SOLUTION REPORT

デジタル変革時代が、企業ITとビジネスを飛躍させる——「SAP S/4HANA」連載

第1回2015年の振り返り:デジタル戦略、インダストリー4.0、IoT

 一言で表現すると、各企業が「デジタル経済」時代に適したビジネスのやりかたを模索して、適応しようとしていることです。

 ではその「デジタル経済」とはそもそもどのようなものでしょうか? 簡単に説明をします。インターネット普及当初は、企業や製品/サービスの情報提供をするところから始まりましたが、2000年前後からはドットコムに象徴されるようにインターネットを介して商取引を行うことが一般化してきました。それから、消費者の世界でソーシャルネットワークが始まり、モバイルの浸透によりその流れが加速。企業の提供する製品/サービスの情報をこれまで限定的にしか得ることが出来なかったのが、口コミ(良いことも悪いことも含めて)で情報を共有することが一般的になり、消費者の情報優位性が一気に向上しました。また、ビッグデータという言葉に代表される莫大なデータを分析するアナリティクスの技術が進化して、適切なコストで提供されるようになりました。そのビッグデータの入り口となるセンサーのような広い意味での現実世界を写し取る技術も進化しました。また、企業はこれらの技術を自社の資産として保有するのではなく、クラウドでサービス利用できるようにもなってきています。それぞれの技術の進化が相乗的に組み合わさって進化しているのが今の「デジタル経済」です。デジタル経済はインターネットを介した経済活動から始まり、今は最新のデジタル技術を活用した経済活動全般といった方が実態をあらわしているでしょう。

 このような「デジタル経済」時代に適したビジネスのやりかたに変革することを、海外では「デジタルトランスフォーメーション」と呼びます。日本ではインダストリー4.0やIoTと比べるとまだ一般用語として定着していませんが、海外では広く使われている言葉です。

 アクセンチュア社が全世界の経営者を対象として実施した意識調査からも、デジタルトランスフォーメーションに関するグローバル企業と日本企業の意識・感度の違いが読み取れます。調査の一例として、
・今後12カ月で競合企業がIoTを活用して市場を一変させる製品・サービスを打ち出す可能性があると考える経営者の比率は、グローバル企業が62%に対し、日本企業は16%

・今後12カ月で競合企業がIoTを活用してビジネスモデルを大きく変化させると考える経営者の比率は、グローバル企業が68%に対し、日本企業は16% ※出典 アクセンチュア社 経営者意識調査報告書「グローバルCEO調査 2015」
という結果が出ています。

 来年の年末に「2016年の振り返り」をする際には、日本でもデジタルトランスフォーメーションという言葉が一般化して、経営者の感度があがっていることが望まれます。

デジタルトランスフォーメーションの事例

 そのデジタルトランスフォーメーションは、具体的にどのようなことを実現しているのでしょうか? 事例を含めてご紹介いたします。
  1. マス・カスタマイゼーション (Lot Size of 1)  

     規模の経済を活かしてコスト効率性を追求するマス・プロダクション(大量生産)。一方、顧客の個別ニーズを聞き入れるカスタマイゼーション。当然、特別対応なのでコストはあがります。これまで相反するものであったこれら2つを両立させたのがマス・カスタマイゼーションです。顧客の個別ニーズに対応しながらも、大量生産の効率性も維持する。IoTを活用して、これを実現しているハーレー・ダビッドソンの事例をこちらから読むことができます。

    マス・カスタマイゼーション(一品大量生産)をIoTで実現したハーレー・ダビッドソン
  2. “個”客対応 (Segment of 1)  

     消費者は店舗、Web、コールセンターなど様々なチャネルからアクセスをしてきます。全てのチャネルにおいて情報が共有され、全く同じユーザ体験を得ることができるのが理想ですが、現実はチャネル間で情報の連携ができていない、あるいはタイムラグがあります。これまで企業側の視点でロイヤリティカスタマーという定義をしてきましたが、これからは消費者も同様にその企業が私にとってどれだけロイヤリティをもっているかという視点でみるようになります。“個”客にいかに対応できるか? これを実現するため、ネスプレッソでは全てのチャネル間での情報を統合するプラットフォームを構築しています。

    Experience Everywhere ネスプレッソのマーケティング戦略
  3. モノ売りからコト売りへ (Servitization)

     「顧客が欲しいのはドリルではない、それによって開けられる穴が欲しいのである」と例えられるように、製品ではなく、その製品から得られる成果の対価をいただく、従量課金や成果報酬型へのビジネスモデルの変革です。工場で使われる圧縮空気を作り出すエアーコンプレッサーの会社で、このビジネスモデルを変革した企業があります。

    “空気を使った分だけ払う” サービスへビジネスモデルを変革させたケーザー・コンプレッサー

     このケーザー社では機械につけたセンサーから様々なデータを取得してリモートで監視、そのデータを使って故障予測分析を行っています。これにより、顧客に約束したサービスレベルでの安定稼働・供給を実現しているのです。

  4. リソースシェア型のサービス (Platform Business)  

     代表されるのはUberやAirbnbですが、海外だけで起きているわけではありません。日本でもリソースシェア型のビジネスを印刷業界で実現している企業があります。印刷会社は稼働が上がれば、より安価な印刷サービスを提供することが可能ですが、日本の印刷業界は3万社もの会社がひしめき合っていて、印刷工場の稼働率は45%にとどまっています。そこに着目をしたラクスルという会社は自社では印刷機械を何一つ所有せず、安く簡単に印刷をしたい顧客と、稼働率を上げたい印刷会社をつないで、印刷サービスを提供するビジネスモデルによって業績を伸ばしています。


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大我 猛

大我 猛

SAPジャパンにて新たな成長とイノベーションを起こすことを使命として持つ「グロースハッカー」チームを率いている。外資系IT企業、コンサルティングファームを経て現職。二児の父として、週末は子育て中心の生活。
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