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企業の熱視線を集める茨城県南地域

 日本にある“イノベーションの種”の多くは、つくば市を中心とした茨城県南地域に眠っている。大げさに聞こえるかもしれないが、決してそんなことはない。この地には筑波大学、産業技術総合研究所(AIST)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の筑波宇宙センターをはじめとする、約30の公的研究機関が集結している。研究者の数は約2万人。つくば市の人口は、約22万人(平成27年度)。つまり、日本屈指の「知の集積地」。それが“つくば”なのだ。

 最先端の技術をビジネスにつなげる動きも活発だ。筑波大学発のベンチャー企業は100社を超える。これは全国の大学のなかで五指に入る数だ。とりわけ大きなインパクトを世に残したのが、山海嘉之氏率いるサイバーダイン社。医療用ロボットスーツ「HAL®」の名を聞いたことがないビジネスパーソンは、少ないだろう。今もこの地では、「サイバーダインに続け」とばかりに医療系企業をはじめとするベンチャー企業が日々、しのぎを削っている。

 またこの地では、全国トップクラスの学力を誇る子供たちが、後に続こうとしている。人口減少のフェイズに入った我が国において、10年以上にわたり人口が増え続けているうえ、地域の全公立学校で小中一貫教育に取り組んでいるため、「つくばエリアの肥沃な知」は枯れる気配がないのだ。

 とはいえビジネスの“タマゴ”は、産んで羽化させるだけでは不十分。日本全国へ、そして世界へと飛び立たせることが不可欠だ。そこで重要になるのが立地。この点でつくばには、2つの強みがある。1つは都心へのアクセス。つくばエクスプレスで、秋葉原までわずか45分(快速利用の場合)。東京都心部との行き来の面で、利便性が非常に高い。世界への玄関口、成田空港への所要時間も首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の開通で一気に縮まった(約55分)。また、先日つくば市で開催された「G7茨城・つくば科学技術大臣会合」の成功が示す通り、国内外の来訪者に対する受け入れ体制も整っている。

 そしてこの地には、事業を営むうえで有利なポイントがもう1つある。それは、自然条件に恵まれた広くフラットな土地だ。製造業をはじめとする多くの業種で、安定的に事業を営むのに非常に適している。

 知の集積と好立地。成功に必要な大きな要件を満たす、国内随一の場所が、茨城県南地域なのだ。“つくば”から始める。それが今後、ビジネスを成功させる必須条件になるだろう。




知の集積と好立地がビジネスを加速させる

知の集積

ハイレベルな人材と研究機関が集う“サイボーグ型ロボット”発祥の地

左上:©宇宙航空研究開発機構(JAXA)、左下:産業技術総合研究所(AIST)提供、右:Prof. Sankai, University of Tsukuba / CYBERDYNE Inc.

約30の公的研究機関と約2万人の研究者(博士号取得者約8000人を含む)、そして100社を超える大学発ベンチャーを抱える「知の集積地」。それが茨城県の“つくば”エリアだ。巨大なH-IIロケットが鎮座する(写真左上)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の筑波宇宙センターでは人工衛星の開発・運用や宇宙飛行士の養成、ロケット・輸送システムの開発などが行われている。産業技術総合研究所(AIST)のつくばセンター(写真左下)では、社会や産業界が直面する課題に対して、技術を通じた様々な解決策を提供している。こうした最先端の研究機関に加え、世界初のサイボーグ型ロボット「HAL®」(写真右)を開発、製品化に成功したサイバーダイン社をはじめとするハイレベルな大学発ベンチャーが日々、イノベーションを生み出すべく奮闘しているのだ。


好立地

陸・海・空のアクセスにすぐれ、広大で利便性の高い事業用地

立地の良さも、茨城県の大きな武器だ。まずアクセスがいい。上の地図から分かるように、陸・海・空のルートが充実している。例えば県南地域は都心も成田空港も「1時間圏内」。国内外のビジネスパートナーとの行き来も容易だ。自然条件にも恵まれている。起伏が少ないフラットなエリアが多く、工場をはじめとする事業所の設立・運営に最適だ。豊かな水源などの、安定的に事業を営むうえで重要な要素も揃っている。首都圏に比べ安価な用地取得費も魅力だ。こうした利便性ゆえ、企業からの“支持率”は常時、高水準をキープ。企業誘致の指標と言うべき経済産業省の工場立地動向調査では工場立地件数、工場立地面積、県外企業立地件数の“主要3部門”で茨城県は3年連続1位。大手企業も多数、進出しているのだ。




G7茨城・つくば科学技術大臣会合が証明した国際会議、コンベンションでの利便性の高さ
G7の会場、「つくば国際会議場」は会議場としてだけでなく、つくばを中心とした日本の先端技術を展示する場としても用いられ、多くの来客の注目を集めた。

 去る5月15~17日、茨城県つくば市のつくば国際会議場で開催された、「G7茨城・つくば科学技術大臣会合」。脳科学分野での国家間での連携や女性研究者の育成といったテーマが議論され、共同声明「つくばコミュニケ」にまとめられた。常陸牛やメロンといった県産品を使った料理や伝統芸能での「おもてなし」も各国大臣に好評で、盛況のうちに閉幕した。

 同時にこの国際会議は、茨城県南地域の「ビジネス都市」としての潜在能力の高さをも示した。成田空港からも東京都心からも1時間以内でアクセス可能な立地はもとより、地域内の交通網の利便性の高さ、宿泊施設や商業施設の充実など、国内外からの来訪者を受け入れる体制は十分に整っている。特にホテルは、海外からの要人やエグゼクティブの利用にも十分に対応可能だ。コンベンションや見本市の会場も、充実している。つくば国際会議場は市の中心部にあり、市内の交通機関でのアクセスも便利だ。今回のG7でも、科技相の会合と同時に開催された日本の先端技術の展示会場として、多くの来客を集めた。