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AWS テクノロジーパートナー 座談会

この座談会には、パートナー制度「AWSパートナーネットワーク(APN)」の「テクノロジーパートナー」が参集。アマゾン ウェブ サービス(AWS)上でサービスやソフトウエアを提供する6社が、AWSを利用するメリットや市場の動向を議論した。司会は、アマゾン ウェブ サービス ジャパンの阿部泰久氏が務めた。

阿部 今回、集まっていただいた皆様は、AWS上で稼働するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)やソフトウエアを提供していただいていますが、この数年で、お客様や市場に何か変化はありましたか。

帆士氏

春山 AOSデータは、AWS上でパソコンのデータをバックアップするSaaSを提供しています。

 企業向けにサービスを提供しているので、お客様のほとんどがセキュリティー対策を重視します。最近は、システム基盤としてAWSを利用していることが、セキュリティー面のアピールポイントの1つになってきています。AWSにセキュリティー上の不安がないということが認知されてきたためでしょう。そのおかげで、現在は会員が20万人にまで増えました。

河野 SaaSに対するお客様の見方が変わってきていますね。フラクタでは、EC(電子商取引)サイトのSaaSを提供していますが、こうしたシステムでは、お客様の個人情報も扱うのでデータの流出は絶対に許されません。少し前まではクラウド上にデータを置くことに不安を感じるお客様が多かったのですが、最近はこうした不安も払拭されつつあります。

 特に、東京リージョン(日本国内のデータセンター群)が開設されてから、心理的な抵抗感がものすごく下がったと感じています。東京リージョンの開設以降、引き合いが急増しました。

石部  SaaSに対する心理的な抵抗感が、ほぼなくなりましたね。SaaSが「ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)」と呼ばれていた2000年前後には、外部にデータを預けることを敬遠するお客様が多いのが現実でした。

石部氏

 ソルクシーズでは、企業向けにファイル共有サービスを提供しているので、こうした心理面の抵抗感があると、ビジネスが成り立ちません。最近では、お客様にAWS上のサービスだと説明すると安心してもらえるケースが増えました。

既存の環境そのままをAWSへ

阿部 オンプレミス(社内運用)でも利用できる製品を提供している皆さんのところでは、いかがでしょう。

鵜澤氏

帆士 オンプレミスで私たちの製品を導入しているお客様で、既存のシステム構成を変えずにAWSへ移行したいというご要望が急増しています。

 F5ネットワークスは、ネットワークを制御するツールをハードウエア、あるいはソフトウエアとして提供していますが、お客様のご要望に応えるために、2013年からAWS上で動作する商品を投入しています。私たちの既存の商品を使っていたお客様でも、システムをそのままAWSへ移行することが可能になりました。

吉岡 サイオステクノロジーのお客様の多くも、同じようなご要望をお持ちです。私たちは、サーバーの稼働の継続性や耐障害性を高める製品を提供しています。AWSにシステムを移行する際に、別の方法で私たちの製品と同じような機能を実現できるのですが、それだと運用保守のオペレーションが変わってしまいます。

河野氏

 運用保守の体制を含めて、既存の環境そのままで、AWSに移行したいというお客様が多いと感じています。ミッションクリティカルで、絶対に停止が許されないようなシステムほど、こうした傾向が強くなっています。

鵜澤 アプレッソはシステム間でデータを連携する製品を提供しています。AWSへシステムを移行したお客様でも、現在もオンプレミスのシステムが動いているというところがほとんどです。

 会計などの業務系システムでは、ほかのシステムとデータを連携させる必要があります。ですので、クラウドに移行したシステムとオンプレミスのシステムを連携させることを目的として、私たちの製品を導入するケースが多いですね。最近は、クラウド上のシステム間でデータを連携させるために導入するお客様も増えてきています。

トップダウンで戦略的に移行

阿部 お客様は、どのようなきっかけでAWSを利用し始めるケースが多いのでしょう。

吉岡 トップダウンで「クラウドファースト」の方針を打ち出したというお客様が多いですね。

 我々のお客様の中には、ERP(統合基幹業務システム)のようなミッションクリティカルなシステムを含めて、社内で利用するシステムを全てクラウドへ移行するという企業もあります。経営幹部の方々にも、クラウドを利用するメリットが浸透してきたということだと思います。

帆士 そのようなお客様では、1~2年前に導入したハードウエアを捨ててまでもAWSへ移行するケースが思った以上に多くなっています。

 オンプレミスのシステムでは、通常5年くらいは同じハードウエアを使うのが普通ですから、相当な覚悟で臨んでいらっしゃる。システム移行や新たにシステムを構築する際に、システム基盤として、まずはクラウドを第一の選択肢にするという企業が急速に増えていると実感しています。

春山 日本は2011年に大震災に遭遇しています。この体験から、ディザスターリカバリー(災害時のシステム復旧)のために、AWSを利用するというお客様も多いと感じています。

 自前で遠隔地に待機系のシステムを構築したり、バックアップのデータを保管したりするのは、膨大な投資が必要になりますからね。AWSを利用すれば、データセンターやハードウエアに投資することなく、こうした体制ができますからね。

システム基盤の柔軟性が利点

阿部 AWSを利用することで、皆様のビジネスには、どのような変化がありましたでしょうか。

河野 従来はオンプレミス向けにECサイトを構築してきたのですが、AWS上に基盤を移したことで、スモールスタートでサービスを提供できるようになりました。

 ビジネスの規模に合わせてシステム基盤を用意できるようになったことで、システム導入のハードルが低くなったのです。これが、お客様にとっても、我々にとっても大きな利点となっています。

石部  AWS上でSaaSを提供している当社にとって、営業拠点がないような地域のお客様にも、サービスを提供できるようになったことが大きなメリットですね。

 ウェブ上のサービスなのでAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を提供すれば、お客様のシステムと連携する仕組みをつくることも可能です。ビジネスチャンスが大きく広がったと感じています。

吉岡氏

鵜澤 本格導入していただく前のPoC(コンセプト実証)が容易になりました。小さな規模でPDCA(計画・実行・検証・改善)サイクルを回せるのは、お客様にとっても大きなメリットだと思います。

 それと、オンプレミスのビジネスをしている我々にとっても、お客様にとっても、クラウドという選択肢が増えたことは大きな利点です。



阿部氏

阿部 選択肢が増えることは、お客様にとって大きなメリットです。パートナー企業の皆様のサービスが充実すれば、それに伴って、お客様の選択肢が増えてきます。今後とも引き続き、ご協力をお願いいたします。










APN テクノロジーパートナー