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「やりたきゃやりなよ」と言われるのが、ムカつきます(笑)。

「若い社員が活躍している」「自由な社風」「新規事業がどんどん出てくる」…。リクルートと聞いて、そんなイメージを思い浮かべる人は多いだろう。リクルートライフスタイル執行役員・牛田圭一氏のインタビューからも分かるように、そのイメージは当たっているといえる。では、実際のリクルート社員は現場で互いにどんな関係性を築き、どのような働き方をしているのか。執行役員ネットビジネス本部長の牛田圭一氏と、ネットビジネス本部でも指折りの「尖った」若手リーダーたちに“リクルートの真相”について語り合ってもらった。

――まずはお集まりいただいた、リクルートライフスタイルの若手社員の皆さんに自己紹介をお願いしたいと思います。まずは石川さん。

石川:石川周平です。エンジニアとして新卒で入社して、『ポンパレモール』の立ち上げなど、いろんなシステム開発をやってきました。今は新規事業の開発・立上げを主に手がけていて、最近では『モバイル決済 for Airレジ』(現金やクレジットカードを使わず、スマートフォンやタブレットだけで支払いができるサービス)の事業計画を2015年に立案しました。

――石川さんはまだ30歳ですが、既に大きなプロジェクトを任されているんですね。すごい…。では、佐橘さん、お願いします。

佐橘:佐橘一旗です。僕もエンジニアとして入社しました。今もエンジニアです。高校2年生からなので、「エンジニア歴」は10年目に入りました。今は『Airレジ』をはじめとするAirシリーズの新機能開発全般を担当しています。品質はもちろん、新機能の仕様の検討や開発スケジュールの調整、業務フロー改善など開発全般を見ています。

――25歳にして、既にベテランの域に達していらっしゃるんですね。今日はよろしくお願いします。さて、皆さんお揃いになったところで…。

井原:(いきなりドアを開けて入ってきて)取材ってこの部屋ですか? すみません! 入国手続で引っかかって…。

牛田:何、おいしいところ持っていこうとしてるんだよ(笑)。みんな待ってるんだから、自己紹介よろしくね。

井原:井原真吾です。昨日まで休暇でアメリカの砂漠にいました。僕は『カーセンサー』の営業を振り出しに、システム開発拠点の立ち上げやテレビCMの制作、アライアンスやキャンペーン立案など、あらゆる業務を経験してきました! 今は『Airレジ』をはじめとするAirシリーズに関する分析を始め、データ関連の部署を複数、兼務しています。記者さん、たぶん兼務部署が多すぎて書ききれないと思います(笑)。

上司と部下は、お互いをどう見ている?

――牛田さんから見て、この若手リーダーの3人はどのような人材ですか?

牛田:ウチの中でも個性が強いというか(笑)、特に “エッジが立っている”のがこの3人です。
 営業からシステム構築、データ分析など、何でもできる井原は天才肌。チャレンジ精神旺盛で、物事を現場で学びながら自分の糧にする方法をよく知っている。とにかく行動して実力をつけていくタイプです。
 新規事業の立ち上げから決裁まで任せられる石川は、努力家。問題が山積でも絶対に諦めないし自分の意志を曲げない。最終的には周りが納得するものを形にして出してきます。
 新卒入社でエンジニアの佐橘は、3人の中でも若いですが、相手が年上であろうと外国人であろうと、誰に対しても物怖じせずに自分の意見をしっかりと論理的に伝えます。きっと自信があるんでしょうね。
 3人に共通するのは、負けず嫌いで、自分の中にポリシーがあるというか、一本筋が通っていることでしょうか。

座談会は終始、リラックスした雰囲気の中で進んだ。(写真:稲垣純也)

石川:そんな個性豊かなメンバーを、野放しにするというか、好き勝手にチャレンジさせてくれる牛田さんは、器が大きいですよね(笑)。でも裏を返せば、もし僕らが間違った方向に進んでも、自分で修正できる範囲だと思っている。つまり、僕らの能力がまだまだだということです。実力を高めて牛田さんを慌てさせるぐらいの仕事がしたいです。

牛田:だって、「その類いの仕事は、昔、自分がやったよ」というレベルの提案もありますしね(笑)

石川:ほらね、腹だたしいし、悔しくなるでしょ(笑)

井原:とはいえ、牛田さんは失敗談をあえて僕たちに話してくれるので、信頼できるんですよ。プライドが高い人ほど、失敗話はしたくないものです。でも牛田さんは自分の失敗を客観的に捉え、今後の学びとして僕らに教えてくれる。牛田さんに限らず、リクルートでは上司と部下の距離が近くて、困った時に相談しやすい環境だと言えると思っています。

石川:僕ら、「社長」「部長」の肩書きではく、「うっしーさん」って呼んでいますしね。ちなみに社長(淺野健氏)のことも、みんな「あさけんさん」と呼んでいます。

リクルートの「社風」とは?

