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「事業ポートフォリオ再編」にどう備えるか

最近、グローバルな大手企業による事業買収や業務提携の話題が途切れることはない。さらなる利益の増大と資本効率の向上。この資本主義の命題に応えることを、株式市場は企業経営者に要求している。つまり常に儲けていかねばならないのだ。そのために「事業ポートフォリオ」を最適化していく必要がある。事業譲渡などで資金を作り、新たな投資や事業買収に投資し、企業全体を成長路線に転換を図っている。この「事業ポートフォリオ」の組み立ての狡智と迅速な再編ができるか否かが、成長企業と低迷していく企業の明暗を分けていくといえる。

“ROE経営”へのシフトで企業体質を改善しながらさらなる成長を目指せ

 資本主義社会においては、いつの時代も成長を続けることが企業の使命であることに変わりはない。

 かつての高度成長期には、人口増/平均所得増を背景に「量による拡大」というやり方も成り立ったが、先進国を中心に世界的な低成長・成熟期を迎えた中で、かつてのような「量の拡大」で企業を成長させていくことは難しくなっている。

 現代の経営者は「利益率の増加」を目指している。企業力を測る指標としてより注目しなければならないのは、ROE(Return of Equity:株主資本利益率)だ。いかに効率よく資本を利益に変換するかが求められている。ROEから見ると日本は約5.3%と極めて低い(米国は約22%)。そのROEを高めていく上で欠かせないのが「選択と集中」である。グローバル時代で海外企業との競走も激化し、いよいよ待ったなしの状況になった。カギは事業の再編や買収などによる「事業ポートフォリオの最適化」である。自社の事業の状況を常に把握する「見える化、ガバナンス」、自社の利益を高めるために常にポジショニングを変化できる「機動力」が、ライバル企業や新規参入企業との熾烈な戦いを勝ち抜くための武器となり持続的な成長をもたらすのだ。

事業ポートフォリオの見直しによる成長戦略
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事業ポートフォリオ再編は、企業規模の大小を問わず今後活発化していくだろう

 欧米に遅れは取ったものの、日本企業においても事業ポートフォリオ再編を実施する企業が急増している。実際にここ数年でどんな再編が起こったのか、振り返っておきたい。

 2012年4月には、政府系ファンドである産業革新機構の主導によって日立製作所、東芝、ソニーの中小型液晶パネル事業を統合し、ジャパンディスプレイが発足。

 2015年3月には、富士通グループとパナソニックのシステムLSI事業を統合したソシオネクストが正式に事業を開始。

 2016年3月17日には、キヤノンが6655億円もの巨額資金を投じて東芝メディカルシステムズの買収を決定した。これまでの成長を支えてきたプリンター事業やデジカメ事業などの伸び悩みが懸念される中、キヤノンは積み上げてきた内部留保を一気に吐き出すという多大なリスクを背負っても、新たな柱となる事業を育成すべく生き残りをかけて舵を切った。

では、どのような備えが必要なのか、次ページで考察してみたい。