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50年後も資産価値を保てる家に必要なもの

ここ数年、日本で大地震が発生した時、古い住宅が倒壊した映像が数多く報道されていた。一方で、比較的新しい住宅でも、倒壊は免れたものの住み続けることは難しいと思われるものがあった。長期にわたって住み続けるために必要なことは何かを探る。

地震に耐える設計とは

 国内の住宅は基本的に、「構造計算」をしたうえで建設されている。建築士が建築基準法を満たすように設計すれば、法が想定する最低限度の構造計算は完了するからだ。ただ、巨大地震は法の想定を超えることがあり、近年、日本列島は立て続けにそうした大地震に見舞われている。

 最近よく知られるようになったが、実は建物の耐震性には「地域差」がある。敷地ごとの地盤の差ではない。建築基準法では地域ごとに要求性能を変えているのだ。

 法で想定する地震力は多くの地域では「極めてまれに(数百年に一度程度)発生する地震による力」の1.0倍だ。しかし0.9倍から0.7倍のように、低減してもよい地域がある(表)

地震地域係数の区分
(国土交通省告示第597号より抜粋)
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 耐震先進県ともいえる静岡県は、建築基準法上では規定の地震力(1.0倍)となっているのだが、同県の条例では地震に耐える力(地震力)を法の1.2倍に見込むこととなっている。当然、建物は強くなる。

「耐震等級」にも地域差が影響

 建築基準法の地域性(地域係数)は、耐震性の目安としてよく使われる「住宅性能表示制度」における「耐震等級」にも影響する。

 例えば耐震等級2の場合、地震力の要求性能は法の1.25倍。等級3なら1.5倍だ。だが建築予定地が法の数値を0.8に低減してよい地域だった場合、等級2の場合は1.25倍に0.8倍と掛け算をするので、係数の合計は法どおりジャスト1.0倍。等級3の場合は1.5倍×0.8倍となり、同1.2倍だ。地域係数0.8倍の地域では、耐震等級3でようやく静岡県における一般的な要求性能に届く、ということになる。

 これから将来にわたって転売価値が保たれる建物は、まず第一に設計段階においてこうした高い耐震性を見込むかが分かれ目になる。

 一方、法の地域係数はこの30年以上改定されていない。しかし日本列島では1995年の阪神・淡路大震災以来、約20年にわたって巨大地震が続いた。どの地震も低減係数の分布とは関係なく、大きな揺れを引き起こしている。これ自体が法の想定を超える事態だ。設計時に十分な余裕を見込むには、地域係数を超えた性能を目指す必要もある。

資産価値を維持するには

 法を超えた耐震性を見込み、建物が適切に、図面通りに完成したとしても、将来の利用価値が約束されているとは言い切れない。性能を長期間にわたって維持するには、経年劣化を防ぐ手立てが必要となる。

 日本で最も普及している構造、木造の場合、主要構造部は木材でできている。木材は乾いた環境なら何百年も性能を維持するが、長期間にわたって高温・多湿の環境に置かれると、空気中の常在菌によって徐々に腐ってしまう。何百年も残っている社寺建築は、屋根や外壁を実に小まめに修復し続けているのだ。

 大地震で倒壊の危険性がある住宅は、当初の設計における想定性能を語る以前に、あちこちが腐朽してしまっていることが多い。

 鉄骨造も同様で、鉄骨がさびれば断面が侵食されて性能が下がる。鉄筋コンクリート造は強アルカリ性のコンクリートが内部の鉄筋の酸化を防いでいるのだが、コンクリートは空気に触れると徐々に中性化してくる。これが進行すると内部の鉄筋がさびて構造全体が脆くなる。

 このためマンションなどでは引き渡し当初から管理組合を通じて長期修繕費用を積み立て、計画的に劣化部位を修繕することで寿命を延ばす仕組みを設けることが義務付けられている。戸建てでは、この仕組みを担うのは住まい手自身となる。他人任せにはできないのだ。

 10年後、20年後、30年後に、どのような修繕が必要となるのかを設計時点で確認し、子供の進学費用などと同様に将来の資金計画に盛り込んでおく必要がある。

価値を証明する「図面」

 住宅の設計図(建築図書)は、建物を完成させるための図面というだけではない。契約書の一部であり、建築確認申請という行政手続きの書類でもある。建物全体がどのように造られているかを示す唯一無二の書類であり、将来、増改築により建物に大きく手を加えようとするとき、この書類がなければ行政手続きが止まることすらある。50年後も確実に設計図が残っていなければ、資産価値はやはり大幅に低減する。

 住宅がいつどのように完成し、いつ点検を実施し、いつ何を交換したのか。建物を資産として見たとき、そうした「住宅履歴情報」も資産価値の一部になる。家族構成の変化などに伴って住み替える際、住宅を売却しようとしても、情報がそろっていなければ買い手は建物が健全かを判断しにくいからだ。

 将来にわたって資産価値を保ち続けるためには、図面の保管も重要となる。

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