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IoT時代はソフトウエアこそが主役

製品の差別化要因は
「デバイス」から「ソフトウエア」に移行

Gemalto ソフトウェアマネタイゼーション事業本部シニアプリセールスコンサルタント 前田 利幸 氏
Gemalto
ソフトウェアマネタイゼーション事業本部
シニアプリセールスコンサルタント
前田 利幸 氏

 「製造業とソフトウエアの世界に大きな隔たりがあるという概念はもはや通用しない。今の時代、すべてはソフトウエアだ」――。講演冒頭、Gemalto(ジェムアルト)の前田利幸氏は世界最大のエレクトロニクスメーカーである米ゼネラル・エレクトリックのCEOであるジェフリー・イメルトの発言を引用し、大きく変革するソフトウエアビジネスの現状を強調した。

 なぜこうした変化が起きているのか。その理由にIoTの進展を挙げる。個別の機器がつながることで価値を発揮するIoTだが、それにより製品の差別化要因はデバイスそのものではなく組み込まれたソフトウエアに移っている。「IoTで成功を収めるには、ソフトウエアビジネスによる収益化を考慮しなければならない」と前田氏は指摘する。

 開発したソフトウエアでいかに儲けを産み出すか? そのソフトウエア収益化ソリューションのリーディングカンパニーとして、世界市場で高いシェアを獲得しているGemalto。同社のこれまでの実績と経験を踏まえ、前田氏はソフトウエアビジネスの収益化のポイントとして、
(1)ソフトウエアの知的資産と利益を守る「セキュリティとプロテクション」
(2)ソフトウエアの機能を制御する「ライセンシングと利用状況の追跡」
(3)ライセンシングに関わるオペレーションを管理して運用コストを下げる「エンタイトルメント管理」
――という3つを挙げた。

 同社では、これらを実現するプロダクトとして「Gemalto Sentinel」ファミリーを提供。ソフトウエアのプロテクション、ハードウエアとソフトウエアでのライセンシングとエンタイトルメント管理などを実現する4製品を「ソフトウエア収益化ソリューション」の中核に位置付けている。

カギをにぎる
「機能別ライセンシング」

 続いて語られたのは、IoTの収益機会には4つのモデルが存在するという分析だ。段階を踏んだ「デバイス」「サービス」「データ」「エコシステム」の収益モデルがあり、企業はビジネスニーズと顧客関係のタイプに合わせ、適切なモデルを選択できるという。前田氏は、それぞれの収益化モデルのゴールも次のように提示した。

●デバイスの収益化:製品の収益を向上させ、顧客レンジを広げる。同時にコストを削減し合理化を進める。
●サービスの収益化:販売製品から繰り返し収益源を生み出す。
●データの収益化:収集したデータから繰り返し発生する収益源を生み出す。
●エコシステムの収益化:繰り返し収益源を生み出すプラットフォームを構築する。

 これらのゴールに到達するためにも「ソフトウエア収益化ソリューション」が有効に使えるという。まず前田氏は、基本となる「デバイス収益化」モデルでのアプローチを説明。その中で、最も強調されていたのが「機能別ライセンシング」の実現だ。これは、製品のソフトウエアを機能別に分け、プロテクトを行ってライセンス管理の対象とするもの。販売時にはエンドユーザーが利用したい機能にのみライセンスを付与して出荷する。ユーザーは有効化した機能の分だけ代金を支払うという仕組みだ(図1)。

図1●顧客レンジにフィットしたライセンス提供
図1●顧客レンジにフィットしたライセンス提供
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「機能別ライセンシングは、各顧客セグメントに対して価格と機能の適切な提案を可能にします。例えば、ハイエンドの顧客には機能豊富な単価の高い製品を。逆にエントリーレンジの顧客には値引きをすることなくアプローチが可能になります。これまで価格が高くて購入できなかった顧客層にも、特別な廉価盤を開発することなく新たな顧客層の獲得が期待できます。つまり顧客レンジの拡大、アップセルが実現するのです」(前田氏)

 もちろん「機能別ライセンシング」の活用は、ハードウエアでも有効だ。複数製品に対応できるハードウエアを量産し、それぞれアプリケーションをライセンシング管理すれば、共通のハードウエアでありながら複数の製品を量産できる。「コスト削減やサプライチェーンの合理化も進められる」という(図2)。

