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AWS コンサルティングパートナー座談会

アマゾン ウェブ サービス(AWS)のエコシステムの成長を支えているのがパートナー制度「AWSパートナーネットワーク(APN)」である。APNの「コンサルティングパートナー」に参加する8社が、クラウドサービスの利用動向や、顧客企業の動向を議論した。司会は、アマゾン ウェブ サービス ジャパンの相田哲也氏が務めた。

相田 この数年、業務系システムでAWSを利用するお客様が顕著に増えています。特に、2011年に東京リージョン(日本国内のデータセンター群)を開設してから、急増しています。SI(システムの構築)やサービスを提供するコンサルティングパートナーの皆様から見たクラウド利用のワークロードの変化はどのような状況になっているのでしょう。

業務系システムの有力な選択肢に

大塩氏

中川 アイレットでは、東京リージョンが開設される前の2010年からAWSの導入・運用サービス「cloudpack」を運営しています。当初は、自社サイトへのアクセス数の増減が激しいゲーム事業やエンタテインメント事業を手がけているお客様が多くを占めていました。

 しかし、東京リージョンが開設されてからは、製造業や流通業など幅広いお客様にAWSをご利用いただくようになりました。


 我々が構築・運用を支援するシステムも、最初はウェブ系のシステムが多かったのですが、この数年で業務系のシステムが急増しています。

田村 NHN テコラスでも、当初はゲーム事業を手がけている企業、あるいはウェブ系のシステムが多かったのですが、この1~2年でお客様の業種・業態とシステムのタイプが大きく広がってきています。今年になってからは、公共機関や医療機関のお客様が急に増え出しました。

中川氏

 これは、業務系を含めたシステム構築事例を目にする機会が増えたためだと考えています。パートナー企業各社がシステム構築事例を公開したり、AWSが「パートナー事例大全集」を発行したりといった取り組みによって、クラウドがシステム基盤の有力な選択肢になったのだと感じています。

金融機関の顧客も急増

相田 基幹業務を支えるERP(統合基幹業務システム)をAWSへ移行するお客様も増えています。ERPの大手ベンダーであるSAPジャパンは昨年6月に、AWS上で稼働するSAPアプリケーションを導入した国内企業が100社を突破したと発表しています。

広木  BeeXは、SAPのERPをAWSへ移行するビジネスを展開しているのですが、東京リージョンが開設されて間もない頃は、まだ本気で移行を考えるお客様は少なかったですね。実際に移行に取り組むお客様でも、搭載するモジュールは会計だけといったケースがほとんどでした。

広木氏

 しかし、この1年ほどで業種や規模を問わず、SAPをAWSへ移行する案件が急増しています。ERPに搭載するモジュールも会計だけでなく、製販や物流など基幹業務全般に広がってきています。システム基盤として、まずはクラウドを考慮するという時代になったのだと感じています。

相田 セキュリティーや可用性の要件に厳しい金融機関のお客様は、どのような状況でしょうか。


市田氏

市田 TISは、オンプレミス(社内運用)のシステムでは金融業界に強いのですが、数年前まではAWSで金融業界のお客様は極めて少ないのが現実でした。しかし、1年からこの半年の間で、金融業界のお客様が急に増え出しました。業務系を含めてAWSへ移行したいという案件の引き合いが増えています。

 2012年に「金融機関向け『Amazon Web Services』対応セキュリティリファレンス」が公表されて、当社も加わってその後も改訂を続けています。AWSでも、いかにセキュリティー対策に力を入れているかを訴えています。セキュリティーに関する不安が払拭されてきたのだと思います。

システム基盤の柔軟性を評価

関川氏

相田 AWSへ移行するお客様は、どのようなことを期待、評価しているのでしょうか。

宮元 当初は運用コストの削減を期待されるお客様が多いですね。これにお応えするために、富士ソフトでも導入から運用・保守までを支援するサービスを提供しています。

 ただ、実際にお使いになるとシステム基盤を柔軟に拡張・縮退できる点を評価するお客様が多いと感じています。ビジネスの成長に合わせてシステム基盤を柔軟に拡張できる点は、オンプレミスのシステムでは得られないメリットですからね。このほか、夜間や閑散期など、システムの利用が減る際にはシステム基盤を縮退して、運用コストを下げられる点も、オンプレミスにはないメリットですね。

田村氏

鈴木 シーエーシーのお客様の中には、AWSが提供する新しいサービスを期待して選ばれる方もいます。

 そうしたお客様では、システムの構築方法が変わってきます。例えば、自前でデータベース管理システムをサーバーに配置するのではなく、AWSのデータベースサービス「Amazon Relational Database Service (Amazon RDS)」を使うといった具合です。クラウド上にサーバーを置かずに、AWSのサービスを組み合わせてシステムを構築する「サーバーレスアーキテクチャー」という構築手法も実現可能になります。こうした新しいノウハウの部分は、パートナー企業の腕の見せどころになるでしょう。

大塩 新しいノウハウを身に付けたり、新しいテクノロジーを試したりできるのは、我々の仕事の面白さですよね。サーバーワークスのエンジニアも、新しいサービスや機能を駆使することに強い興味を示しています。新たに身に付けたノウハウで、お客様のビジネスに貢献できるというのは、エンジニア冥利につきると思います。

鈴木氏

 AWSは新しいサービスが次々と追加されるので、エンジニアたちは、それらを面白がって自律的に学んでくれています。会社が用意する教育・研修の場もあるのですが、現場のエンジニアは、それよりも先に最新の情報を吸収しています。

相田 クラウドサービスが普及し始めたことによって、企業におけるシステム企画・開発のプロセスも変わってきているように思います。

関川 確かに、それは感じます。アビームコンサルティングでも、オンプレミスのシステムではお客様の窓口は必ずシステム部門でしたが、AWSの案件ではシステム部門を飛び越えて、事業部門の方から直接お問い合わせをいただくケースがあります。

宮元氏

 ただ、社内にこうした取り組みが増えると、全社的な情報のガバナンス(統治)に注意が必要になります。先進的な情報システム部門を有する企業では、ここをうまくコントロールしているように思います。事業部門主導でシステムを構築できるのは事実なので、今後はシステム部門の役割が変わってくるのでしょうね。

相田 私たちは、お客様、そしてパートナー企業の皆様で構成するエコシステムがAWSの強みだと考えています。AWSを含めて、単独の企業では実現できないことを補い合って、お客様の成長に貢献していくことによって、エコシステム全体が成長し、その結果として個々のパートナー企業、そしてAWSが成長していくのだと考えています。これからも、ご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。

相田氏
















APN コンサルティングパートナー