誰でも見てわかる簡単なGUIによって、処理が可視化され自動化されるからだ。「事前に用意した知識ベースのリポジトリを使って開発するので、情報が完全に共有化され、設計開発段階でのブレがなくなります。10人月の作業を数分で実現したケースもあります」(小林氏)。
高品質・高性能という分野でもODIPは威力を発揮する。小林氏は「全ての処理が同じプログラムで動いているので、トラブルは発生しません。品質は100%維持されます。また通常ネックとなるI/O処理が1プロセス内で1レコードのみになるため高性能が実現されます」とODIPによる開発のメリットを説く。I/Oを減らすことは、アプリケーションの開発の仕方そのものを改善することにもつながるという。
小林氏は、ODIPのような新しい技術を導入する際のポイントを三つ挙げる。「技術の進化を見極めて適材適所で導入すること。ユーザーファーストを考えるなら、まずアプリケーションファーストで取り組むこと。そして、従来のような場当たり的なコスト削減ではなく、全体のコスト削減を考えること」だ。
これまでの技術の積み重ねが現在の姿を形作っている。その進化を踏まえながら、最新の技術を駆使することでレガシーシステムでも改良できる。システムの本質は業務のためのシステムであることだ。業務にどう生かすかという視点で取り組むことが大事になる。
小林氏の提案するODIPは都銀、地銀など10行をはじめ、鉄道、公共、製造などに導入され、数百から数千人月規模のプロジェクトで採用されてきた。特に全面的な再構築での適用がほとんどで、これまでの数倍から10倍の生産性を上げることに成功してきた。
「今求められていることは、全く新しいことに取り組むことではなく、従来からある問題点を最新の技術で克服しながら、同時に未来に備えることです」と小林氏は指摘する。そのために、現状のシステムを抜本的・本質的に改善することが必要になる。難事であるには違いないが、問題を抱えたまま新しいことにチャレンジすることはできない。
厳しい競争に生き残るために、バッチ処理という企業活動の根幹となるシステムを新技術で変えていく。それができる時代になっているのである。
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