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社員の意欲を可視化する人事ソリューション

定型的な業務の自動化が進行しつつある中で、優秀な人材の獲得競争は一段と激しくなっている。どこかの企業が、自社のエース社員を狙っているかもしれない。優秀な社員の離職防止は人事部門のみならず、経営者にとっても切実な課題だ。そこで今、エンゲージメント(組織の成功への貢献に対する意欲)への関心が高まっている。従業員のエンゲージメントは企業の業績にも影響を与える。このエンゲージメントの度合いを可視化し、対策を促すためのソリューションが「IBM Kenexa(ケネクサ)」である。

激しさを増す人材獲得競争。
優秀な人材を獲得し、その流出を防ぐ

日本アイ・ビー・エム株式会社
ソーシャル事業部 Kenexa
シニア・コンサルティング・セールス・スペシャリスト
河野 英太郎<Profile>
コンサルティング・サービス、人事部門、専務補佐、若手育成部門リーダーなどを歴任し、現在はIBM Kenexaの日本展開担当。著書に『99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ』などがある。

 あらゆる企業が今、時代の岐路に直面している。代表的な動きの1つが、第4次産業革命と呼ばれる変化だ。IoTの進展や人工知能の進化などにより、定型的な業務を機械やコンピューターに代替する動きも目立つ。日本IBM ソーシャル事業部の河野英太郎氏は次のように指摘する。

「さまざまな業務に自動化が取り入れられる中で、人間にしかできない仕事の価値はこれまで以上に高まっています。人間ならではの仕事とは何か。それは創造性や異文化理解、ヒューマンタッチのコミュニケーションなどでしょう。こうした能力を持つ人材をいかに獲得または育成するかは、経営にとって重要なテーマとして浮上しています」

 河野氏が挙げた能力を持つ、優秀な人材を引きつける企業は競争優位に立つことができる。新しい時代の人材獲得競争はすでに始まっている。副業禁止規定を削除する企業が増えていることは、そんな時代の一断面と捉えることができる。

「2009年のある調査によると、企業の社員の約半数が『できれば副業をしたい』と考えているそうです。今では、この割合はもっと増えているでしょう。優秀な人材は多彩な能力を持っていますし、幅広い分野に関心を向けています。そのような人材は、副業禁止規定を持つ企業に入社したいと思わないかもしれません。その企業は、人材獲得競争において不利な立場に立たされる可能性があります」と河野氏は注意を促す。

 優れた人材と企業との力関係は、以前とは様変わりした。企業は多様な分野で経験やスキルを持つ人材を求めており、その切実度は以前よりも高まっている。背景にあるのが、業界の統合や融合などの動きだ。業界の垣根は、簡単に飛び越えられるほど低くなった。産業分野をまたいだ企業間の合従連衡は増えており、他業界の企業が突然、自社のライバルとして登場することもある。

 自社が他業界へとビジネスを拡張することもあるだろう。すると、社内の人材とは異なるスキルを持つ人材が必要になり、中途採用へのニーズが高まる。河野氏は「逆の見方をすれば、自社の大切な人材が外部に流出する可能性も高まっているということです」と語る。そんな中、近年注目されるキーワードがある。それがエンゲージメントだ。

従業員満足からエンゲージメントへ。
組織の成功への貢献に対して動機づけする

 多くのCHRO(最高人事責任者)はエンゲージメントの重要性を認識している。IBMが世界中の経営層を対象に行った調査「IBM Global C-suite Study 2014」のCHROレポートによると、CHROの課題トップ5で、1位の「能力開発」に次いで「従業員のエンゲージメント&コミットメント」が2位に入った。

 このような課題意識を持つCHROは、エンゲージメント向上に向けた施策を講じていることだろう。ただ、一部の企業の間では「エンゲージメント=従業員満足」との誤解もあるようだ。

「エンゲージメントと従業員満足は異なります。エンゲージメントは、組織の成功への貢献に対する従業員の動機づけ、主体性の度合いを意味します。従業員にとって居心地はよくても、業績の低迷する企業は存在します。その場合、従業員満足は高いかもしれませんが、エンゲージメントが高いとはいえないでしょう」と河野氏。企業の成長や成功に向け、従業員満足偏重の企業はエンゲージメント重視へと舵を切る必要がありそうだ。

