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注目集める「対話式パーソナライズド動画」

強いインパクトを持ち分かりやすさを提供できる動画は、マーケティングツールとしても注目されている。実際に、インターネット上で動画を公開する企業は増えつつある。そのような中、インタラクティブな対話式パーソナライズド動画が注目されている。東京海上日動火災保険ではそのソリューションを早速導入し、顧客へのサービスレベルの向上を目指している。

代理店モデルだからこそ高まる動画へのニーズ

桑原 茂雄 氏
東京海上日動火災保険
株式会社
ビジネスプロセス改革部長

 IT活用の目的は、従来のバックエンドの省力化・自動化から、フロントかつ付加価値領域へとシフトしている。東京海上日動火災保険でも既存のシステムを再構築して、2011年にタブレットを顧客に見せながら顧客とともに契約内容を確認できるタブレットモデルを導入した。

 翌2012年には顧客向けのスマホアプリ「モバイルエージェント」を発表し、24時間365日顧客が自分の契約内容を確認でき、事故に遭った際にはアプリ経由で事故を報告できるようになった。また、社員に7000台のタブレットを配布して、移動中や外出中でも社内と同じ環境を提供することで、隙間時間の活用を促し、残業時間の削減などにつなげている。

 そのような中で上がってきたのが、「商品を動画で説明したい」「動画で勉強したい」という声だ。東京海上日動火災保険の桑原茂雄氏は、「損害保険というのは不思議なビジネス。購入時点では、商品の価値をほとんど実感することができません」と語る。事故に遭わない限り保険の効用は実感できず、無事故であれば保険会社の関係者が顧客と接点を持つのは、年1回の契約更新のみとなってしまうケースも少なくない。

 また代理店を通して商品を提供している同社にとっては、直接顧客と接する機会がなく、本当に必要な商品やサービスを提供できているのかが構造的に把握できにくい、という課題意識を抱えていた。じかに顧客と接する代理店との対話にもギャップが生じているのではないかという懸念もあったという。

 そこで注目したのが、デジタル技術の活用だ。他業種がデジタル技術を使ってお客様と密接に結び付き、顧客行動を詳細に把握している中で、保険業界は後れを取っている。同社の代理店は約5万店。しかも、顧客の契約内容も一人ひとり異なる。あくまで代理店を中心とした“代理店モデル”の損保という立場を守りながらも顧客接点を強化するソリューションが求められていた。

事前の安心を届ける動画コンテンツの提供

 代理店ごと、顧客ごとにパーソナライズされた情報を、動画に組み込んでアプローチできるソリューションを求めていた東京海上日動火災保険が導入したのは、ピツニーボウズの対話式パーソナライズド動画ソリューション「EngageOne Video」(以下、EOV)だ。出合いは2015年夏のマーケティング関連のイベント。「これしかないと一目ぼれして採用」(桑原氏)したという。

 パーソナライズド動画では、個人向けに動画コンテンツの出し分けができる。全視聴者に同じ情報しか提供できない従来の動画との最も大きな違いはそこにある。しかも、EOVは、動画の中で視聴者に対してアンケートを取ったり、ボタンをクリックすることで視聴者が見たいコンテンツへ遷移できるといった、対話(インタラクティブ)機能を持つのが特長だ。

対話式(インタラクティブ)パーソナライズド動画ソリューションEngageOne Video
シナリオ展開があり、対話性 がある。顧客の情報収集も可能
[画像のクリックで拡大表示]

 「顧客の意向に沿った動画を提供することで、お客様の興味をより引き出すことができ、同時に私たちも知りたいことを把握できます」と桑原氏。EOVは欧米を中心にサービスを提供して既に200社以上の実績があるが、日本では東京海上日動火災保険が最初の導入事例となった。

 同社では、今年9月から保険加入者向けへの情報提供にEOVを活用し始めている。「台風や広域災害への注意喚起、どう備えるかといった情報提供、視聴しているお客様の契約内容と被害に遭った際の手続きなどについて動画で案内しています。担当する代理店への連絡方法や補償内容の拡充につながるサービスを提案して、必要な手続きを案内するなど、事前の安心を届けることにターゲットを置いています」(桑原氏)

東京海上日動火災保険のパーソナライズド動画
自然災害のリスクに対する「備え」に関する情報を配信している
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データを収集しながらPDCAサイクルを回す

滝本 謙一 氏
ピツニーボウズジャパン
株式会社
営業本部
営業部長

 EOVのメリットは、誰が何を、どこまで見たのかなど、顧客の視聴状況や離脱ポイントなどをデータとして取得できることだ。収集したデータを分析して、PDCAを回すことで動画の改善につなげられる。桑原氏は、「スマホアプリや契約者専用サイト、契約更新時の案内などと連動させるなど、さらに活用領域を拡大し、お客様に対して様々な働きかけをしていきたい」と語る。

 提供元であるピツニーボウズジャパンは、東京海上日動火災保険と活発な意見交換を行っている。ユーザーからの知見を基に新たな活用方法を考案し、さらにその次のシナリオへと発展させている最中だ。

 「条件分岐というパーソナライズ、対話性という意味でのインタラクティブ、PDCAサイクルを回すための基本となるデータの提供、アンケート収集による生の声の取得。これらができるソリューションとして自信を持って提供しています。さらにEOVはクラウドでもオンプレミスでも利用できるので、活用の場面も広がります」と、ピツニーボウズの滝本謙一氏は語る。

 非対面のマーケティングチャネルであるWebサイトやダイレクトメールの送信だけでは、効果が測りにくかったり、コンバージョン率が低かったりするといった悩みを多くの企業が抱えている。そこにEOVを活用することで、顧客の反応を収集できるバーチャルセールスマン、バーチャルプレゼンターとして営業職を補完し、非対面でも対面に近い効果を得られると期待されている。

 東京海上は創業約140年、ピツニーボウズは約100年といずれも歴史ある企業だ。「古い会社も最先端のテクノロジーを取り入れて、どんどん変わっていこうとしています。『FinTech』という言葉が、その流れを加速していると感じています」という桑原氏の言葉は、これからの企業が目指す一つの姿を示唆している。

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