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金沢工大、学生向けWatsonを本格活用

金沢工業大学は、IBM Watson(以下、Watson)の活用を始めた。学生向けの活用では国内初となる。その狙いは、学生の成長支援だ。学生のよりよい学びに向けたアドバイスを行い、教職員による学生支援をサポートし、学生のプロジェクト活動に“メンバー”として参加することを考えているという。このようなWatsonを活用した「人材育成」は、他の業種・業態でも取り入れることができ、大いに期待されている。大澤敏学長をはじめ、同大学のキーパーソンにWatson導入に至った背景、今後の活用などについて聞いた。

国内初の「学生向けWatson」、
金沢工業大学でスタート

大澤敏 氏
金沢工業大学
学長
大澤敏
泉屋利明 氏
金沢工業大学
法人本部 次長
泉屋利明

 今年7月、金沢工業大学でWatsonの本格的な活用がスタートする。最初は学生の約1割に相当する約700人のユーザーを募集し、さまざまな使い方を試しながら順次利用者を拡大していく予定だ。「学生向けWatson」という活用事例は、国内初となる。

「今後、AIをはじめとする先端テクノロジーは、研究開発やビジネス、社会のさまざまな場面に浸透していくでしょう。ともすれば、人間はAIに対して受け身の姿勢になりがちですが、それでは新しい価値創造は難しい。イノベーションを起こしていくためには、受け身ではなく、能動的にテクノロジーを使いこなす力が求められます。Watsonを通じて、学生たちにはそのような能力を磨いてもらいたい」と学長の大澤敏氏は話す。

 Watson活用の狙いは学生の成長支援だ。たとえば、学生が目指す進路を実現するうえで、どのような学習が必要かを判断する材料をWatsonが提供する。あるいは、進路アドバイザーの教職員にとっては、1人1人の学生に向き合う際の支援ツールにもなる。卒業生のデータを参照しながら、学生が自らの目標を考えるといった使い方もあるという。

「自分の属性や成績などのさまざまな要素を編集し、なりたい自分と同じような特性を持つ卒業生を類似度の順にランキングします。上位にランクされた卒業生、つまり理想の自分に似た卒業生が、それぞれの学年で何を目標とし何を学んだか。こうした情報を参考にすることで、学生は自分の目標や将来像をより明確にイメージできるのではないかと思います」と法人本部 次長の泉屋利明氏はいう。

 学生の成長をサポートするうえで、情報共有は重要なカギである。同大学には約700人の教職員がおり、日常的に学生個人と向き合っている。その知見を共有できれば、有益なサポートができるはずだ。

「ある教職員との会話がきっかけで、突然伸びる学生がいます。そのときに、どんな対話がありどんなアドバイスが行われたのかは、なかなか他の教職員にはわかりません。その教職員が退職すれば、その知見自体が失われてしまうかもしれません。そんな知見を共有する基盤としてもWatsonは活用できると考えています」(大澤氏)

 教職員との対面は多くの場合1対1だが、「情報を共有すれば700対1のパワーが発揮できるかもしれない」と大澤氏。学生1人1人に対して、より適切なアドバイスができるようになるはずだ。