日経アーキテクチュア Special

登録文化財の内外装を改修 その勘所とは?

文化財塗料――。屋内外で用いられる「キシラデコールシリーズ」の製品群は、民家の再生に長年取り組む建築設計者にそう認識されている。2015年8月、大阪府大東市内で初めて文化財として登録された個人住宅の内外装にも用いられた。改修設計を担当した匠工房代表取締役の島田廣己氏に、再生に向けた考え方をお聞きした。

玄関から和室に至る北半分の非日常空間は復原を基本に改修。手前の玄関・土間に面する和室を「広敷(ひろしき)」と呼ばれる板の間に、さらに右手の格子や片引き大戸を復原した(写真提供/匠工房)

 元は1834年に建てられた庄屋の住宅である。それと似た外観と間取りを持つ民家の再生を島田氏が手掛けたことを書籍で知り、所有者から連絡を受けたという。

 近世末期の庄屋階層の民家として価値が認められ、文化財登録を視野に入れていた。「しかし、屋根をふき替える必要があったため、外観を大きく改変せざるを得ない。再生後の登録を目指しました」。島田氏は経緯を振り返る。

ダイニング。ここからリビングや寝室につながる日常生活空間を快適に住み続けられるように改修した。木部の仕上げには屋内木部用ステイン「キシラデコールインテリアファイン」のパリサンダなどを用いる
北東側の外観。屋根がふき替えられた正面の建物が主屋。右手は玄関に向かう長屋門。奥にそびえるクスノキは大東市の指定保護樹木

文化財に利用される塗料
性能面での安心感を評価

玄関・土間。左手は、復原した大戸を開け放ったところ。右奥は、応接間として用いていた部屋を土間に戻し、全体の調和を考えながら現代的なデザインを取り入れた

 登録文化財の場合、外観を大きく改変することは許されないが、内部は目的に合わせて改変できる。再生後は所有者家族が住み続ける予定のため、「玄関から続く北半分の非日常空間は建築当時の姿に戻す復原を基本に据えましたが、食事室や水回りを置く南半分の日常生活空間は住み心地の確保を優先しました」(島田氏)。

 現地調査に入ると、湿地帯という土地柄もあって、柱は梁の高さまでシロアリの食害がみられた。家屋を持ち上げ、土壌処理を施したうえでベタ基礎を築造し、柱や梁を取り替えたり根継ぎしたりするなど、躯体の再生を進めた。

 施工を担当したのは、ほかの民家再生工事と同じく、社寺建築を手掛ける工事会社。「伝統工法による造り方が分からないと、直し方も分かりません」(島田氏)。

 木部の仕上げには、屋内外で用いられる「キシラデコールシリーズ」の製品群を用いた。島田氏は「文化財によく利用されるため、性能面での安心感がありました」と評価する。

匠工房
代表取締役
島田 廣己 氏
滋賀県米原市内、中山道柏原宿の近くに約30年前に事務所を開設。地域に伝統工法の家屋が多いという土地柄もあり、木造を中心に個人住宅などの建築設計を手掛ける。約20年前からは、民家の再生にも取り組む

民家への敬意から仕上げ見直し
部材の新旧はそのまま表現

 再生した柱や梁、復原した建具には、屋内木部用ステイン「キシラデコールインテリアファイン」を用いた。この塗料は、作業性、着色性、耐光性に優れ、豊富な試験データに裏付けられた高い安全性を持つもの。屋外木部用の「キシラデコール」と同系色をそろえるため、内外を同じ色調で仕上げることもできる。

 既存の古材はもともと真っ黒に近い色。まず水拭きをして表面の汚れを除去したうえで、屋内木部用ステイン「キシラデコールインテリアファイン」のパリサンダなどを調合し濃い目の色をつくり、表面のキズなどを隠す狙いで塗装した。そこにさらに、重ね塗りを施している。

 木部の仕上げでは既存の古材と新しく加えた部材をはっきり区別する。民家の再生を手掛け始めた当初3、4年は、新しい部材も古材に近い色で仕上げていた。しかし、その後は考え方を改め、新しい部材は汚れ防止を目的に表面を美装・保護する塗料で仕上げるにとどめている。

 「民家への敬意です。わずか2回塗ったくらいで、100年、200年、と年月を重ねた色を表現しようというのは失礼と考えるようになりました。それに、部材の新旧をそのまま表現したほうが、民家の構造を理解しやすい」(島田氏)。

 現況調査開始から3年近くで工事は完了。約1年後の2015年8月に文化財登録された。「旧家の雰囲気を保ちながら、住み心地の確保を優先した日常生活空間と、復原を基本に据えた非日常空間のゾーンを、古材がうまくつないでくれています」。島田氏は仕上がりに満足そうだ。

御領の家
御領の家
所在地/大阪府大東市御領
敷地面積/766.63㎡
延べ床面積/283.28㎡
構造・階数/木造・平屋建て
工事期間/2012年3月~13年5月
南側の外観。木部の仕上げには屋外木部用高性能木材保護塗料「キシラデコール」を用いた。所有者は左手の中庭を挟んだ向かい側に離れを建て、そこに移り住んだうえで主屋側の改修工事を進めた
木材保護のトータルソリューションパートナー 大阪ガスケミカル株式会社

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