「特別対談 なぜAudiは美しいのか?」人々を魅了してやまないデザインの秘密

他社が追随するような革新的デザイン

——まずミクシェさんにお伺いします。Audiのマーケティング戦略において、日本市場はどのような位置づけなのでしょうか?

ミクシェ氏その規模からいっても非常に重要かつ魅力的なマーケットだと捉えています。また軽自動車の普及率の高さ、都市化の進展や人口密度の高さなどを背景にしたユニークなマーケットでもある。だからこそ、日本でしっかりと役割を果たしていくことは、とても重要だと考えています。

——そのような中、日本のユーザーからはAudiにどのようなことを期待されているとお感じですか?

ミクシェ氏日本のお客様は、品質に対して期待値が高いと思います。また日本には、細部にこだわる文化もあります。例えそのクオリティが100%であっても、さらなる改善が求められる。そのような点で独語で“Vorsprung”といいますが、「常に先を進む」という思想の下でクルマづくりを行う私達のブランドがフィットしているのだと思います。

——さて、下川さんにお聞きしたいのですが、切っても切れない間柄であるマーケティングとデザインの関係性は、最近どう変化しているとお考えですか?

下川氏やはりブランドを作る上で、デザインとマーケティングは両輪で進めなくてはいけないものになっています。現在のビジネスにおいては、かつての様な個々の商品同士の競争というよりは、ブランド同士の競争になっています。自動車業界も同様です。そのような中、きちんとマーケットとコミュニケーションを行うために、ブランド内のどの車種をとっても統一したメッセージや提案、イメージがきちんと伝わるデザインを作ることが求められるようになっています。Audiはそういう部分で成功していますね。

ミクシェ氏ありがとうございます。Audiにとってデザインは非常に重要なものです。デザインを通して、私達は自らの「哲学」「魂」「アイデア」を表現しています。そして、お客様も私達のデザインを通してライフスタイルを表現していると考えています。実際にお客様へのアンケートでも、購入理由のトップに挙がるのはデザインなのです。

下川氏私がAudiのデザインで評価している点は、常に他社に先駆けて、革新的でその後周りが追随するようなスタイリングを提案し続けてきたこと。その典型的な例が「Audi Quattro」ですね。このクルマのスタイリングは、その後のクルマのデザインに大きな影響を与えました。また、「Audi TT」のスタイリングも特に印象的でしたね。

Audiは	「きれい」ではなく「美しい」

——改めてAudiのデザインに対する考え方について教えてください。

ミクシェ氏私達の開発の哲学はまさにデザインに表れていますが、そこには機能性と美しさのバランスを常に追求するというバウハウス(1919年、ドイツに設立され、デザイン、美術、建築などに関する教育を行った造形学校。その活動は以降のデザインに大きな影響を与えた)の思想が脈々と受け継がれています。また、我々は創業以来「力強く高品質なクルマを作る」ことを重視していますが、それは創業者であるアウグスト ホルヒが、Audiをスポーティなブランドとして位置付けていたためです。ホルヒは自ら黎明期のレースに参戦し優勝もしていますが、そんな彼が作るクルマがパフォーマンスに優れながら高品質なものであるのは当然のことでした。そして優れたパフォーマンスを実現するためのデザインが求められ、自然と内面の価値や機能が見た目に反映されていったのです。その結果、シンプルでタイムレス、さらに革新的なデザインがAudiの伝統になったのだと思います。

下川氏バウハウスの思想を受け継ぎ、機能美を感じさせるデザインだから、Audi車が美しいということは、疑いようのない事実です。さらに、常に挑戦し、バウハウスの思想そのものを進化させている姿勢もその美しさを作っている大きな要因になっています。例えば「あの人は美しいね」と言う時、その人の見た目に、行いや考え方の正しさがにじみでているということです。Audiのデザインもそれと同じで、機能美という思想をしっかりと捉え、実践しているからこそ「きれい」ではなく「美しい」のです。

——インテリアについては、いかがですか?

下川氏ひと目でどこの製品だと分かることももちろん大事ですけど、最近はそれだけではなくて、シートに座った瞬間の印象や操作感、ハンドルを握った際のタッチなど、そういう体験を含めた表現を行うこともデザインの役割になっています。スタイリングからデザインへの転換ですね。そういう点でもAudiのデザインは素晴らしい。操作ノブのタッチ1つをとっても、スイッチの操作感とか、細部にまで手抜かりがない。きっとAudiは、乗った人を、そのような体験を通じて、自分が変われるような、または新しいことに挑戦してみたくなるような気持ちにさせてくれるクルマなのだと思います。

ミクシェ氏下川さんも仰る通り、デザインは単純に外見だけではありません。ですので、ドアの開閉感やサウンドなど、クルマのすべての面に対するデザインにこだわっています。例えば、Audiにはインテリアに関して、デザインチームの他に品質管理の専門チームが存在します。このチームによって、室内のあらゆるものの手触りやタッチはもちろん、視覚、聴覚、嗅覚に至るまでチェックを行っています。例えば、匂いをデザインするチームは車内の温度を変えて、どのような匂いがするかを検査し、Audiらしい匂いをデザインするのです。スタイリングも大切ですが、お客様は長い時間、クルマで過ごしますので、心地いい環境の中で、運転を楽しんでもらうことも重要です。そのためにも、インテリアのデザインは、ディテールにまでこだわりを持って取り組んでいるということなのです。

Audiには挑戦する人が似合う