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CSR戦略から成長企業を探る

CSR戦略から読み取る
企業が持続的に成長する可能性

企業の持続的成長を支える基盤であり、成長の源泉とも位置づけられているCSR。野村総合研究所上級コンサルタントの伊吹英子氏に、社会・環境報告書/CSRレポートについて、その読みどころや活用のポイントを聞いた。

 「企業の財務パフォーマンスは海に浮かぶ氷山の一角にすぎない。(図1のように)水面下にある非財務的な要素が経営の基盤を支え、中長期的な成長につながっていく。株主・投資家はこう考え、企業が日々行うCSR的な取り組みも重要だと捉え始めています」(野村総合研究所上級コンサルタントの伊吹英子氏)。実際、CSRレポート単体から、年次報告書と融合した「統合報告書」へと向かう大きなトレンドも、このことを裏付けている。

図1 CSRは企業の持続的成長を支える基盤 これからは氷山の下にも注目する
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 企業の成長の源泉として、さらに脚光を浴びるCSR。だが人によってイメージはさまざまだ。どのように整理すればよいだろう。「まず『守り』と『攻め』の2つに分類すると分かりやすいですね」(図2参照)。「守り」のCSRとは、企業倫理を遵守し、社会責任を果たすというもの。企業や株主・投資家にとって大きなリスクとなる、不祥事や環境負荷を防ぐという意味を持つ。もう一つは将来の財務パフォーマンスにプラスに働くような「攻め」のCSR。これは「事業活動を通じた社会革新(=本業を通じたCSR/CSV)」と「投資的社会貢献活動(投資的:費用対効果を意識した活動)」で構成される。

図2 CSRには「守り」だけでなく「攻め」がある CSRの3領域とは?
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 「本業を通じて社会に役立つのはもちろんですが、最近は、社会の課題をきちんと見据え、それに対して本業の事業領域において、どのように自らの社会価値を効果的に創造していくのかが問われるようになっています。一方、本業以外の社会的な取り組みであっても、それが将来の事業機会の拡大や事業地域の進出につながるなど、経営にプラスになっていく可能性も十分に考えられます。投資家・株主はその両方の視点から関心を抱いています」。

 企業のCSRレポートを読み解く際、それぞれがどの分野のCSRに属するかを意識すると、より分析がスムーズに進むに違いない。

ステークホルダーごとに異なる読みどころ

伊吹 英子氏
野村総合研究所
上級コンサルタント
伊吹 英子

 各社のCSRレポートを読む際、まず着目したいのはその巻頭ページだ。「ほとんどのCSRレポートには、まず経営トップのメッセージがあり、それに経営姿勢や方針、事業の重点分野などが続きます。この経営者メッセージと企業姿勢から、企業の根底に流れる理念・哲学が読み取れると思います」。自らの事業について、社会貢献のためという企業もあれば、中長期的な成長につながるから、という企業もあるという。まさに各社の効果的な考え方が窺えるページといえる。

 そのあとは、それぞれの読み手の関心事に応じて、チェックするページが異なってくる。株主・投資家にとっては、やはり中長期的な成長が見込める事業分野が注目の的。消費者なら今後の商品展開や消費者に対する姿勢について、就職活動を控えた学生は、本業だけでなく幅広い社会貢献活動について読む人が多い。また例えばダイバーシティへの取り組みに関心が高い人は、各社のCSRレポートを読み比べると、より理解が深まるはずだ。

 CSRレポートでは各事業部門のトップが顔写真とともに誌面やウェブに登場し、手がけている事業が社会的課題の解決にどう関わっているかを解説するページも増えている。「これはCSVの流れを踏まえた傾向です。日々の業務では財務的な指標に気を取られがちな従業員にとっては、自分が関わっている仕事の理解や社会的意義、事業の魅力の再発見につながる絶好の機会。社内のコミュニケーションツールとして役立ちます」。事業部門内のモチベーションアップにもつながりそうだ。

 「CSRレポートは、海外での活動を把握しやすいツールでもあります」。特に海外で社会的な課題を抱えている地域に進出する企業の場合、現地の社会課題に向き合い、その解決に関与しつつ事業展開をはかっているかどうか。こうした企業姿勢も垣間見ることができる。

 「CSRレポートはさまざまなステークホルダーの人々にとって、有益な情報源の一つとして重要性を増しています。それは、CSR担当者が社内の調整を進め、従来は内部で抱えていた情報も外部に開示するようになってきているためです。その背景には、企業が『ダウ・ジョーンズ・サスティナビリティ・インデックス(DJSI)』などの世界的なSRI(社会的責任投資)の構成銘柄に選定され、SRIファンドに組み入れられることをめざしている、という動きがあります」。

 企業の情報開示ツールであるCSRレポートを、ぜひ積極的に活用したい。