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ITpro EXPO2016 基調講演

クラウド、モバイル、ソーシャル、ビッグデータ、IoT(モノのインターネット)といった、最新のITを活用してビジネスを変革・創造する動きが本格化してきた。デジタルシフトにより、業種や事業の壁を越えて新しいライバル企業が突然参入するなど、今後は市場競争もより激しくなる。この大潮流をリアルに伝えるべく、日経BP社は2016年10月19日から21日にかけてITpro EXPO 2016をCloud Days 2016、ビッグデータEXPO 2016、セキュリティ &ガバナンス 2016、モバイル&ウエアラブル 2016、IoT Japan 2016、FACTORY 2016、デジタルヘルスDAYSと同時開催した。展示会場では最新のITソリューションを披露するとともに、セミナー会場ではユーザー企 業やIT企業のリーダーたちがITを活用したビジネス革新の最新の成果を紹介した。来場者は3日間で延べ7万人に迫った。

会期 ● 2016年10月19日〜10月21日 会場 ● 東京ビッグサイト(東京都江東区)

基調講演 1日目
トヨタ、セコムが描くデジタルビジネスの未来
IoTによってデータ収集や分析の精度向上を加速

トヨタ自動車 未来創生センター 統括 Mid-size Vehicle Company 常務理事/磯部 利行氏

 最初の講演はトヨタ自動車の磯部利行氏による「トヨタ自動車が考える『IoT工場』の将来」。トヨタ生産方式の基本は、問題を顕在化・見える化する「自働化」と、必要なものを必要なときに必要な量だけ造る「ジャスト・イン・タイム」の2つ。「『ものづくりは人づくり』の言葉通り、従業員が絶え間なく改善に参画し、育っていくことが大切です」(磯部氏)。生産(ニーズ)の多様化でムダの見極めが難しくなり、同時にやらなければならない改善が増えているが、IoTによって従来と同様に改善に取り組める。

 一例を挙げれば、鋼板のプレス加工。人が近寄れない危険な場所、人が測定できないデータを収集するためにIoTを活用し、センサーを使って不良品が発生しそうな鋼板を見つけ加工する前に取り除いたり、不良品発生の原因を分析したりしている。

センサー6000万が情報収集
2万人の力を1000倍に向上

セコム 常務執行役員 IS研究所 所長/小松崎常夫氏

 次の講演は、セコムの小松崎常夫氏による「セコムの未来戦略〜先端技術をフル活用するサービスイノベーションとは」。セコムの主力事業の1つ、セキュリティサービスの契約件数は200万件に及び、6000万のセンサーが常時情報を収集し、約2万人の従業員が携わる。もし200万件の警備を人手に頼ると2000万人が必要で、ITによって2万人の力を1000倍に高めた計算だ。「工場の生産性向上と同じ熱意で、介護や警備の現場を改善しています」(小松崎氏)。

 セコムは車やドローン、航空機などによる空間情報の収集も推進する。「IoTの役割は小さな変化を適確に捉えること。データの信頼性を高めるには、詳細な空間情報が欠かせません」(小松崎氏)。

基調講演 2日目
Tカードの情報から「顧客DNA」を明らかに
「買いそうな人を知りたい」との需要にも

CCCマーケティング 企画本部 データベースマーケティング研究所 所長/毛谷村剛太郎氏

 「Tカードの情報を使って構築した顧客DNAがあれば、メーカーの社内データベースだけでは把握できないことが分かります」。CCCマーケティングの毛谷村剛太郎氏はこう話す。TSUTAYAのレンタル会員証としてスタートしたTカードは、ポイントカードやクレジットカード、電子マネーなどの機能を追加し、現在、Tカード1枚で様々な用途に使える。20代の8割近くが所有しており、利用できる店舗は158社、56万店舗に及ぶ。1年に1回以上利用したユニークユーザーは6050万人に上り、月に1回なら4330万人に達する。Tカードの登録情報とPOS(販売時点情報管理)情報によって「顧客DNA」と呼ぶプロファイリングを行う。

属性や志向性が似通る商品同士で
コラボレーションを図ることも

 顧客DNAは、顧客を知るという目的に合致したGA(汎用属性)データベースの情報を使って明らかにする。消費者の「性別」「年齢」「住所」といった基本属性と、「いつ」「どの店で」「何を」というTポイント提携先での購買履歴などの様々な情報をデータ分析している。151種類の属性項目と136種類の志向性項目を導き出し、値を波形グラフ化してプロファイリングデータとして活用している。波形を比較することで、属性や志向性が似通っている商品同士でコラボレーションを図るといった施策を講じることができる。

 今後、未来を予測するPP(購買ポテンシャル)データベースに発展させ、「自社製品を買いそうな人を知りたい」という需要に応える計画。現在暫定運用中で、2017年4月に正式に運用する予定を立てる。将来は、離反しそうな顧客を予測するといった使い方もできるようにする。

基調講演 3日目
クラウド活用に積極的な3社が語る
最新活用法とフルに使いこなす勘所

コーセー 情報統括部 部長/小椋敦子氏

 クラウドサービスを積極活用する企業が増えている。iPadによる店頭支援システムをきっかけにクラウドサービスの利用を始めた化粧品大手のコーセーもその1社。小椋敦子氏は「クラウドの特徴は新しい機能やサービスが短期間で登場することです」と話す。そのため、インソースの人材だけでは使いこなしが難しく、クラウドに強い社外のエンジニアのサポートを受けている。

スマイルズ 経営企画本部 情報システム部 副部長/佐藤 一 氏

 情報システムの保守終了に伴い、データ活用のための基盤システムをMicrosoft Azure上に構築したスマイルズはレストランやアパレルなどを手掛ける。佐藤一志氏は「新しい技術を使ってアプリケーションをつくろうとすると、開発環境を整備するうえでクラウドを使うしかありませんでした。エンドユーザーにプロトタイプを見せフィードバックが得やすいなどの理由から、AzureでVisual Studioを使いました」と振り返る。

クラウドの最大の魅力は
試して見極められる

IDOM ITチーム/月島 学氏

 自動車販売などを手掛け、アジアを中心にグローバル展開を進めるIDOM(旧ガリバーインターナショナル)はGoogle Appsを導入し、サイジング(容量設計)の負担が掛からないことからパブリッククラウドの利用を拡大し、現在ではAWSを中心に業務システムの9割ほどをクラウドに置く。月島学氏は「iPadを使った業務システムの構築で、プロジェクトをやめる場合も簡単というフットワークの軽さを重視してクラウドを利用しました。試して見極められるのがクラウドの魅力です」と評価する。