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クラウドネイティブ時代のバイモーダルIT

クラウドネイティブ実現のカギ握る
既存のテクノロジーや資産の活用

日本オラクル クラウド・テクノロジー事業統括 Fusion Middleware事業本部 シニアマネージャ 伊藤 敬 氏
日本オラクル
クラウド・テクノロジー事業統括
Fusion Middleware事業本部
シニアマネージャ
伊藤 敬 氏

 クラウドで提供される最新テクノロジーの利用を前提にシステムやアプリケーションを構築する「クラウドネイティブ」という考え方に注目が集まっている。しかしその実践となると、口で言うほど容易ではない。特に日本企業では、あくまでも既存のシステムを十分に活用しながら、新しいテクノロジーに取り組んでいくというスタイルが根強く、クラウドネイティブの世界に素直に飛び込んでいけるのはごく少数に過ぎない。「そこで、やや矛盾しているようではありますが、クラウドネイティブの実現には、むしろ既存のテクノロジーや資産をどう活用していくかがカギを握るといえます」と日本オラクルの伊藤敬氏は指摘する。

 この点について、IT分野の調査会社である米国のガートナーは「バイモーダルIT」という考え方を提唱している。端的にいえば、それはIT利用についての新旧2つの領域が密接にかかわり合う今後のシステムのあり方を示したものだ。

 領域の1つ目は、既存のテクノロジーをベースとして、一段と高度な生産性の実現を念頭に置き、性能や可用性のさらなる向上を目指していく領域「モード1」だ。開発手法には、従来型のウォーターフォール型に代表されるリニアなアプローチが主に採用される。そしてもう1つの領域は、収益性やブランド力の向上といった企業の戦略的な取り組みを担う領域「モード2」だ。高い俊敏性が求められ、開発手法としては、通常、アジャイル型による反復的なアプローチを用いる。こうした考え方は、近年、たびたび取りあげられてきた、SoR(System of Record)、SoE(System of Engagement)という概念に照らし合わせてと理解すれば分かりやすいだろう。

Oracle Database Cloud Service for Mode 1 クラウド移行による運用の簡易化と自動化
Oracle Database Cloud Service for Mode 1
クラウド移行による運用の簡易化と自動化
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 「オラクルはそれを、さらにレガシーで変化の少ないSystems of Record、オープンテクノロジーの活用で安定運用を目指すSystems of Differentiation、そして常に変化が求められるSystems of Innovationという3つの領域に再定義し、モード1、モード2をマッピングするというアプローチをとっています。クラウドネイティブといいながらも、純粋にクラウド上の最新テクノロジーだけで、すべての問題を解決できるわけではありません。これがオラクルの考えです」と伊藤氏は説明する。

 オラクルが提供するOracle Cloudは、モード1、モード2の双方の領域に対応し、バイモーダルITの実践に役立つものだ。

モード1、モード2に最適な実行環境を
クラウドで提供

 モード1の領域については、システムのクラウド移行による運用の簡易化と自動化を支援する2つのアプリケーション実行基盤サービスを提供する。その1つがOracle Database Cloud Serviceである。「オンプレミス環境でOracle Databaseをお使いいただいているお客様は多いと思いますが、Oracle Database Cloud Serviceでは、現在使用中のOracle DatabaseをそのままPaaS上でご利用いただけると考えていただければよいと思います」と伊藤氏は紹介する。

 クラウド上での提供によって、プロビジョニングが簡単に行えるようになり、オラクルが四半期に1度リリースするパッチの適用なども自動化するほか、バックアップ・リカバリなどもボタンクリック1つで実施する。Oracle Database Cloud Serviceを活用すれば、ユーザーはデータベースの運用管理にかかわる作業負荷を劇的に削減できる。

