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製造業の競争力強化の為の3つの要件とは?

V字型の開発プロセスの短縮化に向けた「継続的検証」

Continuous Engineeringを実現するための2つめの具体的な要件は「継続的検証」である。継続的検証とは、製品の検証を繰り返し行うことで、品質の確保と開発効率の向上を目指す開発手法のことだ。現状の製品開発プロセスにはどのような課題があり、継続的検証によってどんなメリットがもたらされるのだろうか。その実現方法も含めて話を聞いた。

モデリングによって相互理解を促し、シミュレーション手法を導入する

 「今の製品開発には3つの課題があります。(1)製品要求の分析や設計をどう効率化するのか、(2)試作機ができるよりもっと早い時期にハードとソフトの統合時の不具合を確認できないか、そして(3)要求や設計に対してどう抜け漏れのないテストを実施して修正していくのか、という点です」と日本IBMの徳島洋氏は語る。

 3つの課題を解決して「継続的検証」が確立されれば、要求定義から設計、製造、テストといったV字型の開発プロセスのサイクルが短縮され、コスト削減と開発のスピードアップに貢献できるという。徳島氏は、これらの課題を解決するのが「モデリングと仮想化、トレーサビリティー」の3つの技術だと指摘する。3つの技術を駆使することによって継続的検証が実現され、上流工程で品質を確保し、下流での問題発生を抑え、開発工程全体を短縮できる(図4)。

 1つめの課題である製品要求の分析や設計の効率化に有効なのが最初のモデリングだ。物事を抽象化したモデルで表現することで、適切な抽象度で要求や設計を理解できる。「モデルで得た理解をメンバー間、組織間で共有すれば、正しい合意を形成することができ、仕様の検討も、モデルという同じ土俵上で行うことができます」と徳島氏は指摘する。文章で要求や設計を正確に伝えるのは難しいが、モデルを活用すれば理解も早く、設計の効率化を図ることができる。

 システムのモデリングに活用されているのが、SysML(The Systems Modeling Language)という記述言語だ。グラフィカルな記述で抽象化したシステムのモデルを生成することができ、理解がしやすい。現在では、SysMLによるシステムのモデル以外にも、制御モデル、制御対象(プラント)モデルなど、さまざまな分野に同様のモデリング手法が導入され、効果を上げつつある。

 「しかも、作成されたモデルは単なる設計図ではなく、シミュレーション機能も持っています。これにより、製造に入る前に設計内容を仮想的に検証し、品質を確保することができるようになります」と徳島氏はモデリング手法の用途が広がっていることを説く。このシミュレーション機能によって、モノを作らなくてもある程度の検証を行うことができ、設計と検証を素早く繰り返すことができる。

 ソフトウェアだけでなく適用範囲が広がりつつあるモデリングは、今後も進化が期待できる分野だ。徳島氏は「次の課題は、ベンダーやユーザーによってバラバラになっている複数の分野をどう統合していくか、ということです」と語る。

図4:継続的検証とは
図4:継続的検証とは
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図5:製品要求の分析や設計を効率化するにはどうすればよいか
図5:製品要求の分析や設計を効率化するにはどうすればよいか
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モデルを仮想的に統合し、動作検証を事前に実施する

 モデリングが複数の分野に広がり、それが統合されるということは、2つめの課題の解決につながっていく。「製品開発のプロセスの中で、ハードの試作機の開発にはどうしても時間がかかります。もっと早い時期にモデルを活用し、仮想的にハードとソフトの統合時の不具合を確認することができれば、手戻りを防ぐことができ、開発工程全体を短縮することにつながります」と徳島氏は、モデリングの複数分野への広がりと、それらが仮想化によって統合されていくことのメリットを指摘する。

 ソフトウェア、制御アルゴリズム、物理的な制御対象のために利用しているモデルを統合することができれば、モデルのシミュレーション機能を活用してインターフェースの整合性を確認したり、システムやサブシステムの動作を検証することができる。それを実現するのが「IBM Rational Rhapsody(以下、Rhapsody)」である。

 徳島氏は「Rhapsodyは、別のツールで作られたモデルを取り込んで統合したモデルを作ることができるという、大きな特徴があります」と語る。Rhapsodyによってシステムやソフトウェアのモデルと、制御や制御対象のモデルを統合した“複合分野モデル”を作成することができる。

 こうした複合分野モデルでのシミュレーションは、サブシステムの統合時の問題の早期発見につながる。「試作機ができる時期を待たずに、ソフトウェアだけでなくメカやエレの部分も含めたモデルを作成して、振る舞いをシミュレーションすることで、接続に必要となるインターフェースの整合性や、システムの振る舞いの妥当性を確認することができます」と徳島氏。この機能は、すでに日本の自動車業界などから高い関心がもたれている。次の課題は、確認のためにどうしたら漏れのないテストが実施できるのか、不具合が確認された場合の迅速な対応をどう実現するのかだ。

ソフトウェア開発のノウハウですべてのフェーズを一気通貫で管理

 3つめの課題である「要求とテストの管理」を行い、お互いの要素間の関連性を定義してトレーサビリティーを確立するには、IBMがソフトウェア開発の世界で培ってきた要求管理、変更管理、構成管理、テスト管理などのノウハウを活用できる。

 徳島氏は「IBMは要求から設計、テストの上流から下流まで、すべてのフェーズを管理するツールを持っています。全工程を一気通貫で管理し、そのすべてにわたってトレーサビリティー環境を提供することができます」と同社の強みを語る。

 そこではすべての要求がテストされているかどうかを確認でき、要求や設計の変更によってどの部分に再テストが必要になるのか、テストケースを特定できる。また、テストの結果を受けて再設計が必要となるモデルも特定できる。「テストで失敗した場合に、どこに戻るのかがすぐにわかり、素早く次のテストを行うことができます」と徳島氏は話す。

 IBMでは、こうした情報のトレーサビリティーの仕組みを、他のツールベンダーやお客様とともに、オープンなコミュニティ(OSLC)の場で定義している。OSLCで定義されたトレーサビリティーの仕組みは、IBM以外のツールベンダーや業界団体でも採用されつつある。

 Continuous Engineeringを実践するための継続的検証は、こうしたモデルおよび情報を統合するツールの進化によって支えられている。

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