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本格化するクラウドとビッグデータの時代 データセンターにも変革が求められている

クラウドの時代を迎えた今、ハウジング(コロケーション)とホスティング(レンタルサーバー)が主だった商用データセンターのビジネスモデルも、様変わりしつつある。次世代データセンターには何が求められているのか、現状どこまで実現できているのか──。ITpro Expo 2016で特定非営利活動法人日本データセンター協会(JDCC)が開催した「次世代データセンター研究サミット」では、データセンターに関わる各社が講演とパネルディスカッションで、その思いを熱く語った。

「サーバー切り売り」から
データハンドリングへ

IDCフロンティア 代表取締役社長 石田誠司氏
IDCフロンティア 代表取締役社長 石田誠司氏

「データセンター──。ようやくこの時代が来たなという思いを強くしています」

 IDCフロンティアの石田誠司氏(代表取締役社長)は、基調講演をこの言葉から始めた。場所やサーバーの切り売りから脱して、データをハンドリングするビジネスモデルが成り立つようになった、というのだ。

 そうした変革をもたらすキーワードとして石田氏が挙げたのは、IoT、ビッグデータ、GPU、深層学習(DL)、機械学習(ML)、人工知能(AI)など。ネット系企業と一般企業では取り組みに多少の違いはあるものの、ITインフラはそうしたパラダイムシフトを加速させる存在になるべきだと指摘した。

 そうしたニーズによって、商用データセンターにはどのようなことが起きているのか──。石田氏によれば、GPU利用者の増加によってラック当たり40kW以上の給電が求められる一方で、外気冷却方式などによってPUEは1.2前後が当たり前になっているとのこと。2000年代以前に建てられた第1世代のデータセンターの大規模更改や移設も盛んで、着工から竣工までの工期は半年から1年程度。また、大規模コロケーションの主役はクラウドサービス事業者になり、かつては代替サイトと考えられていた地方データセンターがメインサイト化する動きも顕著だという。

データセンターの重要性に注目が集まる
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 たとえば、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター(HGC)の斉藤あゆむ氏は、水蒸発式間接外気冷却装置によって年間平均でPUE 1.13を達成したと報告。岡山県のデータセンター、チロロネットの安藤究真氏は、外気と地下水を併用して年間平均のPUEを1.2以下に抑えているという。また、既設のサーバーや部屋を“後付け”で冷やすための装置として、NECの伊藤正也氏は同社の相変化冷却ユニットを紹介した。

 このような現状認識に立って、石田氏はこれからのデータセンターに求められることとして、以下の5つを列挙した。

「データセンターはIT社会の重要インフラです」と述べた上で、「冷やすから、熱くならない・しないへ」「データドリブンデータセンターへのチャレンジ」「匠問題を業界全体で」に取り組むべきだと提言した。

大規模を安く早く建設し
高発熱サーバー対応に注力

ヤフー システム統括本部長/サイトオペレーション本部長 高澤信宏氏
ヤフー システム統括本部サイトオペレーション本部長 高澤信宏氏

 パネルディスカッションを聞く限り、このような思いは、商用データセンター事業者と利用者の双方に共通している。事業者側からのパネラーは、IDCフロンティアの山中敦氏(社長室長)とさくらインターネットの田中邦裕氏(代表取締役社長)/澤村徹氏(フェロー)の各氏。利用者側パネラーはYahoo! JAPANを運営するヤフーの高澤信宏氏(システム統括本部サイトオペレーション本部長)、モデレーターはJDCCのグローバルアライアンスワーキンググルーブ・リーダーの泓宏優氏(NECフィールディング・ソリューション事業部長)である。