 エンゲージメントと業績との相関関係はさまざまな調査で実証されている。つまり、従業員のエンゲージメントの高い企業は業績も好調という傾向がある。

「エンゲージメントの向上は業績に好影響を与え、業績がよければエンゲージメントを高める効果があります。こうした好循環をいかにつくり出すかが経営に問われているのです」(河野氏)

 従業員のエンゲージメントは多方面に影響を与える。エンゲージメントが低ければ、コンプライアンスやリスクマネジメントなどの観点で不安要素が増大する。それは離職率の上昇をもたらし、ビジネス戦略を遂行する上でもマイナスの影響がある。逆に、エンゲージメントの高い従業員は事業成長の駆動力になるだろう。

 企業がエンゲージメントを重視するなら、まず現状を把握するための手段が必要だ。可視化の仕組みがあれば、エンゲージメントが低下したときに離職防止などの迅速な対策を実行することができる。そのためのソリューションが「IBM Kenexa」である。

 IBM Kenexaの特長は、テクノロジーとコンテンツ、アナリティクスの組み合わせにある。

「IBMは2012年に米Kenexaを買収しました。人材採用および人材管理ソリューション分野で実績を持つ同社の200人以上の産業組織心理学者を引き継ぎ、IBMのテクノロジーやアナリティクスにおける強みと融合しました」と河野氏は説明する。

特別な知識は不要、
自社内で高頻度の集計・分析ができる

 IBM Kenexaを活用することで、企業は従業員の雇用時から通常勤務時、退職時までの全プロセスにおけるエンゲージメント調査を行い、タイムリーかつ効率的・効果的なリテンション施策を講じることができる(図1)。

 IBM Kenexaの新しいエンゲージメント調査プラットフォームは「Employee Voice」と呼ばれる。簡単、手軽にエンゲージメント調査を実施できるので、高頻度でのモニタリングが可能になる。

「従来のエンゲージメント調査は、専門のコンサルティング会社に依頼して時間をかけて行うのが一般的でした。Employee Voiceなら、自社で手軽に高頻度の調査を実施できます」と河野氏は言う。

(図1)雇用から退職まで、継続的にエンゲージメント調査を実施 ― 従業員の声を聞き、分析することで離職率を低減
[画像のクリックで拡大表示]

 では、なぜ高頻度の調査が必要なのだろうか。河野氏はこう続ける。

「世の中の環境変化は激しさを増しており、企業のビジネススピードは速まっています。エンゲージメントに影響を与える事象が起こる頻度も高まっています。これが、高頻度の調査が求められる理由です」

 Employee Voiceには2つの機能がある。セルフサービス・パルス・サーベイとコグニティブ分析である。

 前者は社内で実施するアジャイルな調査。あらかじめ用意された設問から自社に合ったものを選択できるほか、自前の設問をつくるのも容易だ。必要に応じて全社的な調査、部門を絞った調査などができる。クラウドサービスとして提供されるので、ブラウザーを介して従業員の回答を集約。PCとスマホの両方で利用することができる。

 代表的な設問の1つは、「あなたは、自分がチームの一員であると実感していますか」というものだ。このような調査結果を時系列でたどることで、マネージャーは自部門のエンゲージメントの上下動を知ることができる。上位組織や全社のスコアと比較することも可能だ(図2)。

 経営者にとっては、地域別・事業部門別の結果比較が参考になるだろう。グローバル企業であれば、同じ調査を多言語で展開することもできる。サーベイの設問は約30の言語に対応している。

 もう1つの機能、コグニティブ分析には、自然言語処理エンジンが搭載され、文章による分析命令を理解する「IBM Watson Analytics」が活用されている。傾向分析を通じてエンゲージメントを高めるための洞察を得る、あるいはエンゲージメントに影響を及ぼす要素を予測して改善を促すといった活用法が考えられる。

 アジャイルなエンゲージメント調査は、優秀な人材の離職を防ぐための有効な手段となる。それは、激化する競争、激変するビジネス環境の荒波を乗り越えるための手段でもある。

(図2)「パルス・サーベイ」の画面
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