図2●共通のハードウエアで複数種類の製品を量産
図2●共通のハードウエアで複数種類の製品を量産
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 さらに、前田氏が強調したのはセキュリティの観点である。「ソフトウエアの収益化を目指す上で、IPプロテクションは切り離して考えることはできない」と強調する。「リバースエンジニアリング対策」「アンチデバッキング/デバイス不正使用防止」「確実なコピープロテクション」を必須のセキュリティとし、ソフトウエア収益化ソリューションではこれらの対策もプロテクションツールにより強固に行われることに言及した。

“永久ライセンス”から
“サブスクリプション” への転換

 次に言及されたのは「サービスの収益化」に関するアプローチである。製品がインターネットに接続すると「デバイス」から「サービス」への展開に進んでいく。この際、収益化に進めるかどうかは「柔軟なライセンスモデルの構築」にかかってくるという。

 「機能別ライセンシングを用いてソフトウエアの機能とライセンスモデルを柔軟に組み合わせることができれば、永久ライセンスからサブスクリプションへと料金体系を移行することが可能になります。ここにインターネット接続によるライセンスのオンライン配信、ESD(Electric software Delivery)によるソフトウエアのアップデートも加えられるため、販売した製品から繰り返し収益を得るビジネスモデルを確立できる」と前田氏は指摘する。

 すでに米国大手ネットワーク機器ベンダーでは、Gemaltoの収益化ソリューションにより、ハード提供型からサービス収益化モデルへ転換を図った例として知られている。同社はネットワーク機器を同じハードウエアにしておいて、搭載するソフトウエアのライセンシングによって個別の製品を作り出している。上位のライセンスを購入することにより、オンデマンドで機能を追加したり、ハードウエアはそのままで処理能力のアップを図るサービスを展開している。

 さらに「データ収益化」モデルにおけるソリューション展開としては、「クラウドベースのライセンシングとUsage Trackingの組み合わせで、収遠隔でのライセンシングとソフトウエアの利用状況収集を可能にする」という。

 これにより、機能ごとの利用時間や利用回数で課金をするような「従量課金」が実現する。すでにグローバル企業の大手通信機器メーカーでは、通信機器デバイスアプリケーションをライセンシングしクラウドで管理、使用料に応じた従量課金を行う事例もあるという。このほか、リアルタイムに収集したデータからはニーズやトレンド予測などさまざまな分析が行えるほか、パーソナライゼーションしたサービス提供にも役立つ。

成功するソフトウエアビジネス
6つの要因

 最後に紹介されたのが「エコシステムの収益化」に関するアプローチだ。これは、これまで提示したライセンシングとエンタイトルメント管理の集大成ともいえるプラットフォームを構築する。ソフトウエア収益化ソリューションで構築したプラットフォームを真ん中に、片側にはライセンシングができる様々なデバイスや環境が並び、もう一方にエコシステムのプレーヤーが並ぶイメージだ。

 例えば、ソフトウェアのオンライン配信を実現するESD(Electronic Software Delivery) 、ソフトウェアのオンライン販売やオンライン決済を実現するプラットフォーム事業者などが、エコシステムのプレイヤーとなる。

 CRM(顧客関係管理)やERP(統合基幹業務システム)といった企業の基幹システムが、エンタイトルメント管理システムと連携して業務の完全自動化を図り、ソフトウェアのオンライン販売、配信、決済までがエコシステムで自動化することによって、顧客満足度を向上させ、さらなる収益を得られる仕組みが構築できる。

 さらに、新たなエコシステムのプレイヤーとして、外部のIoT事業者や大量のデータを必要する事業者に対して、収集データを活用できるサービスが提供できれば、デバイスとエコシステムのプレイヤーの両方から持続可能な収益源を得られる仕組みも実現可能になるだろう。

 今や多くの企業が模索しているIoTの活用。4つに分類された収益化の機会では、そのどれも成功へのカギを握るのはソフトウエアであった。前田氏は最後に6つのキーワードを提示。「収益源の多様化」「将来的ニーズを予測」「最適化されたサプライチェーン」「革新的なプライシング」「高い顧客満足度」「自動化されたバックオフィス」を挙げると「これこそがIoT時代における収益化に成功したソフトウエアビジネスの姿」とし講演を締めくくった。

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