さくらインターネット 代表取締役社長 田中邦裕氏
さくらインターネット 代表取締役社長 田中邦裕氏

 まずデータセンターの立地とライフサイクルについて、ヤフーの高澤氏は「建物のライフサイクルは10年から15年が目安。豪華でなくてよいので、短期に建て替えできるものを望みます」と発言。さくらインターネットの田中氏も「主役は建物ではなくサーバー。大きなものを安く建てられれば十分です」と応えた。IDCフロンティアの山中氏によれば、同社の基本戦略は「広い敷地内でライフサイクルに従い棟を建て替える」ことだという。

IDCフロンティア 社長室長 山中敦氏
IDCフロンティア 社長室長 山中敦氏

 用地については、いろいろな考え方があるようだ。ヤフーの高澤氏が「電気を大量に消費するHadoop用サーバーは、現在、電気料金の安いアメリカに置いてます」と明かしたのに対し、さくらインターネットの田中氏は「弊社の石狩データセンターは、土地も電気もまだまだ余裕があります」とアピール。IDCフロンティアの山中氏も「弊社は国内設置が基本方針。地震や大規模電力事故に備えて東日本と西日本に分散設置し、都市部に高速なネットワーク拠点を設けています」と言う。

さくらインターネット フェロー 澤村徹氏
さくらインターネット フェロー 澤村徹氏

 Hadoopに代表されるハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)高速処理基盤を用意する動きも見えてきた。「石狩データセンターでは60kVA/ラックにも、一部で対応予定です」と、さくらインターネットの澤村氏。ビッグデータ、IoT、深層学習や機械学習などのAIをビジネスで活用しようと考える企業の増加により、HPC市場が急速拡大する読みがある。技術的にはGPU搭載サーバーを多数並べれば済むが、企業のオンプレミス設備では、GPUが消費する大量の電力は供給できない。そこで商用データセンターのGPU対応に期待が寄せられているわけだ。

人材育成と働き方改革が
現在の経営課題

 ITインフラ投資とは別に、運用を支える人材の育成も、商用データセンターにとっての重要経営課題となっている。

「データセンターで唯一陳腐化しないのが、運用ノウハウ。確立したところが勝つ」というのが、さくらインターネットの澤村氏の考え。IDCフロンティアの山中氏も「弊社にとって運用は肝。エンジニアがエンジニアリングを核にビジネス活動できる環境を、会社が作るべきです」と言う。

 人材育成の課題について、JDCCは、人材マネジメントワーキンググループで検討を進めている。さくらインターネットの澤村氏によれば、「ITスキル標準(ITSS)とITILがベースですが、将来的にはi コンピテンシ ディクショナリ(iCD)に対応させます」とのこと。背景には、ニーズ多様化や異業種参入といった時代の流れがあるという。

日本データセンター協会 (JDCC) グローバルアライアンスワーキンググルーブ・リーダー/NECフィールディング ソリューション事業部長 泓宏優氏
日本データセンター協会 (JDCC) グローバルアライアンスワーキンググルーブ・リーダー/NECフィールディング ソリューション事業部長 泓宏優氏

 働き方改革やワークライフバランスを目指す観点からは、データセンターにおける労働環境改善も求められる。「運用管理担当者に請負や派遣が多い業界体質を、改めるべき」と、さくらインターネットの田中氏。同社では直接雇用を増やし、シフト勤務ばかりにならない勤務体制を組んでいる。

 このようにいろいろと課題はあるものの、「日本のITを支えるインフラ事業者として、データセンターは売上拡大を目指さなければならない」というのが、各社の共通認識「。データセンター業界は競争と協創を進める必要があります」と、さくらインターネットの田中氏は力説する。

 JDCCの泓氏は「企業がデータをうまく使ってビジネスを広げてもらうためのプラットフォームこそ、これからのデータセンターの役割でしょう」と、ディスカッションを総括。「競争と協創を通じてデータセンターの売り上げを増やし、日本を元気にしていきたい」と締めくくった。

お問い合わせ
  • 特定非営利活動法人日本データセンター協会(JDCC)

    TEL:03-6705-6149

    URL:http://www.jdcc.or.jp/

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