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レノボとニュータニックス、成長市場で協業

2016年1月26日、レノボ・ジャパンは米ニュータニックスの仮想化ソフトウェアを搭載したハイパーコンバージドシステムを日本市場に投入すると発表した。ハイパーコンバージドシステムは、ストレージを内蔵したサーバーをネットワークで接続し、処理能力やストレージ容量を簡単かつ安価にスケールアウトできるもので、データ量が爆発的に増える企業コンピューティングの世界の新たなインフラとして注目されている。今回の協業の背景や狙い、日本市場での展開、最新の市場動向などについて、レノボ、ニュータニックス、そしてIT専門調査会社のIDC Japanに話を聞いた。

左から、IDC Japanの宝出幸久氏、レノボ・ジャパンの安田稔氏、ニュータニックス・ジャパンの安藤秀樹氏、レノボ・ジャパンの早川哲郎氏
左から、IDC Japanの宝出幸久氏、レノボ・ジャパンの安田稔氏、ニュータニックス・ジャパンの安藤秀樹氏、レノボ・ジャパンの早川哲郎氏

年率60%で成長し続ける次世代インフラ市場

―ハイパーコンバージドシステムは『日経SYSTEMS』の「ITインフラテクノロジーAWARD 2016」でグランプリに選出されるなど、急速に注目度が高まっています。IDCとしては、今の動向についてどのように捉えていますか。

IDC Japan 株式会社 エンタープライズ インフラストラクチャ マーケットアナリスト 宝出幸久氏
IDC Japan 株式会社
エンタープライズ インフラストラクチャ
マーケットアナリスト
宝出幸久氏

宝出 IDCでは、クラウド、ビッグデータ/アナリティクス、モビリティ、ソーシャル技術を、メインフレーム、クライアント/サーバーに続く、次世代のITプラットフォームである「第3のプラットフォーム」として位置づけています。今後は、こうした第3のプラットフォームの技術を利用し、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデル、新しい関係を通じて価値を創出し、競争上の優位性を確立する「デジタルトランスフォーメーション」に取り組む組織が増加するとみています。

第3のプラットフォームを支えるITインフラには、新しいワークロードへの対応や大量のデータを活用してビジネス価値を生み出すとともに、迅速なサービス提供や高い拡張性、高いサービスレベルが求められています。しかし、課題があります。それは、企業のIT予算やIT管理リソースの大幅な拡充は難しいケースが多いことです。

この課題に対応するためには、自動化などによって運用管理を効率化し、限られたリソースの中でビジネスの変化に対応できるITインフラへと変革することが求められます。こうしたニーズに対応すべく、サーバー、ストレージ、ネットワーク機器といったサブシステムを集約し、一括で構築や管理できるコンバージドシステムが登場しました。また、コモディティ化したサーバーをソフトウェアで抽象化し管理することで、ワークロードに最適なITリソースが動的かつ迅速に提供可能な「Software-Defined Infrastructure」への注目も高まっています。ハイパーコンバージドシステムは、この両者の特徴を併せ持ったものとして登場し、急速に普及しています。

―実際にどの程度普及しているのでしょうか。

宝出 ハイパーコンバージドシステムの市場は急速に拡大しています。全世界では、2014年1年間の売上額が4億ドル弱だったのに対して、2015年は1月から9月までで6億ドルを超えています。また、日本国内でも2014年の売上額が13億円弱であったのに対して、2015年は1月から9月までで30億円強となり、急速に市場が立ち上がっています。

今後の見通しとしては、全世界での売上額は、2019年には約39億ドルになり、2014年から2019年の年間平均成長率(CAGR)は59.7%と非常に高い成長率で市場が拡大すると予測しています(図1)。

 ―年率60%の伸びとは、まさに急成長している市場ですね。

レノボ・ジャパン株式会社 執行役員専務 安田稔氏
レノボ・ジャパン株式会社
執行役員専務
安田稔氏

安田 当社はIBMからサーバー事業を受け継いだわけですが、サーバー事業の業績は好調に推移していて、ワールドワイドでは2020年まで年率10%程度の成長を見込んでいます。この市場では価格競争がますます厳しくなりますが、堅実に事業を展開していけると確信しています。

その一方で重要なのが、成長分野を開拓することです。そこで注目していたのが、次世代インフラの領域でした。コンバージドシステムやハイパースケールシステム、ハイパーコンバージドシステムの分野です。これは今の業績にアドオンできる新しい事業であり、高い成長率が期待できることもわかっていました。

相互の強みを持ち寄ってWin-Winの関係を構築

―次世代インフラの中でハイパーコンバージドシステムはどんな位置づけになるのでしょうか。

安田 モバイル、ソーシャル、IoTと企業システムのデータ量は増える一方です。これをどこに収めればよいのか。SANは高価であり、手間もかかります。そこで、まず注目されるようになったのがコンバージドシステムとハイパースケールシステムです。

