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「人材カルチャーの改革」の具体策

 

アクサ生命保険株式会社の「人材カルチャーの改革」は、特に女性活躍や障碍者雇用の推進に主眼を置く。

戦略目標達成の源泉は「人」であるという考えから、
多種多様な取り組みを行っているアクサ生命保険株式会社。
ダイバーシティ推進と人材カルチャーの変革は、同社の取り組みの両輪である。

先のページでも紹介した「女性会議」は、「女性」と銘打ってはいるものの、男性社員を含めたすべての社員の意識変革が必須であり、2016年は特に働き方そのものについて考える内容だったという。

 その女性活躍推進の具体策としては、2013年に「スポンサーシッププログラム」をスタート。これは役員や部門長があらゆる権限を使い、育成を担当する女性社員の登用・活躍の道筋を付ける仕組みだ。たとえば研修の選抜メンバーに抜擢したり、意識的に部署を異動させて将来の管理職にふさわしいキャリアを計画的に積ませるなどである。これは女性社員のみならず、役員側の意識を高めることにもつながっている。なぜ女性社員だけにこういった制度を設けるのかといえば、男性社員にとってはこれらが自然にできる環境がすでに実現しているからだ。

 次に障碍者雇用の具体策としては、関連会社が一括で雇用しマネジメントするケースも多い中、同社は多岐にわたる部門で約120人の障碍者を雇用している。一例を挙げれば、視覚障害を持つバイリンガルのある社員は、ダイバーシティの社内向けコミュニケーション担当者として、日本語と英語の両方で発信する記事の取材などで活躍している。同社の調査では、障害を持つ社員に接する機会の多い社員ほど、コミットメントやロイヤリティが高い傾向がみられるという。

 さらにワークライフバランス向上のための取り組みとしては、「Work Smart(効率的な働き方)」の推進により非管理職の労働時間は1日平均8時間程度となっている。また2014年に在宅勤務パイロットを開始し、現在約160人が週1~2回程度行っている。この在宅勤務制度は2015年に正式導入され、2016年現在も拡大中だ。

「Work Smart」の必要性とその推進体制

同社が「Work Smart」と名付けたこれらの働き方改革の必要性は4つある。

  • ①生命保険業界は大きな変革期にある
    デジタルやデータテクノロジー、遺伝子検査などの科学技術の進化などにより、保険をめぐるビジネスモデルが大きく変わろうとしている。それに伴い新しい仕事は増えるが、労働人口は減少するので従業員や予算は据え置きの傾向が見られる。となれば、現在の仕事の仕方ではいずれパンクしてしまうのは明白であり、働き方の改革ややめる仕事の見極めが必須となる。
  • ②多様な働き方は会社の魅力となる
    これまでのような男性が主に働き女性は専業主婦という家庭モデルは、すでに成立しなくなってきている。特に若い世代は、性別を問わずワークライフバランスを重視する傾向が強い。優秀な人材を惹きつけるためには、多様な働き方を提示する必要がある。
  • ③長時間労働は女性活躍の最大のハードルである
    「残業できること」を前提としたワークモデルでは、時短勤務の女性社員には重要な仕事を任せられないことになる。すると優秀な女性社員はモチベーションを下げてしまう。実際、過去の女性社員の辞職理由として「仕事と家庭の両立の難しさ」ではなく、「キャリアの先が見えない」という声が多く挙げられたという。
  • ④大介護時代への備えが必要である
    75歳以上の4人に1人が要介護状態となる時代に突入し、働き盛りの社員が介護を抱えるケースが増えると見込まれる。多様な働き方で、介護との両立を目指す。

これを受けての同社の働き方改革の推進体制としては、まず

  • ・CEOが折りに触れ強いメッセージを打ち出す。
  • ・エグゼクティブ(部門長)が意思決定やハイレベルの交渉を行う。
  • ・各部門にカルチャー・アンバサダー(部門推進者)を置き、業務の10%をアンバサダー業務に費やす。

などが挙げられる。

各部門の推進体制は以下のようなサイクルを成している。

一律でやらず各部門で行うのが同社の特徴である。
全社一律で行おうとすると、部門ごとの「やらない理由」が出てきてしまう。
そこで部門ごとの問題点を解消したうえで実践という形をとる。

