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ITインフラを企業経営の足かせにしない

30%以上の運用コスト削減を実現

 企業内ITインフラに関して、日本企業の経営層が頭を悩ませる問題に、運用コストがある。企業成長を見据え戦略的IT投資に重点を置きたいのだが、既存インフラの運用コストが大きくのしかかり、自在な投資を妨げるのだ。

 その課題は、解決できる。IT技術の進展やコスト構造変革を経て、運用コスト大きく圧縮しつつも戦略投資を導ける手法が広まりつつある。

「雑巾を絞るようなコストダウンには、限界が来つつあります。重要なのは、運用コストの削減を非連続的、かつ一気呵成に実施することです。実際、弊社が手掛ける案件で30~40%削減できるのも、よくある事例です」̶̶そう語るのは、アクセンチュアのオペレーションズ本部 インフラストラクチャーサービスのセールスを統括するマネジング・ディレクターの市川博久氏だ。

 このような削減が可能になれば、企業は浮いた予算を戦略的IT投資に振り向けることが可能になる。実現するためのスキームとして、市川氏は、従来の「フルアウトソーシング」や「マルチアウトソーシング」の弱点を打破する、「ワンストップアウトソーシング」という概念を提案する。

 90年代頃までのメインフレーム時代には、ITインフラ運用からハードウェア提供・保守までを包括契約する「フルアウトソーシング」が主流だった。運用役務から設備まで一社に依存するため、それぞれの妥当性判断が困難になる。加えて保守ビジネスに依存するベンダー事業構造となるためITインフラ合理化に対する力学が働きにくい。

 これら欠点を克服するために導入され始めた仕組みが、「マルチアウトソーシング」だ。要件毎に発注先を変えるのだが、その分、ユーザー企業側の管理が煩雑になる。

 これらの課題を経て提案されるアクセンチュアのサービスが「ワンストップアウトソーシング」。サービスレベルや品質管理を同社が担当して、ユーザー企業の労力負担を軽減する。加えて管理側はハードやソフトなどプロダクトに中立的でかつ保守ビジネスに依存しないので、特定のプロダクトやサービスに縛られることなく、常に最適なソリューションを提供できるのだという。実際に同社では、コスト削減割合をコミットする契約を結んでいる。

 これほど劇的なコスト削減を可能とする鍵が、インテリジェント・オートメーション化による「ノーショア運用」だ。ITインフラ運用コストを削減し、IT高度化に向けた戦略投資へと回す。セルフファンディング型ITエコシステムの実現が必要だと市川氏は提言する。

これまでのITインフラ運用の弱点をカバーする「ワンストップアウトソーシング」により、顧客企業は、自社にとって最適なITソリューション提供を期待できる。
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ITインフラ運用のノーショア化 それがもたらすBPR的効果

「ITインフラアウトソーシングは海外や地方といったオフショアやニアショア活用が一般的でした。近年、さらなる技術革新が進展したことで、運用業務の標準化から集約化、さらにオートメーション化する、いわゆるノーショア活用が増えているのです」̶̶そう語るのは、アクセンチュアのオペレーションズ本部 インフラストラクチャサービスのデリバリーを統括するマネジング・ディレクターの松本拓也氏だ。

 ユーザー企業の現場では、世界各地でさまざまなインシデントが発生している。これらのサービス管理や運用プロセス・体制が、地域や事業ごとに分断されているなど、非効率となっている例は少なくない。

 アクセンチュアは、独自開発したインテリジェント・オートメーション・プラットフォーム「Accenture Cognitive Engine(ACE)」を活用し、自動化プロセスを多分に組み入れたモデルを提案するという。まずはインシデント検知のセンシング・アナリシス自動化。ノイズを排除し、影響度合いや対応策を分析して提示。必要な案件のみ人間に判断を委ねることで、初動対応時間を大幅に短縮。次にアクション自動化。OS起動停止や閾値をトリガーにした自動実行などが、これだ。最終的にはいちばん難しい、判断の自動化へと進む。ルールを決め、自動で最適化されたパターニングによってインシデントを処理する。

 さらにこれらは、機械学習により精度を高めていく。この仕組みは、同社社員サポート向けに2000年代後半から適用されており、その運用生産性は、一般企業平均と比して約10倍近くまで向上されているという。

