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モバイル活用支援フォーラム 2016 Review

社員一人ひとりがスマートフォンを持つ時代--エンタープライズ・モバイルは、「第2 ステージ」に突入した。企業のモバイル導入が定着し、一定の成果を上げ始めているのは、どこも同じだ。さらなる業績アップを目指すための「モバイル活用支援フォーラム 2016」が2016 年5 月18 日に開催された。本フォーラムでは、新たな成果に結び付くタブレット端末/ スマートフォンの活用現場や、ワークスタイル変革を安全に実現するセキュリティや運用管理のノウハウに加え、適材適所の展開を可能にする選定ポイントや業務用アプリケーションなどが紹介された。

基調講演 ■ アイ・ティ・アール
企業システムはモバイルを前提に構築せよ

アイ・ティ・アール
シニア・アナリスト
舘野 真人

 最初に基調講演で登壇したのは、アイ・ティ・アールのシニア・アナリストである舘野真人氏。「エンタープライズ・モバイル市場の現状と企業が直面する課題」をテーマに講演した。

 まず舘野氏は「ユーザーの視点からすると、今後は全ての端末を“モバイル”前提で考える必要がある。それが企業システムにおけるモバイルファーストだ」と提言。続けてスマートデバイスの導入状況のデータから、「導入企業ではスマートデバイスの多台数化が進む」と読み解き、「いずれスマートデバイスが全社で導入されることを想定して管理の仕組みを用意する必要がある」と指摘する。

 これに向けて舘野氏は“スマートデバイス多台数化時代”の管理には3つの重点施策があると語る。その1つが「デバイス管理」。MDM(モバイル端末管理)をベースに、アプリやコンテンツ、セキュリティなどの管理機能を統合したEMM(エンタープライズモバイル管理)へと進展していく。

 2つ目が「モバイルアプリの利用環境の整備」。アプリを積極的に活用したいという企業が多く、中でも自社向けのネイティブアプリを求めるケースが増えているという。3つ目は「ファイル/データの活用環境」で、メールベースでなくファイル共有の仕組みを整える必要があると説く。それも社内向けだけでなく企業間でファイル共有の仕組みを整え、企業間のデータ管理を自社主導で実施することが重要だ

 こうした中、普及が進むWindows 10は「モバイルの特性をデスクトップに拡張したモバイルファースト時代のOSだ」と舘野氏は語る。デスクトップでもモバイルでも同じアプリが動き、スマートデバイスをデスクトップマシンとして使える「Continuum」機能も備える。「Windows 10からMDMに全面対応し、デスクトップもモバイルも統合管理できる基盤が作れる。こうしたインフラを活用して、モバイルファーストでエンドユーザー本位の管理環境を整備することが、今後のエンタープライズモバイルに求められる」と講演を締めくくった。

特別講演 ■ 竹中工務店
推進・支援体制を整え「スマートワーク」を実践

竹中工務店
グループICT推進室
システム企画・整備1グループ長
森 康久

 竹中工務店では2014年から「竹中スマートワーク」を実践している。同社グループICT推進室の森康久氏がこれまでの取り組みと今後の方向性について講演した。「建設業はそれぞれの現場に作業拠点があり、施工管理は現場内を巡回しながらの立ち仕事になる。これがモバイルを使おうとしたきっかけ」と企画当時を振り返る。

 竹中スマートワークの目的は、営業、設計、作業所の職能を中心に、場所を問わずに必要な情報や知識を引き出し、業務生産性を向上させ、顧客満足度と品質向上を生み出すことだ。職能ごとにすぐに業務に活用できるメニューを用意し、利用環境を整えた。

 iPadは2014年4月から9月にかけて全店に導入。同時に約100人の「竹中スマートワーク推進担当者」を選任した。部署ごとに推進担当者を配置し、手近で対面サポートを受けられるようにしたわけだ。利用状況の見える化も進めた。「目標となる目安がないと、推進担当者との間でも話ができない。計測可能な目標値を苦労して作り、共通の尺度としての“利用度”を設定した」(森氏)。これによりフィードバックのサイクルも回り出した。

 竹中スマートワーク3年目の2016年には、iPadを配備された人は、ほぼ100%利用している状態まで活用が進んだ。社員が職能に応じた便利なアプリを見つけて、活用方法を横展開するような自主的な動きも増加しているという。

 竹中スマートワークの今後の方向性として森氏は、3つのポイントを掲げた。1つ目は参照系から編集なども可能な活用系への利用拡大。ファイルサーバーの利用環境の強化を行った。2つ目は、外出時に加えて社内での利用の推進。本支店での無線LANの増強を進め、業務のペーパーレス化や休憩所でのiPadの利用なども促進したい考えだ。

 3つ目は個人の効率化からチームワークの活性化への変化。竹中スマートワークの導入で、ワークスタイル変革の機運が高まっており、そうした動きを今後の竹中工務店の新しい働き方や新しい価値の創造につなげたいという。

特別講演 ■ 日経コミュニケーション編集部
潮目が変わったモバイル活用
二極化が進み積極的な企業の利用は加速、消極的な企業は断念も

 日経コミュニケーションは毎年「企業ネット実態調査」を実施している。2001年の開始以来、スマートフォン、タブレット端末、音声通話、モバイルデータ通信などの動向を定期的に調査してきた。2015年の調査結果から浮かび上がった事実は、法人モバイルの活用が踊り場を迎えているということだ。

 スマートフォンの利用率はその最たるもの。「利用中か予定あり」は依然増加を続ける一方で、「利用しない予定」が増加に転じた。「法人向け料金がこれ以上は下がる余地がないだろうという水準にまで達しています。前向き企業の利用は加速し、様子見だった企業は利用しないという二極化が明確になりました。現在の傾向が続けば、スマホの利用率は7割で頭打ちになるかもしれません」。日経コミュニケーション編集長の加藤雅浩はこう分析する。

 同じ傾向はタブレットでも見られる。タブレットを既に利用しているか、利用予定の企業の割合も減少に転じた。「膨大なページ数のマニュアルを活用していた企業がペーパーレス化を目的にタブレットを導入して、そこから法人利用に火が付きました。しかし、Excelはタブレットよりもノートパソコンの方が使い勝手がよいといった声が出始めており、それが結果に反映されたのかもしれません」(加藤)。

 また、BYOD(私的デバイスの業務利用)も2012年の調査開始以来初めて減少に転じた。対照的に拡大の一途をたどるのがクラウドだ。SaaSの利用率は50%を超え、PaaSやIaaSの利用率も前年を更新している。「モバイル活用の潮目が変わりましたが、モバイル活用と相性がよいクラウドの利用が拡大しています。前向きの企業の利用は加速しています。クラウドと連動した新たな活用法が生まれれば再び勢いづく可能性もあります」。