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PwC 日本企業の変革~戦略策定から実行まで

 ビジネスにおけるデジタル化やグローバル化が急速に進展し、業界地図が一夜にして変わってしまう昨今。企業はいかに事業戦略を立て、それを実践していくのか。グローバルネットワークとデジタル戦略に強みを持つPwCコンサルティング合同会社の代表執行役会長、鹿島章氏と副代表執行役の今井俊哉氏に、これからの企業変革の要諦を聞いた。
(聞き手は日経ビジネス発行人 高柳正盛)

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――最近、「インダストリー4.0」「IoT(モノのインターネット)」「A(I人工知能)」といった言葉を経営層からもよく聞かれるようになりました。経営を取り巻く環境が大きく変わっていることを実感します。

鹿島 私たちも「5つのメガトレンド」という言葉で世界のあり方を変える大きな動きを説明することがありますが、そのなかの一つに「テクノロジーの進歩」が含まれています。その特徴は、変化のスピードがものすごく速いということ。私たち自身も脅威を感じることがあるほど、経営環境は激動しています。

――脅威ですか? もう少し詳しく聞かせてください。

鹿島 今まで私たちは知識や経験をもとにお客様の状況やニーズに合わせてソリューションを提案してきました。しかし、単純作業は機械の方が早いし、AIがより高度化すれば私たちの提案でさえ、取って代わられるかもしれない。コンサルティングのビジネスモデルも大きく変えなければならないんです。そうしたことが、業界を問わず、至るところで起こり始めています。

「デジタイゼーション」の衝撃

――そうした不安を経営者は感じているのでしょうか。

鹿島 PwCの「第19回世界CEO意識調査」(日本分析版)によると、日本のCEOの75%が「技術進歩のスピード」の「潜在的な脅威」について「懸念」していると回答しています。IoTやAIなどの「デジタイゼーション」によって、既存の技術やビジネスモデルが破壊(disrupt)されていくという危機感を経営者は少なからず抱いていると思います。

――日本の経営者がデジタイゼーションを意識し始めたのはいつごろですか。

今井 ここ1~2年のことではないでしょうか。例えば、インダストリー4.0は、当初は「人件費の高いドイツがより付加価値の高い産業構造にシフトしていくための産業政策だろう」という、ややお手並拝見的なリアクションも多々見られたわけですが、最近は「そうでもなさそうだ。いろいろ実現できている」と評価するようになり、日本の経営者もインダストリー4.0について、真剣に取り組むようになってきました。


――今までも「経営変革」の必要性は何度も声高に叫ばれてきましたが、今回はまったく違ったステージにいると考えたほうがいい。

鹿島 そうです。まったく違う分野から、新しいプレイヤーが突如誕生してくる。そんな可能性があるのです。

今井 新しい技術の登場は業界構造まで変えてしまうことがあります。自動車業界を例に考えてみましょう。自動車メーカー、Tier1(一次下請け)、Tier2(二次下請け)という既存の構造が電気自動車の登場により、そのすべてをカバーするような新興企業がTier0として登場する可能性もあり、そうなると従来の業界構造が崩壊するばかりか、そもそも自動車メーカーの役割は何なのかということにもなってきます。

AI(人工知能)をはじめデジタイゼーションの進展が日本の経営者に衝撃を与える

スタートアップを早く取り込む

――主役がその座から滑り落ちるどころか、生き残れなくなるかもしれない。

今井 その通りです。各業界で劇的な変革が起きている。ただ、川の流れのように変革のスピードが速いところもあれば遅いところもある。どこが速いのかを正確に見極める必要があります。

鹿島 スマートフォンを使った配車サービスで話題を集める会社は、米西海岸で誕生したデジタルネイティブな企業です。一方、日本企業は何十年、百年といった歴史のあるところもあり、社内データを標準化するだけでも2年はかかってしまう。

――新しい技術開発に追いつけないとなると、外の英知をうまく取り入れて変わらざるを得ないですね。

鹿島 「Slush(スラッシュ)」というフィンランド発で世界最大級のスタートアップイベントがあります(本年5月に東京で開催)。PwCはこのイベントをグローバルで支援しています。なぜ支援するのか。

 一つは新規株式公開など、彼らの成長ステージに合わせたサービスを提供するためです。しかし今では、新しいテクノロジーを手にしたプレーヤーを、以前からお付き合いのある大手企業に結び付けることがより重要になっています。動きの早いスタートアップの新技術を取り込んで大企業の変革(トランスフォーメーション)をいち早く実現する。PwCはこれをグローバルで担おうとしています。

今井 日本経済は低成長下にあります。人口は減る、給料は増えない。「ステータスクオ(そのままの状態)」に陥りがちですが、外のマーケットがものすごい勢いで変わっているのですから、それでいいわけがない。世界を見渡せば、いまこの瞬間にも多くの経営者や投資家が知恵を絞って新たなビジネスを立ち上げようとしている。どうしたらこの波に乗れるのか、日本企業の経営者は真剣に考えなければいけません。

――日本企業は今どんな状況に置かれているのでしょう。追い詰められているますか。それとも変革はチャンスであり、次への展望が開けるのでしょうか。

鹿島 どちらも「正解」だと思います。日本企業には高い技術力があります。働き方さえ変えれば勝てる可能性はあります。インダストリー4.0関連でPwCドイツのグローバル製造流通サービス・インダストリーリーダーが来日したとき、「日本ほどインダストリー4.0に必要なプレイヤーがそろっている国はない」と言っていました。