Accenture Cognitive Engine(ACE)を活用したノーショア化は、運用生産性向上のみならず、スピード・品質の向上を実現する。アクセンチュア社内では、社員37.5万人をサポートする運用基盤として既に5年前から実装されている。
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「これらの取り組みで重要な成果は、単なるコスト削減ではない。品質・生産性向上を実現する業務改革なのです。」(松本氏)。自動化に到る過程で、対象業務を分析し、ドキュメント化、そして管理・運用プロセスを標準化する。これが極めて重要なのだという。

 日本企業でよくある話だが、ある業務 やシステムが「特定の社員でないとわからない」といった事態が頻発しがちで、その部分の業務改革は難しい。ベンダー丸投げだった場合、ベンダー内部で 同様にブラックボックス化を引き起こす。

 これをドキュメント化し「見える化」することで、リスクが減り、地域や事業部門を超えた標準化も進む。言ってみればBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)的観点からも効果が大きいというわけだ。

 さらに、アクセンチュアのITインフラアウトソーシング事業では、自身の「品質」「生産性」を測るKPIを設け、ノーショア化による創出効果を見える化する。日々の運用を通じて課題・リスクを抽出し、継続的にノーショア化の効果を高めていくことが、一般的に二律背反の関係にある「コスト削減」と「品質向上」の両方を実現する鍵なのだと松本氏は言う。

 またアクセンチュアは、下請けベンダーは使わず、すべて同社が一貫してサービスを提供。ここにも高品質なサービスを担保する一端が垣間見れる。現在、アクセンチュアのITインフラを含むアウトソーシング事業は、すでに同社売上の半分程度を占めるほどに急成長している。

戦略的ITロードマップ クラウド・ジャーニー(J2C)へ
運用コストを非連続的、劇的に下げ、IT戦略投資に振り向ける。それにより業務効率化と業務改革の両立が可能になる。
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 企業内へのクラウド導入が進んでいるが、そこにも大きな問題が発生している。経営層から「クラウド導入で業務改革に貢献せよ」と命じられても、運用コストに圧迫されIT部門は予算を回せないからだ。

 さらにクラウド導入の敷居が下がることで、事業部門や現場で導入された「見えざるクラウド」が、すでに大量に存在していたりする。IT 部門の管理下にないクラウドでは、当然ながらガバナンスが甘くなり、セキュリティーリスクが高くなる。

 一部の事業部門ではなく全社的に、かつクラウドが持つ柔軟性と俊敏性を企業戦略に生かしながらも、無法地帯とならないようなクラウドの仕組みを実現したいと望まれるお客様が非常に多い。

 これを実現するには、アプリ・事業部門との信頼関係を築いたうえ、BPRの取り組みとして関係各所と合意形成を図りながら策定するクラウド・ジャーニー(J2C)が重要と市川氏は提言する。

 アクセンチュアのインフラ運用者の多くはコンサル出身だ。だからこそ単純なインフラ運用に留まらず、IT部門のパートナーとして、事業部門と連携したプロアクティブな施策提案・実行推進を可能とする。

 また同社はハイブリッド・クラウド環境の統合管理、迅速なインフラ払い出しを可能とするAccenture Cloud Platform (ACP)」を提供している。業務用途・ミッションクリティカリティなど、事業部門が求める要件をもとに、予めポリシー設計したインフラ・サブセットをサービスカタログとして用意。事業部門は、開発時のサイジング・設計・構築が不要となり、カタログから選択することで迅速にインフラを使い始めることが可能となる。

 まずはIT部門管轄のインフラを対象にACPを導入し、そこで足がかりとなるクラウド基盤を構築。そのあと、事業部門側のインフラへと横展開していくことで全社的なガバナンス強化へと導くことが可能となる。だが、これはIT部門だけで推進することは難しく、事業部門側の協力が必要不可欠だ。このチェンジマネジメントの実現、これもアクセンチュアの強みのひとつだ。

 同社ではおおむね5~7年契約で、こうしたITインフラアウトソーシングを受注している。コスト削減額をコミットし、その期間でITインフラ運用ノーショア化によるコスト削減と、クラウド・ジャーニー(J2C)による企業IT戦略先鋭化を両立させる。 「実際、お客様もこうした効果を実感し、契約途中でスコープを広げる事案もかなり多いです」(市川氏)

 ITインフラの効率性や機能性は、企業にとってボディブローのように効く。良ければ製品生産や販売、物流戦略に効率化をもたらすし、企業戦略自体の高度化すらもたらす。悪ければ、なにかにつけて足を引っ張る。マネジメント層にとって、極めて重要な課題だと言えるだろう。


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