次に同社のデジタル化と在宅勤務への取り組みだが、2015年に全社員を対象に、デジタルに関するEラーニングを行った。またデジタルに詳しい若手社員が役員などのシニア層にSNSなどのデジタルツールの使い方を指南する、「リバース・メンタリング」を実施している。

在宅勤務は家庭の事情は一切問わず、本人の希望があり上司の承認があればだれもができる形にしている。在宅勤務は生産性の向上にもつながるなど会社にとってもメリットがあり、本人が「やらせてもらっている」・会社や上司が「やらせあげている」という制度ではなく、社員自身が自律的に働く時間や場所を選ぶという形を目指している。

ダイバーシティ推進における課題と改善策

ここからは同氏がダイバーシティ推進において感じた課題について率直に語るとともに、その具体的な改善策が提示された。

  • ・トップやマネージャーの理解を得られない
    上層部への働きかけは続けつつ、担当者レベルでできることから始める。先進的な会社のトップから直接話してもらったことで意識改革が進んだ例もある。
  • ・時間管理と自律性の両立が難しい
    最終的には多様な働き方を目指すべきである。しかし現時点ですでに長時間労働に陥っている部署は、まずしっかりとした時間管理を行うことが先決だ。
  • ・部署により温度差が激しい
    組織に1割はいるとされる「アーリー・アダプター」にまずは働きかけ、成功事例を作る。同社の障碍者雇用の例では、まずは理解ある役員やマネージャーがいる部署から働きかけた。半数以上の部門で実績ができた時点で、全社的な雰囲気が変わったという。
  • ・顧客への影響が心配
    「いつでも電話対応するのが弊社のサービス」といった日本的な意識が残る企業も多いが、それが本当に顧客の要望なのかを考え直すことから始める。もちろん顧客への確認は不可欠だが、たとえば常に対応するということは顧客もそれへのさらなる対応が求められることにもつながる。時間を区切って対応することを周知すれば、それで円滑に回るケースもあるという。

これらの課題と改善策を通じて同氏が強調するのは、「まず自分が第1歩を踏み出す」重要性である。

最後に統括として、

  • ・働き方改革は業界・職種に関わらず必要である。
  • ・抵抗勢力はいつどこにもあるもの。社外ネットワークを作ることも大事である。まだまだダイバーシティ担当者を置く企業は少ないだけに、社外でつながりを持つことで大きな力を得ることもできる。
  • ・担当者の熱意こそ変革の源となるので、個人的な理由を持ってもよい。同氏の場合は、配偶者がパート勤務の兼業主夫であり、「男性は正社員で管理職を目指して当たり前」という社会を変えたいという思いがある。

同氏が強調したのは、「女性の活躍推進=男性の解放でもある」ということだ。「これは男性の仕事」といった呪縛から逃れ、新しい価値を生み出すことで会社にとっても大きな力となる。男性のポジションを女性が奪うのではなく、選択肢を増やすことであるという同氏の視点は、ともすればシステム変更など狭い視野にとらわれがちな働き方改革の根本を見つめ直す示唆に富んでいる。

日本マイクロソフト マイクロソフトテクノロジーセンター
エグゼクティブアドバイザー 小柳津 篤氏

今回開催された「働き方改革週間 2016」 スペシャル セミナーは、日本マイクロソフトが各業界で働き方改革に取り組んでいる先進企業様を招き、「働き方改革週間 2016」の賛同法人限定で行われたものだ。セミナーでは、冒頭日本マイクロソフト小柳津氏により、2012年から毎年開催している「働き方改革週間」の意義や取り組みについて説明があった。

同氏が2011年にスタートした「多様な働き方」への取り組みを通じて強く感じたのは、「習うより慣れよ」という習慣化の重要性だ。働き方の多様性を模索する中でテレワーク導入など新制度を検討する際、導入前からさまざまな懸念が社内各所から挙げられることが多いが、「まず実際にやってみる」ことこそ必要だと説く。今回ご紹介した先進事例なども参考に、是非貴社でも働き方改革に実際に取り組み始めてはいかがだろうか。