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FinTech時代の金融法のあり方

FinTech時代の金融法のあり方
— 金融審議会の決済高度化WGが打ち出した4つの基本方針とは —

フィンテックの発展に伴い、法律や規制にも見直しが求められている。たとえば、ビットコインのような仮想通貨をどのように位置づけるか。あるいは、規制の体系をこのまま維持することは妥当か——。政府の金融審議会では多様なテーマが議論されている。同審議会の「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」で座長を務めた上智大学法科大学院の森下哲朗教授が、法規制とフィンテックの関係やそのあり方について語った。

フィンテックによるプレーヤーの多様化とグローバル化

上智大学法科大学院教授
金融審議会「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」座長
森下哲朗氏

 フィンテックの発展や新しい金融サービスの登場に伴い、一般の利用者にとってのリスクも変化しつつある。こうした中で、政府の金融審議会を中心に新しい法律や規制の形を模索する動きが加速している。

 同審議会の「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ(決済高度化WG)」(2015年7~12月)で座長を務めたのが、上智大学法科大学院の森下哲朗教授である。森下氏はまず、次のように語った。
「フィンテックを推進する企業にとっては、規制が障害のように見えるかもしれません。しかし、適切な規制は利用者の信頼の前提。信頼が崩れれば、そのサービスを利用する人はいなくなるでしょう」

 金融と技術の関わりは今に始まったことではない。何十年も前からITは金融に不可欠な要素だ。しかし、以前とは大きく異なる点もあると森下氏は指摘する。
「大きな違いはプレーヤーやサービスの多様化でしょう。従来は新しい技術が導入されても、銀行や証券、保険などのプレーヤーが大きく変わることはありませんでしたが、最近は新しい顔ぶれが次々と姿を現しています。また、変化のスピードの速さ、グローバル化なども以前との大きな違い。国を単位とする法律や規制に対してグローバル化は難しい問題を投げかけています」

 フィンテックの発展により、既存のルールの前提そのものが変化してきた。代表的な例がビットコインなどで用いられているブロックチェーンだろう。
「口座を基礎とする伝統的な金融の世界では、多くの経験が蓄積され、かなりの程度までリスクを評価することが可能です。しかし、ブロックチェーンは口座を必要としません。そこにどのようなリスクがあるのか、どのようなルールが必要か。あるいは、国境を超えた取引に対して適用されるルールはどのようなものか。こうした議論をさらに深めていく必要があります」(森下氏)

 フィンテックの進化のスピードを考えると、ルールづくりにたっぷりと時間をかけることはできない。森下氏は「グローバルな視野に立ったスピード感のある議論が求められています」と強調する。