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ネスレ日本、新時代に向けたAI戦略とは

人工知能(AI)は、これまでのアプリケーションではできなかった“人間らしい”受け答えができることから、新たなユーザーインターフェースとして注目されている。このAIをコンピューターシステムの1つとして考えれば、周辺システムと連動させることができ、企業経営にもたらすインパクトも大きい。そこにいち早く気づき、大きな構想を描いてAI活用に乗り出した企業がある。食品・飲料の大手企業、ネスレ日本である。

問い合わせが増えても対応の質は担保したい

野崎 善教 氏
ネスレ日本株式会社
マーケティング&コミュニケーションズ本部
コンシューマーリレーションズ部 部長
野崎 善教

 創業150年、グループ売上10兆円を誇るネスレ。中でもネスレ日本は、イノベーションをけん引するリーダーに位置付けられており、“ジャパンミラクル”と言われるほどの成長を示している。そのネスレ日本が成長戦略として挙げているのが「イノベーション」「直販チャネル」「消費者とのコミュニケーション」である。

 「従来は小売中心に事業を展開してきましたが、ここ数年は直販モデルにも注力してきました。ネスレ会員は500万人を超え、『ネスカフェ』のコーヒーマシンの出荷台数は650万台に上ります。さらにオフィスを対象に展開しているサービス『ネスカフェ アンバサダー』も35万人まで拡大しています」とネスレ日本株式会社 マーケティング&コミュニケーションズ本部 コンシューマーリレーションズ部の野崎善教氏は語る。

 直販チャネルの拡大は収益構造以外にも大きな変化をもたらした。消費者コミュニケーションの増大である。お客様との接点である「ネスレVOCセンター」への問い合わせは、10年前までは年に数万件程度だった。それが現在では100万件にも増えている。今後、直販比率が上がっていけば、その件数はさらに何倍にも増加していく。

 「ブランドは消費者とのコミュニケーションからつくられる」と考える同社にとって、顧客を知り、顧客との関係性を深める消費者コミュニケーションは、優先的に対応すべき重要課題だ。さらに、こうした内部環境要因に加え、外部環境要因の影響も加わる。労働人口が減少する日本ではコールセンターの人員確保が難しくなっている。

 「現在は約500人のコミュニケーターがいますが、新たな人員の確保とコミュニケーションの質の両立はこれからますます難しくなります。それを解決する手段として注目したのがAIの活用でした」と野崎氏は振り返る。