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インバウンド・ジャパン2017 総論

海の環境再生に取り組む姿勢を示す

 今年5月、ユネスコ諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)は次のような勧告をした。日本が推薦していた8つの構成資産のうち、沖ノ島と周辺3 岩礁の4資産のみを世界遺産の登録対象とし、宗像大社辺津宮などその他の4資産は除外する--というのだ。これに対して葦津氏らは外務省とともに逆転シナリオを練り、宗像の歴史や文化を示すキーワードとして「S(Spiritual=霊性)、A(Animism=精霊信仰)、E(Ecology=生態学)」を抽出。世界遺産委員会を構成する21カ国の大使らに働きかけた。

 結果的に宗像が環境問題や子どもの教育に熱心に取り組んできたことも評価され、逆転で一括登録に。葦津氏は「世界遺産はハコモノが中心になりがち。その中で神道の連続性は自然循環そのものという訴えが通じるかどうか不安でしたが、結果的にアフリカの人々などに理解してもらえました」と振り返る。

 葦津氏はアインシュタインが日本に対して残した言葉、「生活の芸術化、個人に必要な謙虚さと質素さ、日本人の純粋で静かな心、それらのすべてを純粋に保って、忘れずにいてほしい」を紹介。「宗像はこういう部分を大事にしながら今後、環境問題への取り組みと観光振興との融合を模索していきます」としめくくった。

地域資源をテクノロジーで掘り起こす

 インバウンド市場を地方創生として呼び込むための企画会議という体裁で、「2020 年東京オリンピック・パラリンピックを活用した地域活性化推進首長連合」による特別セミナーとして、「自治体の悩みを解決! 全国自治体企画会議」と題したパネルディスカッションが行われた。パネリストはこれまで地域活性化で実績のある三条市長の國定勇人氏(同連合の会長)と高野町長の平野嘉巳氏。ITを使ったシェアリングエコノミーの旗手ともいえるAirbnb Japan 公共政策担当部長の山本美香氏とUberJapan 執行役員社長で元気ジャパン代表理事の高橋正己氏。そして地方創生のプロモーションで実績のあるXPJP 代表取締役社長の渡邉賢一氏である。モデレータは日経BP 総研 社会インフラ研究所長の安達功が務めた。

 國定氏は新潟県燕市・三条市の地場産業である金属加工、木工加工、漆塗装などのものづくりをアピールするイベント「燕三条 工場の祭典」を立ち上げた経緯について話した。ものづくりの街という匂いがしない、ものを見せただけでは価値を伝えられない、という反省から「ものづくりの現場を開放し、高品質の裏側である工場を一般の人に見せて、ストーリーを分かってもらうようにしました」と語る。今では3万5000人以上が参加するイベントとなったという。

 平野氏は和歌山県の高野山について「弘法大師が拓いた聖地で、仏教のテーマパークになっています」と観光資源に自信を示す。ただ約3000人の住民が年間40万人の観光客を受け入れるには数々の努力があり、狭い盆地に自動車が入れないようにする整備、Wi-Fiや公衆トイレの設置、多言語表記やピクトグラムの工夫、パンフレットやYouTube、スマホアプリによる情報提供--などが奏功した。スムーズに成功したように見えるが、苦労したことは? という質問に「自分たちの魅力に気付くこと」と意外な答えが返ってきた。

 山本氏は空いた部屋を旅行者に提供するサービスAirbnbについて「『民泊で安く泊まる』と思われていますが、利用者はユニークな旅、ユニークな体験を求めて利用しているのです」と根本的な誤解を解く。子どもが外国人と接したり、一緒に買い物に行ったりしてもてなすことが、日本を体験することにつながるという。山本氏が「マッチングビジネスについてお年寄りに説明する難しさ」を述べると、パネリストから地域の困りごとを共有するため、地域に入っていく必要があるとアドバイスが飛び出した。

 高橋氏は配車マッチングサービスのUberについて、「利用者も運転手もその地域の人が支えていて、地元の経済効果は高い」と京丹後市の「ささえ合い交通」や中頓別町のライドシェアを紹介した。「タクシー会社の雇用を奪うことになるのではないか?」との問いかけに「両者は単純に競合するものではありません。相互に補完できます」とインドネシアやミャンマーの例を引きながら、どちらも儲かる仕組みに言及した。

 渡邉氏はXPJPで行った福島県のPRビデオの制作の事例を紹介しながら、海外目線で日本を再編集する大切さを説いた。映像制作には「iPhoneだけでも作れます。伝える・届けるに関してスタイリッシュさが大切で、そのための人材育成が必要です」と述べた。