こうした流れの中で、ハイパーコンバージドシステムが登場してきました。それを可能にしたのが、CPUの高性能化と仮想化ソフトウェアの技術的な進化です。速くなったCPUのパワーですが、通常は20%程度しか使われていません。一方、サーバーはVMwareなどによるサーバー仮想化技術によって簡単にスケールアウトができるようになりました。ただし、それだけですとストレージが取り残されてしまいます。SDS(Software Defined Storage)のテクノロジーを使ったサーバーとストレージを同時にスケールアウトできるハイパーコンバージドシステムであれば、CPUの処理能力の増強と処理能力をそのままにストレージを拡張できる、という2つのメリットを提供することができるのです。

この2つの技術的な進化に加えて、今回、ニュータニックスという格好のパートナーとタッグを組むことができました。ハイパーコンバージドシステムの分野でNo.1のシェアを誇るニュータニックスであれば、安心してハイパーコンバージドシステムという新しい事業を展開することができると考えました。

ニュータニックスにとってレノボとタッグを組むメリットはどこにあるのでしょうか。

ニュータニックス・ジャパン合同会社 日本法人代表 マネージングディレクター 安藤秀樹氏
ニュータニックス・ジャパン合同会社
日本法人代表 マネージングディレクター
安藤秀樹氏

安藤 当社はソフトウェアベンダーであり、サーバーベンダーをOEMとしてアライアンス提携することになります。その中で今回レノボと連携することにしたのには、大きく2つの理由があります。

1つはハードウェア製品の競争力です。ハードウェアの世界では常に先進の技術が実装されていなければ価値はありません。そのためには規模の経済が必要です。グローバル規模で事業を展開し、製品の信頼性も高く、保守力にも定評のあるレノボはベストパートナーといえます。

もう1つは市場戦略力です。レノボのサーバー製品のラインアップ、販売チャネル、IBMから受け継いだ顧客基盤、市場のカバレッジも幅広く、あらゆる業種、あらゆる企業規模のお客様を持ち、販売パートナーもそれに対応しています。サーバーからストレージまでのスキルも豊富で、当社単体でカバーできないところを補ってもらうことができます。

既存のチャネルを活かして新しい市場を開拓する

―日本市場における成長性や優位性はどんなところにあるとお考えでしょうか。

安田 もともとIBMのユーザーだったお客様は、すでにサーバーの仮想化に取り組んでいる企業が多く、その延長線上にあるハイパーコンバージドシステムも提案しやすいと思います。仕組みがわかっているため、ニュータニックスの仮想化ソフトウェアのメリットや信頼性についても理解してもらえるはずです。

レノボ・ジャパン株式会社 レノボ・サーバー・エバンジェリスト ソリューションスペシャリスト部 部長 エンタープライズ・ビジネス・グループ 早川哲郎氏
レノボ・ジャパン株式会社
レノボ・サーバー・エバンジェリスト ソリューションスペシャリスト部 部長
エンタープライズ・ビジネス・グループ
早川哲郎氏

早川 当社のパートナー企業は、お客様の状況がよくわかっているのも大きな強みです。どんな課題をお持ちなのか、どんなシステム構成なのか、いつリプレースの時期を迎えるのか、そういうことがわかったうえで、最適なタイミングで最適なソリューションを提案できます。設定や導入のスキルも十分に持っています。また、レノボも今までと同様に24時間365日体制で保守サービスを提供していきますから、お客様にもパートナーにも安心してご利用いただけます。

安藤 高信頼性のハードウェアと充実した保守サービスには大きく期待しています。いろいろなケースに対応し、多様なワークロードに応えることができるのではないでしょうか。当社にはないレノボの顧客基盤の実績は今後のビジネス成長にとって頼もしいと感じています。

宝出 レノボは全世界のx86サーバー市場で高いシェアを持っています。また。国内のチャネルパートナーを通じて、幅広い顧客にリーチできるという強みがあります。一方で、ニュータニックスはハイパーコンバージドシステム市場のリーディングベンダーであり、先行して実績を積み重ねています。

この両社がタッグを組むことによって、幅広い顧客にハイパーコンバージドシステムが提供可能となり、国内ハイパーコンバージドシステムの成長を加速させるでしょう。

安田 今後は両社が協力し、ワールドワイドで専門のセールスとテクニカルのチームを組織し、ハイパーコンバージドシステムの市場拡大に取り組んでいきます。サーバー製品の信頼性には自信があります。そのため、市場自体が大きくなれば自然と当社の業績向上にもつながるはずです。

安藤 レノボはサーバー市場での売り方を熟知していますし、実績も持っています。ハイパーコンバージドシステムの市場が広がれば、そこでシェアを獲得するのは当然です。当社も専門チームのトレーニングやセールス資料の整備に取り組んでおり、スピードを上げて協業を発展させていきたいと考えています。