 もう1つのアプリケーション実行基盤サービスはJava Cloud Service。同じくこれもユーザーが現在使用中のJavaのアプリケーションを容易に展開することが可能だ。「このサービスでは、オラクルが提供するアプリケーションサーバー、Oracle WebLogic Serverがクラウド上で稼働し、お客様がWebLogic Serverユーザーなら既存アプリケーションをそのまま移行できるほか、他のJava EE準拠のアプリケーションサーバーを使用中のお客様も最小限の修正でプログラムをJava Cloud Service上にデプロイすることで、ほぼそのままお使いいだだけます」と伊藤氏は語る。

Java Cloud Service for Mode 1 実績あるWebLogic Serverをベースにアプリケーション実行基盤を形成
Java Cloud Service for Mode 1
実績あるWebLogic Serverをベースにアプリケーション実行基盤を形成
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 Java Cloud Serviceでは、Oracle Database Cloud ServiceやオラクルのIaaSと連携が可能で、システムの拡張、縮退なども簡単に行える。また、クラスタリングやHAにも対応し、WebLogic Serverで提供しているのと同等の運用管理ツールも用意している。

 「Oracle Cloudをご利用いただくことで、お客様はハードウエアの調達やOS、ミドルウエアのセットアップといった作業、日々の運用管理業務からも解放されるほか、ライセンスコストの面でも多大なメリットを享受できます。モード1型のシステム構築にはオンプレミスで実績のある製品をそのまま使える環境の検討をおすすめします」と伊藤氏は強調する。

 他方、モード2の領域について、オラクルはコンテナ型のクラウドアプリケーション実行基盤となるApplication Container Cloud Serviceを提供し、軽量でステートレスなアプリケーションの実行をサポートしている。開発言語として、Javaはもちろん、Node.jsなどJavaScriptにも対応する。「近いうちにPHPやRubyといった言語も加わる予定で、様々な言語を使ってDockerコンテナ上でアプリケーションを実行させることができるようになります。コンテナ型なので、システムをスケールアウトしていくことが容易で、データベースやストレージ、あるいはロードバランサやAPIマネジメントツールなどとの連携性も確保されています」と伊藤氏は説明する。

 オラクルは、こうしたDockerベースのクラウドアプリケーション実行環境を一段と拡張し、APIカタログやAPIプラットフォームを含むビルディングブロックなどの道具立てをそろえ、マイクロサービスの基盤として整備していくという構想を描いている。

DevOps実践を支えるチーム開発を
クラウドで支援

 モード1、モード2に対応したアプリケーション実行基盤を提供する一方、オラクルは企業のバイモーダルITの実践を開発環境の面からも強力に支援している。具体的には、Java Cloud Service、Application Container Cloud Serviceという、モード1、モード2に対応した双方のクラウドサービスに無償でバンドルする形でOracle Developer Cloud Serviceを提供している。

 「Developer Cloud Serviceでは、Java EEやサーバーサイドJavaScript、モバイル、HTML5など、様々なアプリケーションタイプに対応した開発環境をクラウドで提供しています。特にクラウドネイティブな開発に不可欠なDevOpsの実践を想定した構成となっている点が大きな特徴です」と伊藤氏は紹介する。

 具体的には、設計から開発、単体テスト、デプロイ、Webテストといったフェーズを網羅する形で、各種アプリケーションをチーム開発するためのツール群を提供している。単一の画面からツールを利用し、開発を進めていけるようになっているほか、DevOpsの実践をサポートするGitやAnt、Maven、Gradle、そしてHudsonといったオープンソースベースの様々な開発ツール群もあらかじめクラウド上に実装している。開発チームは、クラウド上に用意してあるツールを活用しながら、継続的インテグレーション(CI)、継続的デリバリ(CD)を含む、DevOpsの開発ライフサイクルをスムーズに回していくことができる。

 「本日紹介したクラウドサービスを30日間ご利用いただける無料トライアルも用意しています。実際に使用し、ぜひそのメリットを体感いただければと思います」。伊藤氏はこう語って講演を終えた。

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