井原:僕は、裁量権が欲しくてこの会社に入ったんです。やりたいことを実現するためには、大きなお金を動かせる資金力があって、20代でも裁量権を持たせてもらえる環境で働きたかった。面白いし、やりがいがあります。

石川周平さん
ネットビジネス本部 プロダクト開発ユニット プロダクト開発グループ。2011年入社。30歳。

佐橘:確かにチャンスはたくさんありますね。高い利益率で稼ぐ会社から、資金力を生かして、成果が出るかどうか分からないプロダクトに、中長期的な視点で投資する会社に変わってきた感じがします。100本打って1〜2本当たればいいぐらいの心意気で挑戦する会社なのかなと。
 そういう方針なので、社員にも「イノベーティブであること」が求められます。働き方に枠組がないので、何を提案しても、ゴールまでの方法論も自由。だから、何か面白いことをやりたいと思える。

牛田:働き方に枠組がないから、社員一人ひとりが自らミッションを持たないと何も動けないんですよ。裁量権やチャンスが与えられるので、僕らがマネジメントなんかしなくても、強い意志を持つ能力の高い人は勝手に伸びる。そんな会社でもあると思います。

井原:会社が進もうとしている方向とは異なる事業を始める人間がいても、誰も怒らないですよね、きっと。むしろそれは、上層部が意思決定を誤った時のリスクヘッジになるというぐらいに考えていると思います。
 例えば、中途入社のエンジニアが入社翌日に、「あの会社を500億円で買収した方がいいと思います」と役員に提案したとしても、僕らはあまり違和感がないんです。“仕事に人を充てる”のではなく、“人に仕事を充てる会社”なので、どれだけ大それたことを提案しても、上層部はちゃんと聞いてくれるし、合理的であれば恐らく施行されます。それは、やりたい仕事をやらせた方がいい結果を生むと分かっているからでしょう。

牛田:結局、変化の激しい時代だからこそ、企業が生き残るためには多様性が最も必要だと思うんです。いろんな考えの人間がいて、異なる意志を持つ集合体だからこそ変化に耐えられるし、今までにない新しい何かを生み出せる。会社が掲げたミッションを社員に押し付けても、誰も聞いてないです、特にこの3人は(笑)。

佐橘:誰に対しても意見や主張しやすい会社だから、意志が必要だと思います。エンジニアだからって、黙々と与えられた仕事をしているだけでは取り残されるし、この会社にいる意味はあまりないように思います。「これが正しいんだ」と主張し、周りを納得させられるコミュニケーション力も必要だと思います。

石川:もちろん、好き勝手にやらせてもらうには、アイデアを生み出して事業として形にするぐらいの経験値や実力は必要です。僕も入社当時は、バッティングセンターでとにかく球を打ちまくる練習のような時間を過ごしました。必死で仕事をして経験を積み、今は手がけている事業で利益を出し、それを次のイノベーションやマーケットに貢献させたいと責任感が生まれるレベルになった。バッティングセンターは卒業して、試合で戦っているイメージです。

俺たちのネット事業の未来

――みなさんはネット事業の未来と、自分たちのこれからの仕事についてどう考えていますか?

井原真吾さん
ネットビジネス本部 クライアントソリューションユニット リアルマーケティング開発グループ Airシリーズデータプロダクトチームほか。2010年入社。29歳。

石川:スマートフォンで自分の精子の濃度と運動率が簡単に測れるサービス『Seem(シーム)』のようなプロジェクトの開発には、人口減やGDPの右肩下がりといった、日本の課題を克服する大きなミッションがあります。ただし、それを世界で展開させるまでにはまだ時間がかかる。僕個人のミッションとしては、そこにいきつくまでの線を結ぶ点をたくさん作るような、短中期的な仕事に注力したいです。例えば、人口減に伴いサービス業の売り上げが下がる中、ネットを使って食い止めるといったことも挙げられます。

佐橘:僕はエンジニアという役割に囚われず、新たなニーズを見つけて、1人で事業として成り立たせるまでの実力をつけるために、今は引き続き色んなトライをしていきたいですね。

井原:この会社で働いている理由の1つは、自分の能力次第で、大きな影響力を世の中に与えられる可能性があるという点。ビジネスというシビアな舞台で、大きな課題を解決することにさらに挑戦したいと思います。

石川:みんなやっている仕事も考えもバラバラですが、この会社を使って世の中のために何かしらインパクトを与えたいと考えている点では、ベクトルは一緒なんですよね。

ロマンとそろばんのバランスが大事

佐橘:確かに。何かインパクトは与えたいという共通部分があるからこそ、自分のやっていることを話したがる人は多い気がします。井原さんは、「今こういうことやってるんだけど」と、自分の仕事を僕に自慢しに来ますよね(笑)。

佐橘一旗さん
ネットビジネス本部 ディベロップメントデザインユニット プラットフォーム開発グループ。25歳。

井原:エンジニアの立場から見たらどう思うかなと思って(笑)。多様な人種がいるので、色んな意見を聞いてみたくなるんですよね。

佐橘:会社の仕事でなくても、「こういうの、当たると思うんだよね」「こんな事業、あったらよくない?」みたいな話は日常茶飯事です。牛田さんも含め、うちの社員は、合理的なリアリストが多いですが、ただ、夢やロマンのような“感情”は大事にしていると思います。お金を稼ぐことを主眼としているようで、本当は自分の感情に素直に動いているだけなんじゃないかな。
 僕は何だかんだいっても、家庭が一番で、家庭を犠牲にしてまで働きたくはない。だからこそ、妻や子供に自慢できる仕事をしたいとも思える。その感情は大事にしているし、仕事をするうえでのエンジンになっていると思います。

井原:“ロマン”と“そろばん”のバランスを保っている社員が多い気はしますね。

牛田:二律背反するものをバランスよく持って推進力に変えられるのは、人間の基本的能力でしょう。競争と協調もそうですし。ロマンだけで議論しても生き残れないし、利益だけで議論してもつまらない仕事や結果になる。二律背反したものを持った多様な人間がコミュニケーションを重ねることで、今までになかった面白いものを生み出し、結果的に生き残っていく。そんな集団でありたいし、それができる人材や土壌、可能性がある会社だと思っています。