日経ビジネスONLINE Special 週刊日経ビジネスオンライン SPECIAL日経ビジネスオンライン

IoT構築リスクの軽減はIT部門の責務

基調講演 ■ コニカミノルタ
IoTシステムの構築、リスクの軽減はIT部門の責務

コニカミノルタ
執行役IT企画部長
田井 昭氏

 IoTシステムの構築を、システムの利用者である事業部門が独自に進める例が増えている。しかし、「事業部門がIoTシステムの構築を独自に進めると、いくつかのリスクを抱えます。IT部門は、リスクを解消する手立てを用意しておく必要があります」と田井昭氏。

 そして、コニカミノルタでの取り組みを例に、事業部門がIoTシステムの構築を進めるうえでの前提となる、IT部門の役割を解説した。オフィス機器事業を主力とする同社は現在、売り上げの約8割を海外市場に依存し、生産・販売拠点も世界中に分散している。このためIoTシステムをフル活用し、グローバルでの効率化実現が重要だ。

 田井氏は、事業部門が独自にIoTシステムの構築を進める場合のリスクとして、「不十分な非機能要件による不安定稼働」「IT部門管轄の基幹システムとの連携不備」「インフラの二重投資によるコストアップ」「データ管理の分散によるセキュリティリスク」を挙げる。

 こうしたリスクを解消するため、コニカミノルタのIT部門では、以下の3つの対策を講じているという。「IT部門によるIoTシステム構築プロジェクトの現状把握」「システム構築の正規化」、そして「事業部門の支援に向けたIT部門の対応力強化」である。

 田井氏は「すべてのITサービスの有効性は利用するデータ品質に依存します。データ品質を維持・担保することは、IT部門の責務です」と強調し、今後の技術の進歩に追随した支援環境の整備を訴える。



特別講演 ■ 慶應義塾大学・武蔵野大学 特別講師
やみくもに高度化するより、勘所の見極めが大切

慶應義塾大学・武蔵野大学 特別講師
(元HOYAグループCIO)
近安 理夫氏

 製造業の生産現場において、現実的な投資で何が実現可能か。近安理夫氏は2つの開発経験を例に解説した。

 1つめは、電子材料を大量生産する生産ラインの品質安定化への取り組み。研磨・コーティング・洗浄・品質検査を繰り返し、同一仕様の電子材料を1日数十万個生産する。同じ条件でも、温度・湿度・気圧・工程前後の機械の相性などの違いで品質に差がでる。

 こうした電子材料を安定した品質で大量生産するためのカギは、加工済み製品のデータを誰もが日常的に共有し、分析できるシステムを構築することにあった。さらに、「グローバル展開する場合には、工場間で生産管理手法を統一しておくことが、IoTの活用以前の前提になります」と近安氏。

 2つめの例は、短サイクルで多量の電子機器ユニットを生産するラインの歩留まり向上への取り組みだ。対策前のラインでは、パーツの歩留まりが高くても、組み立て後の製品の歩留まりが上がらない課題を抱えていた。その原因は、部品同士の相性や金型の微妙な個体差なでにあった。

 この例での歩留まり向上のカギは、1品ごとの品質検査データの数値化、部品ベンダーや購買ロットなど情報の詳細化と管理、部品間での相性の相関分析などにあったという。

 いきなり高度なIoTシステムを構築しても費用を浪費するだけで、大きな効果は望めない。近安氏は「勘所を抑えたシステム構築こそが、効果を高める上での第一歩」と強調する。