「戦略策定から実行まで」

――変革は、企業にとってチャンスでもあり、リスクでもある。そうした中、PwCはどう企業のニーズに応えていくのですか。

鹿島 もともと、PwCのコンサルティング部門はマネジメントやテクノロジー、リスクなど、具体的なテーマを「実行(execution)」するオペレーション系のコンサルティングが得意でした。それを2014年3月、戦略立案に強いブーズ・アンド・カンパニーがPwCネットワークに入り、「Strategy&」というブランドを立ち上げました。そして、今年3月にはPwCコンサルティング合同会社を設立し、「Strategy&」をストラテジーコンサルティング部門としました。これまで得意としていた分野に加え、戦略系のコンサルティング機能を1つの会社内に整えたことで、「戦略策定から実行まで(Strategy through execution)」、シームレスで提供できるようになったのです。変革の時代に、PwC自身がコンサルティング業務の変革(トランスフォーメーション)を行ったといえるでしょう。

――「Strategy&」とその他の「コンサルティング」の境目はありますか。

今井 最初にストラテジーチームが「何をすべきか」を打ち出し、次に「何を変えていくべきか」をそれぞれのコンサルティングチームが出して具体的解決策に落とし込んでいきます。たとえば、ある会社で間接費を20%削減しなければいけない場合があるとします。まず大きな絵をストラテジーチームが描きます。その後、人事部門は20%削減しても回る組織にしよう、経理部門は30%削減してもいい組織に変えようといった具体的な計画が出てきます。その実現のためにシステム導入が必要という話になれば、人事、会計、システムに強い各チームが連携しながらより議論を進めていきます。こうした一つの流れをPwCがすべて対応することは重要なのです。不得意な分野をほかの企業にアウトソーシングする体制では、どうしても変革のスピードが落ちます。それはコンサルティングを依頼してきた企業にとっても大きなマイナスとなります。だから戦略策定から実行までを一手に引き受けられるようにしたのです。

世界中の専門家を集める

――AIがさらに進化すれば、経営者の仕事のかなりの部分を担えるのではないかという指摘があります。今後、経営者に求められることは何でしょうか。

鹿島 自分でどれだけ意思決定できるかだと思います。これまで多くの日本企業のプロジェクトを見てきましたが、その多くが下からあげられたプランを優秀な事務方が要約し、それをもとに経営者が判断する「時間をかけた意思決定」で進められています。これではスピードが勝負の時代に完全に乗り遅れてしまう。経営者はもっと素早く意思決定しなければなりません。

今井 「決めるための会議体」をはっきりさせなければなりません。企業には執行役員会、常務会、副社長会などたくさんの会議体がありますが、議論する場と意思決定する場の境目が、あいまいなことが少なくありません。「決めるための会議体」で決定されたら、不可逆性がなければならないのです。経営者が部下の上げてきた資料を見て「君、これじゃ20点だ」などと言って差し戻すケースを頻繁に見かけますが、70点、80点になってから社長が決断したのでは好機を逃してしまいます。20点、30点の段階で、リスクをとって決めるのが社長の仕事なのです。その20点、30点の段階でも、必要とあらば分析とロジックで何とか50点まで持ち上げて経営判断をサポートするのが、私たちコンサルタントの仕事だと思っています。

――PwCのコンサルティングはこれからどう変わっていきますか。

鹿島 電力システム改革を例に説明しましょう。英国では1990年代に電力小売りの自由化を行いました。そのときからの専門チームがPwCにはあり、これまで世界20カ国以上に電力自由化のアドバイスをしていきました。世界157カ国のPwCにいるそうしたプロフェッショナルを集め、日本のお客様と素早く議論を始める。そしていち早く意思決定してもらうようにする。これがこれからの大切なチャレンジだと考えています。

今井 どれだけのアジリティ(機敏さ)を持って新たなビジネスモデルを構築するかが重要です。時間は限られているということを忘れてはいけません。


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PwCコンサルティングのニュース&トピックス

◆スマートロボットの接客に期待
 PwCコンサルティング、ハウステンボス、DMM.comは日本最大規模のテーマパーク「ハウステンボス」でスマートロボットの実証実験を今春始めた。市場投入前の新作ロボットと来場者が触れ合う機会を創り出し、ユーザー動向の把握、分析・評価を行う。PwCは実証実験の結果をロボットメーカーにフィードバックし、機能改善や事業化検討をサポートする。
 またPwCコンサルティングとDMM.comは、MJIが開発した感情認識ロボット「タピア」のマーケティング支援を開始した。ホテル・公共・観光・金融などさまざまな分野の店頭やカウンターで受付、商品説明など「タピア」の活用を見込んでいる。


◆イノベーション投資管理を高度化
 PwCコンサルティングとPwCアドバイザリーは今年5月、イノベーションに特化した投資管理の高度化を支援するサービスを始めた。変化が激しいビジネス環境において、いかにスピーティにイノベーションを起こし、市場に投入するかが重要な課題である。
 これまで勘に頼り過ぎたり、独自の方法論でリスク判断基準の織り込みがうまくいかなかったりするなどの問題が顧客企業にあったため、独自の方法論で最適なイノベーション投資管理プランを設計し、支援していく。


◆「Googleイノベーションゾーン」開設
 PwCコンサルティングは6月、「Googleイノベーションゾーン」を開設し、Google for Workを活用した新しい働き方を顧客と共創するサービスを開始した。本サービスはPwC JapanグループとGoogleのジョイントビジネスの一環。


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